宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ

宝塚を「好き」という気持ちを因数分解してみたい、という思いで綴っています

祝星初日 『柳生忍法帖』は和製ダークファンタジー?



星組初日、おめでとうございます!


『柳生忍法帖』原作本を読む前には心の準備を!




1958年連載開始の「甲賀忍法帖」から始まった、山田風太郎氏の忍法帖シリーズ。戦国時代や江戸時代を舞台に、超人的な能力を持つ忍者や剣士たちが、あっと驚く忍法や秘術を繰り出しての、手に汗握る戦いが描かれています。   


「柳生忍法帖」も名を連ねる忍法帖シリーズは爆発的ヒットを博し、次々に映像化されるなど、1960年代の日本に一大忍法ブームを巻き起こしました。


今やエンターテインメント活劇やゲームでもおなじみの“チームバトルもの”の源流と言われることも多く、息もつかせぬアクションに彩られた独創性ある物語の数々は、現在も多くの読者を魅了し続けています。   



星組初日に合わせ、書店では、礼真琴の柳生十兵衛のスチールの帯付きの原作本が発売されておりますね。


ただこの原作、確かに”あっと驚く忍法や秘術を繰り出しての、手に汗握る戦い”が魅力なのですが、


この紹介文から抱く痛快娯楽劇なイメージで原作を読みだすと、たぶんびっくりすると思います。


柳生忍法帖 山田風太郎ベストコレクション【上下 合本版】 (角川文庫)
柳生忍法帖 山田風太郎ベストコレクション【上下 合本版】 (角川文庫)
KADOKAWA
Digital Ebook Purchas


目次の一部を紹介すると、


破戒門


七凶槍


修羅の巷へ


蛇の目は七つ



髭を生やした京人形


十兵衛先生


まんじ跳び


般若組


地獄の花嫁


水の墓場


晒す


江戸みやげ


北帰行


僧正


女人袈裟




これより会津


銅伯夜かたり


断橋


首合戦


沢庵手毬唄


南船北馬


幻法「夢山彦」


沢庵破れたりや


十兵衛見参


孤剣般若侠


雪地獄


霞網


天道魔道


雲とへだつ


第一話、明成が堀主水の断罪だけでは飽き足らず、


幕府公認の縁切寺・東慶寺に匿われた堀一族の女たちをも武力をもって攫おうと、“会津七本槍”を使わして、男子禁制の尼寺の「門を破壊」するシーンの禍々しさを


「破戒」「3文字で表現!


・・・昔の作家さん、漢語のボキャブラリーが豊富なので、目次を見るだけで作品の世界観が立ち上ってくるでしょう?


ホラー映画を受動的に「見る」体験ともまた違って、文字によるイメージの想起力がものすごく呪術的で、


自分の内面から映像が立ち上ってきて浸食されるような、呪術的リアリズム。





まとめ:原作を読むときは、心の準備を!


『柳生忍法帖』早すぎたダークファンタジー





柳生十兵衛を主人公にすることは最初から決めていたのですが、今まで宝塚では演じてこなかったような十兵衛を描いてみたいと考え、山田風太郎さんの作品に辿り着きました。


山田風太郎さんの作品は、その官能的な描写等から、少し世間に曲解されている部分があるように思います。その時代に合わせて作風を変化させていく中で、ある一面だけが印象づけられているからではないでしょうか。


しかし、表面的な部分をそぎ落とすと、実に健康的な倫理観と、非常に人間的なドラマ、そしてシンプルに格好良い人間像が浮かび上がります。真正面から大きな物事に挑み達成する登場人物に抱く、爽快感があるのです。


今回も、枝葉を切り落として、しっかりとした幹を使えば、宝塚歌劇の世界にマッチさせることができると思っています。



1958年連載開始の「甲賀忍法帖」から始まった、山田風太郎氏の忍法帖シリーズ。それまでの勧善懲悪の明朗なチャンバラものとは一線を画す画風は、1960年代の劇画ブーム(「ゴルゴ13」とか「カムイ伝」とか)にも影響を与えたと思います。


ただ、当時の「良識的な大人」の価値観から見ると、血とエロスのイメージに溢れた「ダークファンタジー」の世界は、曲解というか「王道ではない、ちょっとワルの男性が好んで読むもの」と思われていたのかもしれない。


「和製ファンタジー」「サブカル」という概念もまだ普及していませんでしたしね。


その後ダークファンタジーは「中世ヨローッパ風 剣と魔法とドラゴンの世界」というフィールドを発見し、「ベルセルク」



映画『ベルセルク 黄金時代篇III 降臨』予告編【HD】 2013年2月1日公開


そして和製ダークファンタジーは、現代の「鬼滅の刃」「呪術廻戦」



『劇場版 呪術廻戦 0』特報【12月24日(金)公開】


などにもつながっているのでは、と思います。


まとめ:大野先生、山田風太郎への世間の表面的なエログロイメージをそぎ落とし、実に健康的な倫理観と、非常に人間的なドラマ、そしてシンプルに格好良い人間像が浮かび上がらせるルネサンス!山田風太郎、頼みましたよ!