宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ

宝塚を「好き」という気持ちを因数分解してみたい、という思いで綴っています

『蒼穹の昴』新人公演感想


本公演は超特急なのに間延び、新人公演のほうが短いけど濃密だった



『蒼穹の昴』の本公演は、大長編のダイジェストで、公演時間2時間30分中、お芝居はフィナーレを除けば実質2時間10分くらいでしょうか。


本公演は時間が足りなくて超特急なのに、通してみると間延びしてしまう印象がありました。


本公演の間延びの原因は、玉座前で同じ服を着た官僚たちがわらわら口喧嘩したり、楊先生の家の長机で政治論を語っての、政治状況シーンが延々続くこと。


本公演はともかく、新人公演で今さら清朝の歴史の勉強をしなくてもいいですよね。


新人公演では、紫禁城内や楊先生の長机の政治シーンを思い切って削って、ジャーナリストたちの説明でつなぎ、


主要キャラが1対1で思いをぶつけあうシーンをメインで残し、物語の芯を「文秀VS西太后」で一本通すことで、すっきりして見やすくなった印象です。




個人的MVPは西太后の夢白あやさん。いやーっ、怖かった。


一樹千尋さんが演じる役は怖いのはよく知っているから、一樹さんの西太后が怖いのは想定内だったけど、夢白あやさんの西太后は新鮮に怖かった。


西太后は自分のことを光緒帝に「親爸爸」(お父さん)、周囲には「老仏爺」(仏様)と無理やり呼ばせていたそうですが、「宮中でただ一人の男、彼女の助言は絶対」な夢白西太后ならやりそうだ。


宮中では「厳父」であらねばと気を張っていて、


でも19歳で亡くした息子の歳に近そうな、男でも女でもない春児の前では、漁師の子と泳いだ娘時代の顔や、4歳の時から冷たい玉座に座らせることになった甥への母性がふとこぼれ出る。


彼女の語りが絵が見えて上手いんですよね。何十年も前にいっしょに泳いだ漁師の子の日焼けが見えた。


華世 京さんは、情の深さとロジカルな説得力が共存していて、「梁秀」という名前の印象にぴったり。


(彩風さんは、文官というよりパッション溢れる知将「梁秀」という名のほうが似合いそう。袁世凱よりあなたが軍にいてほしい)



音彩 唯さんの李玲玲は、ホントに可憐で可愛い。物語の中で玲玲の笑顔が、昴の輝き。



李鴻章役の咲城 けいさんは、前回新人公演『めぐり会いは再び next generation-真夜中の依頼人(ミッドナイト・ガールフレンド)-』では歯がゆさが残った公演だったのかな、と感じましたが、ラストの栄禄にお前に天命は無い、と剣を突き付けるシーンなど、腹の据わり方に男役として成長が感じられました。