谷貴矢によるウエクミのSAPA のパロディ?『Rain on Neptune』感想
注:この記事には『FLYING SAPA -フライング サパ-』『Rain on Neptune』のネタバレがあります。
ドラマティック・ショースペース
『Rain on Neptune』
作・演出/谷 貴矢
海王星ネプチューンに降る、ダイヤモンドの雨。それは海王星の月、トリトンから、青く輝く氷の惑星へと贈る、ラブレターであるという。
そんな噂を聞きつけ、伝説のトレジャーハンター、シャトーが海王星にやってきた。
激しい嵐と冒険を求める彼だったが、降り立った先は数多の宝石と音楽に溢れる、美しき夢の世界であり、意外な歓迎を受けてしまう。
月の王トリトンは、戸惑うシャトーに二つだけ条件を提示する。
一つは、ダイヤモンドにだけは手を出さないこと。そしてもう一つは、氷の女王、ネプチューンに恋心を抱かないこと。
それさえ守れば、ここにいつまでもいてよいと言う。遠い遠い故郷、フランスを想起させる追憶のチューンに乗せ、不思議な住人達と冒険を忘れ安らかな時を過ごすシャトー。
だが、雨の彼方に浮かんでは消えるネプチューンの美しい姿に、次第に心惹かれていってしまう。恋が、雨を嵐に変えていく。
舞浜アンフィシアターの空間をドラマティックに活かし、芝居仕立てで紡ぐショースペースと、クラシカルでスペクタクルなフィナーレ。新たな試みによる二部構成で送る、コズミック・コンサート。
事前の内容予想:谷 貴矢による、海王星の衛星トリトンの地質学ポエム
上記の記事より抜粋
管理人:海王星は太陽系の最果ての惑星で(冥王星は2006年に「準惑星」に降格)とにかく太陽から遠くて、寒いのよ。(平均表面温度はセ氏マイナス235度)
なのに、火山活動があるのよ。
紅子:マイナス235度ってカッチンコッチンで、マグマがファイヤー!フィーバー!どころじゃないでしょ!
管理人:地球でいう高温のマグマではないんだけど、トリトンにある氷の火山では、なんとマイナス200度近い低温の液体窒素や液体メタンなどが噴き出しています。
それはまるで、ダイヤモンドダストを噴き上げる火山のような光景ではないかしら(見たことないけど)
管理人:そのエネルギーの源は、Wikiによると
”この氷の火山が「噴火」するための、つまり氷が融解するためのエネルギー源としては、海王星がトリトンに及ぼす潮汐力であろうと考えられている。
これによってトリトンは変形し、これによる摩擦で氷が融解しているという考え方である。”
つまり、トリトンは海王星のおかげでフィーバーしているのね。
紅子:で、なんで恋しいネプチューンに思いを寄せてはいけないのよ。
管理人:トリトンには地表があるんだけど、海王星はガスでできた惑星だから、「足を踏み入れる」ことができないのよ。
しかも。
トリトンは元々太陽系の外にあったのが、海王星の重力に引き寄せられて衛星になったらしいのね。Wikiによると
”海王星の自転と逆向きに公転するため、潮汐力で公転速度と軌道が低下しつつあり、将来は海王星に衝突すると思われる。”
紅子:惹かれ合ったもの同士が、互いに目も合わさず、最後は衝突してしまう・・・
管理人:という、すこぶるサイエンスな話題も、谷先生にかかるとこんなサイエンス・ロマンティック・コズミック・コンサートになってしまうのね。
実際に見た感想:宇宙SFアニメあるある全乗せ
拝見した感想は、これは劇中、”ギャラクシー・ショー・スペース”で取り上げられた宇宙アニメのモチーフを、1時間15分の枠にギューッとつめこんだ、
宇宙ものSFあるある全乗せ
ですね。
〇銀河鉄道999
モチーフ:地球以外の星で、機械(無機物=石)の身体を手に入れようとする少年の話。
松本零士による漫画作品。一人の少年が謎の女性メーテル(母親は、機械帝国の女王プロメシューム)とともに銀河超特急に乗り、機械のからだをくれるという終着駅を目指して旅をする物語。
〇宇宙戦艦ヤマト
モチーフ:放射能に汚染され黒い雨が降る地球から、はるか彼方へ飛び立つ。
ガミラスという正体不明の敵に攻撃され、放射能に汚染された地球は、滅亡まであと1年。
滅亡を避けるため、「宇宙戦艦ヤマト」で放射能除去装置を求めて、銀河系の彼方にあるイスカンダル星を目指す。
〇宇宙海賊 コブラ
モチーフ:主人公コブラは脳に信号を与えて夢を見させるトリップ・ムービーを体験すると、本来プログラミングされていない過去の記憶を思い出した。
コブラは相棒の女性型アーマロイド「レディ」と共に、スリリングで危険に満ちた人生に戻るため、宇宙へ飛び出していく。
相棒の女性型アーマロイド「レディ」と共に、スリリングで危険に満ちた人生を送る、左腕に特殊な高性能光線銃「サイコガン」を付けた、一匹狼の宇宙海賊・コブラの物語。
〇『美少女戦士セーラームーン』より
乙女のポリシー
ムーンライト伝説
モチーフ:星のプリンセスが、地球から来た青年と恋に落ちる。長い時を宝石(幻の銀水晶)に閉じ込められて眠る。
Wikiより
前世は月の王国「シルバー・ミレニアム」の王女プリンセス・セレニティ。
地球に憧れて月から眺める日々を送っていたが、地球国の王子プリンス・エンディミオンと恋に落ちる。
しかし、古くからの掟で「月の人間と地球の人間は通じてはならない」と決められていた。
その後、ダーク・キングダムが引き起こした月と地球の戦争で命を落とし、母であるクイーン・セレニティの力で20世紀の地球人・月野うさぎに生まれ変わった。
こんなばらばらの宝石のようなパーツを結び付けて形成した首飾りは、宝塚で例えれば、上田久美子先生による『FLYING SAPA -フライング サパ-』のパターン。
※『FLYING SAPA -フライング サパ-』ざっと要約
戦争で滅んだ地球で家族を殺されたサイエンティスト(汝鳥)が、水星で総統01となる。
「みんなバラバラだから争うんだ!みんなの意思を統合して一つになれば、争いは起きない!」と考え、
娘ミンナ(星風)に全地球人の意識を統合しようとして、過去を消された男オバク(真風)に阻止される。
※『Rain on Neptune』ざっと要約
海王星の月の王トリトンは、かつて汚染された地球で、黒い雨にむしばまれて死んだ妻をクローン技術で蘇らせるというタブーを犯し、地球を追放されたマッドサイエンティスト。
トリトンは海王星に、氷の女王、ネプチューンをはじめ、数多の宝石と音楽に溢れる、美しき夢の世界を作り出す。
人間のように見える宝石たちは、妻のDNAを元に作り出したクローン(意思を持ち始めた石)だった。
そこに、孤児院で姉と慕ったベルメール(実は地球に残してきたトリトンと妻ルミエールの間に生まれた娘)を黒い雨のせいで亡くし、宇宙に激しい嵐と冒険を求め旅立った伝説のトレジャーハンター、シャトーがやってくる。
シャトーはネプチューンと恋に落ち、戦いののち、トリトンの許しを得てネプチューンと共に地球へ帰る。
ね、似てません?
『FLYING SAPA -フライング サパ-』では、みんなの意思をひとつにした世界を作ろうとするのを阻止し、
『Rain on Neptune』では、ヒロインは意思を持った石(クローン)で満ちた世界から、地球へ飛び立つ。
ラスト、トリトンはあんなにあっさりとネプチューンを手放すの?と思いましたが、
”恋が、雨を嵐に変えていく。”
これは「和解」がテーマのシェイクスピア劇「テンペスト(嵐)」のオマージュでしょうか。
シェイクスピア最後の戯曲『テンペスト』は、夢と、魔法に満ちた、妖精エアリエルが空を舞う島での、嵐の後の浜での物語。
舞浜にぴったりだ!
あらすじ
絶海の孤島。そこでは大公の地位を追われたプロスペローとその娘ミランダが、妖精エアリエルを手下にして魔法の国を作っていた。
そこに、かつて自分を追放した兄たちが、大嵐で難破して流れ着く。
漂着した王子ファーディナンドは、ミランダに出会い、2人は一目で恋に落ちる。
プロスペローに課された試練を勝ち抜いたファーディナンドは、ミランダとの結婚を許され、共に国へ帰る。
谷 貴矢先生は、本来もっとドロドロした物語を構想していたそうですが、コロナ禍によるもろもろで”アンハッピー脳が死んだ”そうで。
シェイクスピアの『テンペスト』も、『ロミオとジュリエット』に始まり、対立と憎悪に満ちた世界を書き続けた作家が最後に辿り着いた、「和解」がテーマの物語です。
有名な台詞
(第5幕第1場、生まれて初めて大勢の人間を目にしたミランダの言葉)
「まあ、不思議!ここにはなんて多くのすてきな人たちがいることでしょう!人間ってなんて美しいのでしょう!ああ、すばらしき新世界、こんなに人がいるなんて」
(自分を追放した弟と和解し、娘と王子の結婚を認めたプロスペローの言葉)
「だが、この荒々しい魔法の力を私は今日限り捨てよう」
「この大地にあるものはすべて、消え去るのだ。
そして、今の実体のない見世物が消えたように、あとには雲ひとつ残らない。
私たちは、夢を織り成す糸のようなものだ。そのささやかな人生は、眠りによって締めくくられる」
『Rain on Neptune』のラストで歌われた歌の歌詞も、こんなことを言っていたような。
宴の後、舞浜の魔法は消え、雨のあとには虹がかかるのです。
SEKAI NO OWARI 「RAIN」 Short Version PV 主題歌映画「メアリと魔女の花」