宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ

宝塚を「好き」という気持ちを因数分解してみたい、という思いで綴っています

フランツ・リストはなぜ女たちを失神させたのか





花組東京宝塚劇場『巡礼の年〜リスト・フェレンツ、魂の彷徨〜』『Fashionable Empire』の7月30日~8月9日の公演は中止となりました。


管理人は、元々映画のファンで、宝塚のライブビューイングも「生放送の映画」のノリで見ているところがあります。


TVドラマを見て「これを生で見たい」と思わないように、


「生のジェンヌを見たい」という気持ちより、「ジェンヌが演じる「ドラマ」を見たい」という気持ちが勝っている。


ライブビューイングが始まって「お金をかけて遠征しなくても、地元でリアルタイムで宝塚が観られてありがたや」と遠征をサボるようになり💦


「生で観劇したくて、できなくて、震える」悔しさは、あまりわかっていませんでした。




考えたら、ステージ演劇とは生の舞台で、その時、その場限り「再現される芸術」を体験することに意味がある。


苦労してチケットをゲットし、贔屓に会える日を夢見て、お仕事、家事、がんばるぞー!とワクワク過ごす日々に冷や水を浴びせる、相次ぐ公演中止。


お金は戻っても、


人生でその日、その時、東京宝塚劇場で、その時限りの事件に立ち会うという、かけがえのない体験は、


その後何十年生きたとしても、2度と同じものを取り戻すことはできないのですね。




フランツ・リストはなぜ女たちを失神させたのか


管理人が最近読んで、興味深かった書籍の感想でも。


フランツ・リストはなぜ女たちを失神させたのか (新潮新書)
フランツ・リストはなぜ女たちを失神させたのか (新潮新書)
新潮社


そりゃあ、柚香さんみたいなイケメンピアニストに、


「君の為に曲を作ったんだ」


とこんな曲を弾いてくれたら・・・ねえ。



Franz Liszt - Liebestraum - Love Dream



章立てを紹介しますと、


第一章 神童の神話


第二章 スキャンダルはアーティストのトレードマーク


第三章 巡礼の年


第四章 失神したがる女たち


第五章 「ピアニスト」の誕生


第六章 グランドピアノはなぜ大きくなったのか


第七章 ショパン vs. リスト


第八章 四百人の弟子と後継者たち


第九章 知られざる晩年の肖像



管理人はこの本を読んでから『巡礼の年〜リスト・フェレンツ、魂の彷徨〜』のライブビューイングを鑑賞しましたので、


生田先生が『巡礼の年〜』作中にちりばめた、リストの人生の謎に対する生田流の仮説に


「ははーん。こうきましたか。」


と答え合わせをしながら楽しめました。



でも、リストについて特に予備知識もなく、彼の人生について謎を抱いていない方が、


いきなり『巡礼の年〜』だけを見て『わかりやすい!』となるのは、難しいかもしれません。


まだチケットをお持ちの方は、予習にいかがでしょう。


個人的に興味深かったのは



第四章 失神したがる女たち


リストのコンサートでは、本当に女性客が次々と失神したそうです。



紅子:現代の宝塚でも、さすがに「お客様が次々に失神した」という話はないわね。


管理人:モーツァルトやベートーヴェンのコンサートでも、客が次々失神したということも無かったそうです。



まあ、考えてみれば、



辻井伸行 / リスト: 超絶技巧練習曲集 より 第4曲 マゼッパ




・こんなテンポの速い、ピアニストがどれだけ速弾きできるかの限界に挑む、真剣勝負みたいな曲を立て続けに聴いているだけで、心拍数があがる。



・コンサート という 密着 状態 で 観客 同士 が 身動き でき ない なか、 極度 の 興奮 状態 から 呼吸 と 運動量 の バランス が 崩れ た「 過呼吸」が起きやすかった。


・当時の女性たちが、ウエストをぎゅっと締め上げる「コルセット」を身に着けていたため、常に呼吸が浅く、失神しやすかった。



いろいろな理由があったそうです。


筆者の見立てによると、当時のマダムたちは「失神した」というより「失神したがった」


紅子:へっ?意識的に失神できるの?


管理人:「〇〇の奥様、リストのコンサートで失神したんですって」といううわさが広まることが、


「リストのピアノを聞いて、その高度な芸術性に深く魂を揺り動かされ失神しちゃうほど、感性の鋭い、ワタクシ」


アピールになったのでは、ですって。



紅子:「違いの分かる自分」アピールで「失神したがった」女たち・・・


当時の客席係も大変だったのね・・・




これは「違いのわかる男」