宝塚歌劇団は演出家には天国か恐ろしい巨大なサーカスか
劇作家・演出家にとって、宝塚歌劇団とは、裁判に訴えてでも戻りたい天国か、慰留されても振り切りたかった恐ろしい巨大なサーカスか。
配信文化の普及により、宝塚以外の舞台公演を拝見する機会が増えました。
劇団四季のディズニーミュージカルや、東宝制作のブロードウェイミュージカルは、1,000人以上の客席数の劇場での上演でも、出演者数は宝塚に例えたら、外箱3分割体制でのバウ公演くらいの人数なのですね。
これまで外部の舞台やショーを拝見してきた中で、一番「タカラヅカみ」を感じたのは、ディズニーランドのパレードショーでした。もう、ショーというよりも、巨大なサーカス並みの非日常の祝祭ですね。
世間一般における「統一された世界観の中で、とにかく大人数で、とにかくキラキラしたものを見たい!」という需要は、東京ディズニーリゾートが日々数万人の観客に提供していたのですね。
しみじみ、宝塚歌劇団の「一度にたくさんの、統一された世界観を持つ演者が見られる」出しものは、ディズニーの大資本並みの贅沢なのだと思いました。
宝塚の魅力の根本はレビューで、観客の脳に「巨大なサーカス」を見た時と同じドーパミンを流させてくれるところなのでしょう。(いろいろな意味で)手に汗握るハラハラも含めて。
劇団四季のディズニーミュージカルは「大人の鑑賞に堪える優れた児童文学」で、東宝ミュージカルは「大人の演劇」。
日本にお芝居を演出できる演出家はたくさんいますが、「巨大なサーカス空間」を演出できる方は少ないのではないでしょうか。
宝塚の大劇場でも、脚本(原作)を外部に求めたとして、せっかくのサーカス的空間で、ドラマシティでも上演できそうな演劇を、バックダンサーを水増しして上演するような演出が多い印象があります。
演劇と音楽の魅力が融合した舞台は、外部にたくさんあるのでしょう。演劇と巨大なサーカスが融合した、翻訳ものでなく日本オリジナルの舞台空間の演出ができる場所は、需要はどこにあるのか?
今在団しているお芝居の作家さんたちには、宝塚歌劇団の他に無い魅力である、サーカス的、ページェント的な魅力を生かした演出を突き詰めてほしいです。