宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ

宝塚を「好き」という気持ちを因数分解してみたい、という思いで綴っています

敵もスペイン人なのよね『NEVER SAY GOODBYE』感想




宙組公演『NEVER SAY GOODBYE』初日舞台映像(ロング)



あらすじ


1936年ハリウッド、新作映画「カルメン」の制作発表パーティ。本場スペインの闘牛士ヴィセント・ロメロ(芹香)や女優エレン・パーカー(天彩)が紹介される中、映画の脚本を書いたキャサリン(潤花)が飛び込んできて、


「自分の書いたシナリオとは違う、カルメンは抑圧に抵抗する人民の象徴の女性なのに、ただのメロドラマにされた!」などと、プロデューサーと喧嘩を始める。


その姿を「魂を震わせる女性しか撮らない」主義の人気カメラマン・ジョルジュ(真風)がカメラに収める。


キャサリンは、フィルムを渡すようジョルジュに詰め寄るが拒否され、憤然とその場を立ち去る。


しかし、ジョルジュは、自分を飾らないキャサリンの姿に、他の女性にはない魅力を感じ始める・・・。




主役ジョルジュは少年の頃ポーランドを飛び出し、パリで写真家として成功し、ハリウッド女優を恋人に持つ浮わついた奴っぽく見えて、


故郷を喪失した「根無し草(デラシネ)」意識が強い。


「俺は根無し草だから、状況を客観的に見て語れるんだ」と言っているが、


スペイン闘牛士ヴィセント・ロメロのような、「故郷が襲撃されたら、武器を取って守るのはあたりまえだろ!」と迷いなく言える「郷土愛、地元の絆」的なものに飢えているフシもある。


女性劇作家キャサリンはリベラル(自由主義)というか、


「ハリウッドの商業主義に私の台本を書き変えられた!」「民主主義の危機よ!」「ソビエト連邦の社会主義の理想が!」


世馴れたところが無く、すぐ〇〇主義で語る頭でっかちのインテリ。


そんな2人が1936年、ナチス政権下のベルリンオリンピックに対抗してバルセロナで開かれた、人民オリンピックの開会式のリハーサルで再開する。


そこに、フランコ将軍がモロッコで蜂起したとの知らせが届く。


2人はスペインに留まり、ジョルジュは写真で、キャサリンは人民戦線政府側のラジオ放送で、世界に戦争の真実を伝えようと決意するが・・・。


ホンネ感想 上から目線の他に、地元の目線も欲しかった

2022年、ロシアがウクライナに侵攻し、戦場ジャーナリストだけでなく、一般市民もSNSで現地から情報を発信して世界に拡散するようになり、


ロシアでは国営放送で「ウクライナでネオナチがロシア人を迫害している!」と宣伝している時代。


改めて『NEVER SAY GOODBYE』を見て感じたホンネ。



「スペイン内戦」とは、ジョルジュたちが付く人民戦線政府側を各国の義勇軍とソ連が支援し、


反乱軍側にドイツ・イタリアが付いて、


スペインでソ連とナチスが代理戦争の様相を呈した話。


ジョルジュたちが付く人民戦線政府側も、武器を提供してくれるソ連の言いなり、内輪揉めの果てに、裏切者を粛清の嵐。


ラジオ放送は、政権側に都合のいい情報のみを流すことを強要し、バルセロナ伝統の「サン・ジョルディの龍退治の祭り」は「ナチズムと戦う人民戦線政府」の解釈を押し付けられる。


小池修一郎先生は、裏切りと内輪揉めだらけで複雑怪奇なスペイン内戦の物語を、「戦争の真実を届けようとしたジャーナリストたち」に焦点を絞り、メロドラマも盛り込んで、


虚栄のハリウッドに始まり、郷土色豊かなスペイン人民オリンピックの開会式や「サン・ジョルディの龍退治の祭り」シーンを効果的に使って、2時間でよくまとめたと思います。


贅沢な望みを言えば、


主役はポーランド出身の”根無し草”ジョルジュと、アメリカの”リベラル”なキャサリン。


お話全体に外国の”意識の高い”人たち視線の、上からの「俯瞰」目線の話で、


「当事者のスペイン人」はどう思っていたのか?の視線が薄くなってしまった。




殺す敵は「ファシズム(全体主義)」「共産主義」という○○主義ではなく、


フランコ将軍側に付いたのも同じスペイン人、人間なのよね。


現代の民主主義国家において、決してナチズムは認められないけれど、当時フランコ将軍側に付いた人たちは、何を思っていたのだろうか。



1999年、スペインで、スペイン内戦の時代を舞台にした映画が公開されました。



1999年スペイン映画「蝶の舌」


La lengua de las mariposas (José Luis Cuerda, 1999) | FlixOlé



1936年、スペイン、ガリシア地方の小さな村。喘息持ちで皆と一緒に一年生になれなかった8歳の少年モンチョ。パパは仕立て屋さん。


初登校となったこの日、モンチョは怖さのあまり教室から逃げ出してしまう。


そんなモンチョをグレゴリオ先生は温かく迎え、単なる勉強ではなく、みんなで森の中へ虫取りに行って、


じゃがいもがアメリカ原産であること、


ティロノリンコという鳥は、求愛期になるとメスに蘭の花を贈ること、


蝶の舌は渦巻き状になっていること、


自然界の驚きに満ちた仕組みや、美しさを教えてくれるのだった。


「先生、あの世に地獄はあるの?」


「地獄はあの世に無い。この世で人間が作るものだ。」



大切なことをたくさん教えてくれた先生。


なのに。



先生が学校を辞める?



え、先生は神様を信じていない?キョーサンシュギ?


パパ「パパが先生に上着を仕立てたことは、絶対人に言うな。」


ママ「あの先生は、アカ(共産主義者)よ。」


・・・?


ある日、大人達が、先生を囲んで石を投げていた。


ママ「先生は、アカだとおっしゃい!」



ぼくも


「せんせいは、あか。」


と言った。


先生は、ドナドナの牛のように、トラックで連れていかれた。


ありがとうを言わなきゃ。さよならを言わなきゃ。


でも・・・


先生!


「ティロノリンコ!蝶の舌!」




フランコ将軍に協力した、小さな村での話です。