映画館で見ても美雪出てこない『今夜ロマンス劇場で』感想
東京宝塚劇場千秋楽、おめでとうございます!
月組公演『今夜、ロマンス劇場で』『FULL SWING!』初日舞台映像(ロング)
映画監督を目指し助監督として働く健司は、足繁く通っていた映画館・ロマンス劇場で、奇跡的な出会いを果たす。
それは、映写室で見つけ繰り返し観ていた古いモノクロ映画のヒロイン・美雪──健司が密かに憧れ続けていた女性であった。
突然モノクロの世界から飛び出してきた美雪に、戸惑いながらも色に溢れる現実世界を案内する健司。
共に過ごすうちに強く惹かれ合っていく二人だったが、美雪はこの世界へ来る為の代償として、ある秘密を抱えていた……。
映画館で『映画から登場人物が飛び出す映画』を見るということ
紅子:月組公演『今夜、ロマンス劇場で』全公演無事完走、おめでとうございます!
管理人:ああ、私は今日ほど、遠征をさぼってライビュ専科であったことを、後悔したことはない!
紅子:ライビュ専科がどうした。
管理人:無理してでも、遠征したらよかった。
このお芝居は、ほんもののジェンヌがいる劇場という場所で、ジェンヌの姿をフィルムに焼き付けた映画という幻影を作成して上映し、
そこからほんもののジェンヌが飛び出す、という「体験」を楽しむアトラクションでもあるのよね。
それを全部「映画館」で見たらさあ。
劇のラスト後、映画館の照明がついて、灰色のスクリーンを見た途端、
ああ、私は、生でみてこそわかるものを、映像という、所詮ファンタスマゴリア(走馬灯のように次々と移り変わる幻影)を見ていたに過ぎないのよね、と実感しちゃった。
紅子:で、「幻影」を見た感想 は?
管理人:生で観劇された皆様が、「マスクがぐちょぐちょになるほど泣いた」「タオル必須」とおっしゃっているので、映画館に替えのマスクとタオルを持って行って
「準備万端!よし、泣くぞ!」と気負い過ぎたせいか、
ごめん、よくわからなくて、泣けなかった・・・感受性が衰えたのか、私の感性がもともと相当鈍いのか・・・
紅子:ぱさぱさに乾いてゆく心を ひとのせいにはするな みずから水やりを怠っておいて
自分の感受性ぐらい 自分で守れ ばかものよ。
管理人:素朴なギモン1
・物語の重要な要素である、「映画界から現実の世界に飛び出した者は、人間の温もりに触れると消える」というルール、
これが、「心の交流、愛に触れたぬくもり」といった心のものなのか、ついうっかり体がぶつかっても、消滅してしまう物理的なものなのか。
「どんなに愛し合っていても、身体が触れていないので、人の温もりは感じていません!セーフ!」
「嫌いな相手に手を掴まれた!人間の体温を感じたので、アウト!」
なの?
管理人:素朴なギモン2
・映画監督を目指し助監督として働く健司が、美雪の出る映画を何百回も繰り返し見ているのはいいんだけど、
いざ会社の脚本コンペが開催され、脚本が採用されたら自分で監督できる!となって、
「何を書いたらいいかわからないし、傑作を撮れないかもしれないし」と言い出して、大スター俊藤龍之介から
「君は傑作になるから作品を撮るのか?傑作を撮ろうとする姿勢こそ大事だろう」
と激励されているところ。
映画会社の、ものすごい倍率の助監督募集選考を潜り抜けて採用され、現場で失敗しながらも必死で映画作りに携わっている人が、こんなこと思っていたの?
ブログ村で、宝塚ブログを書いて世間に公開している人で「私はプロの劇評家のような批評は書けそうにないから、観劇感想は書きません」なんて人いる?
プロとしての技術は当然必要だけど、素敵なものを見て、その感動を書かずにいられない!溢れる愛を吐き出したい!という衝動が第一でしょ。
美雪が出ている映画が好き>素敵な映画を作りたい なの?
「失敗したら恥ずかしいから、挑戦したくない」って。対象と真正面から向き合って、決定的なことに対峙するのを回避してる主人公って何だよ。こじらせすぎだよ。
紅子:もっと気楽に見たほうがよくね?「さあ、私を泣かせてください!」と期待し過ぎた?
美雪と健司、どちらが成熟したのだろう
管理人:新人公演の礼華さんの演技を先に見たせいもあるのかもしれないけれど、
礼華さん版の『今夜、ロマンス劇場で』は、瑞々しいボーイミーツガールもので、最後は「触れ合えないけれど、愛する」
月城さん版の『今夜、ロマンス劇場で』は、屈折した「触れ合えないからこそ、愛せる」
紅子:アンタがパートナーさんから「男役は男じゃないのになぜ愛せるんだ?」と聞かれて「リアル男じゃないからこそ、純粋に愛せるの!」と言い返しているアレ?
管理人:新人公演版では、ラストの病室、精神面で成長しない(できない)美雪を、老成した健司が幼子を抱くように、愛おし気に包み込もうとする。
本公演版では、健司が美雪に「抱きしめて」と言われて、差し出した手が止まってしまったのを、美雪がそっと包み込む。
美雪はちゃんと、精神面で成熟したなあ、と思った。
新人公演の感想はこちら
映画版の感想はこちら