宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ

宝塚を「好き」という気持ちを因数分解してみたい、という思いで綴っています

シャーロキアンも認めた!ホームズはなぜ永遠なのか



第44回日本シャーロック・ホームズ大賞は、宝塚宙組公演『シャーロック・ホームズ-The Game Is Afoot!-』に決定したそうです!


おめでとうございます!


シャーロック・ホームズに関する文献や映像化、舞台化作品は現代でも毎年大量に発表されていて、その中で大賞を受賞するということは名誉なことだと思います。



1977年10月に、小林司(2010年没)と東山あかねが呼びかけて47人のシャーロッキアンが集まり、日本シャーロック・ホームズ・クラブ(JSHC)を創ったそうで。


諸外国では、限られたエリートだけが集まってホームズについての知識を誇りあったり、「ワトスンは何回結婚したか」などという狭い範囲の研究をする会をつくっているようですが、


この会はもっと大衆的で、博識を競うようなことをなくし、興味の対象も、ホームズを取り巻くヴィクトリア朝時代の文化や社会までも含めて広くとりたいと思います。


・・・ワトソンの結婚回数だけを研究する会・・・ワトソンああ見えて、どんな私生活を送っていたのか・・・



作者ドイルは、ホームズと決別しようと、24編目の短編において大悪人モリアーティ教授ともども滝つぼに落ちて死んだことにしたが、読者の要望に抗しがたく『シャーロック・ホームズの帰還』(1905)で復活させている。


ホームズの居所であるロンドンのベーカー街221B(実在しない)には、いまでもホームズあての手紙が舞い込むという。


ホームズの研究家やファンはシャーロッキアンSherlockianといわれ、世界各国に多数を数える。


現在のシャーロキアンの方も、


「ホームズ時代のイギリス財政」


「アイリーン・アドラーは本当に逃げ延びたのか?」


「なぜシャーロック・ホームズは永遠なのか」


などなど、「100年以上前の古典文学の研究」を遥かに超えた熱量で、ホームズの謎に挑んでいる。



ホームズの面白さは、変人天才シャーロック・ホームズと、読者の側にいる常識人ワトスン博士という最高の”バディ”設定(今でも数えきれないパロディがありますね)



この帽子、コート、パイプがあれば、犬でも女の子でもホームズ!わかりやすい!


このアイコンのおかげで、現代でも「ホームズ的」アイコンが世界に溢れ、


なによりホームズが本当に実在したかのように思えて、読者が受け身でなく、ホームズが実在した世界線の19世紀ロンドンへの探検の旅、コンテンツ・ツーリズムを楽しむ「シャーロキアン」になれる。


作者が死んでも蘇るホームズ

宝塚版『シャーロック・ホームズ-The Game Is Afoot!-』は原典のいちエピソードの舞台化ではなく、サー・アーサー・コナン・ドイルの著したキャラクターに拠る「2次創作」です。



宝塚版『シャーロック・ホームズ-The Game Is Afoot!-』は、


1作のみで作品世界から”消えた”「アイリーン・アドラー」、


シャーロック・ホームズを抹殺するためだけに、唐突に登場した「モリアーティ教授」、


そしてモリアーティと共にライヘンバッハの滝に落ちた「シャーロック・ホームズ」、


3人の邂逅と、死と、再生の物語。


原作には、3人が邂逅するエピソードはありません。



ホームズの作者コナンドイルは、ホームズシリーズがあまりに人気となり、続きを書け書けと言われるし、


ベーカー街221B(実在しない)に「作者コナンドイル様」でなく「ホームズ様宛」の事件捜査依頼が来るのに嫌気がさしていたそうで、


念願の歴史小説執筆に専念するため、作中でホームズを「殺す」ために、モリアーティとホームズを滝つぼに落としました。


が、世界中の読者から怒りの手紙が殺到し、しまいにはドイルの母親から「お前、ホームズを殺すなんて!」としかられ、


ホームズは復活します(笑)


現代の連載漫画で、登場人物が作中で死んだのに、読者の声で「実は生きていた」設定になったら、ちょっとどうかと思いますが💦



ホームズは、作者・コナンドイルも殺せなかった。


作者が「ホームズは死んだ」と明言したのに、作者の意向は否定され、無視され、「無かったこと」にされた。


作者が殺しても死なないホームズ。


ファンたちは、「サー・アーサー・コナン・ドイルの著したキャラクター」を使って、「ホームズとアイリーンの語られなかったラブロマンス」とかを勝手に作り出す。


ホームズは「コナンドイルの著したキャラクター」を遥かに超えて、ファンにあたかも実在するように受け止められ、遊ばれる。


ある意味、殺されたのは作者・コナンドイルである。


「作中人物」から「キャラ」化、ファン参加型「コンテンツ」に発展し、ギネスブックによれば、「最も多く映画化された主人公」となったホームズ。


遂には、イギリスから遠く離れた日本で、コナンドイルもびっくり、女性がホームズ(とモリアーティ)の死と再生を演じるということ自体に、ホームズというコンテンツ受容への批評性があったと思います。