宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ

宝塚を「好き」という気持ちを因数分解してみたい、という思いで綴っています

宝塚でマンガ小説原作が増えたウラ事情が切ない



「読んでから観劇するか、観劇してから読むか」


昭和後期、角川書店の二代目社長・角川春樹が、自社の出版する小説を映画化するプロデュースに乗り出し、『犬神家の一族』『戦国自衛隊』『セーラー服と機関銃』など話題作、ヒット作を連発、


「読んでから見るか、見てから読むか」のコピーが、映画館と書店を席巻した時代がありました。


角川書店の社長が製作者ですから、映画がヒットしたら、原作も売れて、2度美味しい。映画関係者も街の本屋もニコニコ。


その後の「製作者委員会」方式の先駆けとなった、画期的なビジネスでした。



最近の宝塚歌劇は、角川春樹もびっくりの、小説やマンガ原作舞台の連続です。


メリットとしては、


・いつ興行中止になるかわからないので、版権の高い、円盤化や配信に渋いブロードウェイミュージカルはリスクが高すぎる。日本の小説やマンガ原作なら、融通が利く。


・原作のファンや宝塚ファンが、SNSで勝手に原作の魅力を宣伝してくれるので、上演前から熱心な宝塚ファンが予習の為、原作を買ってくれる可能性がある。


・駄作の可能性が大いにあるオリジナル作品に比べたら、事前に内容の予測がつくので安心。友達も誘いやすい。



デメリットとしては、


・原作での役の比重と、宝塚のスターシステムの兼ね合い問題(ただ、原作者が映像化にあたってアレンジの可否や配役まで口を出すようなことは、日本ではまず無いそそうです)


・オリジナル作を書きたい座付き作家がぶーたれる(笑)



さて、出版社や原作者にとって、「自作が宝塚歌劇で舞台化される」のはどれほどのメリットなのでしょうか。




小説が映画化された場合の不都合な真実


紅子:ところで、小説が舞台化された時の原作使用料の相場っておいくら?


管理人:舞台ではないけれど、参考として、小説が映画やドラマの原作になった場合の原作使用料についての興味深い記事があったわ。



映画化での原作使用料は100万円から200万円ぐらい、最大でも約400万円。


・原作使用料のうち、小説家に代わって製作側とやりとりしている出版社が、手数料として3割ほどを受け取るので、原作者には原作使用料の7割が支払われる。


・事前に定額の原作使用料をもらうより、映画公開後の興行収入から何%かもらえるような契約もありうるが、かなりレア。(映画がコケて大赤字だと、歩合制の報酬をもらえないリスクもある)



さて、出版社や原作者にとっての望みは、「映像化をきっかけに原作を知ってもらい、買ってもらう」ことによる印税収入。


いかに有名スターの主演であっても、莫大な宣伝費のかかった全国劇場公開の映画、もしくは地上波全国ネットのテレビドラマでない限り、映像化は原作本の売れ行きにめざましい影響を与えません。


世間に浸透しないレベルでの映像化なら、原作本が受ける恩恵は、一般に考えられるよりはるかに低く留まります。


せいぜい1回の重版程度、それも映像化の帯を巻いて書店に出荷した分を、すべて売り切ることなく終わったりします。


・全国数百館での映画公開か、地上波全国ネットのドラマ放送でようやく、単行本で10万部、文庫で20万部ほどの売り上げ効果。(実際に映像化されたものの、文庫で1万部程度の重版のみ、100万円以下の儲けに留まることはざら。)



・映画・ドラマ化されたものがコケて、「○○さんが主演の△△って映画、大コケしたんだって」という悪評が広がれば、原作や原作者まで「つまらない作品」「大コケ作品の原作者」というレッテルを貼られる可能性もある。



紅子:宝塚側にとったら、数百万円の使用料で原作の知名度を得て、熱心なファンがチケット販売前からストーリーの見どころをSNSでファンコミュニティに宣伝してくれて、ウハウハだわね。


でも、「宝塚での舞台化をきっかけに、先行画像の帯を巻いた原作を買う宝塚ファン」は、どれくらいいるのかなあ。


原作者には、100万円~200万円くらいのメリットしか無いのかあ。



管理人:まあ、宝塚での舞台化の場合、


「映画・ドラマが大コケして、文春でネタにされる」


とか、世間の皆様に


「原作は名作なのに、宝塚舞台化したら迷作になったんだって!」


という悪評はあまり広まらない、というメリットはあるのでは。



あと、最近の傾向としては、「円盤や配信の収益から原作者に印税が支払われる」のが大きいらしいよ。


映画の興行収入から歩合を受け取れなくとも、DVDやブルーレイ化の際には、印税が原作者・監督・脚本家にそれぞれ支払われます。いわゆる二次使用料です。


日本文藝家協会・日本映画監督協会・日本シナリオ作家協会の規約により、著作者は「ソフト本体価格の1.75%×出荷枚数」と「レンタル事業者がメーカーに支払う金額の3.35%」を受け取れます。


紅子:ははーん。サブスク配信で過去作を見てもらって、印税が入ることもあるのね。


管理人:宝塚もコロナ後、舞台の配信を解禁したよね。配信できないブロードウェイミュージカルより、日本の出版社が版権を持つ原作を舞台化して、配信して儲けるほうが、劇団にも、歩合制の印税が入る原作者にもWinWinだよね。


紅子:それで、日本の出版社が版権を持つ原作の舞台化が一気に増えたのか。


管理人:原作ファンにとっても、宝塚で舞台化されて興味を持っても、特に東京宝塚劇場でのチケットって簡単に取れないからね。配信ならまだ気楽に見られる。(2次元のファンは配信文化にも馴染みがある層が多い)


紅子:この傾向は、当分続くんだろうね。