『うたかたの恋』新人公演感想
「ほー いいじゃないか こういうのでいいんだよ こういうので」
新人公演の配信が開始されてから、もう1年半くらいになりますが、花組の新人公演の配信は初、
花組の新人公演を東京で上演出来たこと自体、2019年以来3年ぶり!
宝塚大劇場での新人公演は中止となり、東京宝塚劇場1回限りの公演を配信されることになった『うたかたの恋』新人公演。
ルドルフ役の希波 らいとさんは、幕開きからしばらく、緊張されているのがありありと感じましたし、技術的なことを言えば、発声とか、心理変化の細やかな表現はまだまだ発展途上でしょう。
でも、本公演に比べて、「柴田作品」として、とても「見やすかった」です。
本公演の柚香ルドルフは、『うたかたの恋ーエリザべート外伝ー』
「あのシシィ」と似た者同士の、子供の頃からトート閣下と戯れてきた「あのルドルフ」で、
柚香ルドルフがこの役作りのまま『エリザベート』に出演しても、何の違和感も無いと思います。
希波ルドルフがこの役作りのまま『エリザベート』に出演したら、笑顔キラキラで、親の愛情をうけて大事に育てられたけど、今ちょっと反抗期で、
トート閣下が来ても、気づかないorソッコーで追い返しそうな健康優良児で、
『エリザベート』ワールドには、全く合わない。
けれど、柴田ワールドには、
「ほーいいじゃないか こういうのでいいんだよ こういうので」
「うん、花組の男役だ いかにも花男って花男だ」
「主演にキラキラした花男、そこに可憐な花娘と、メロドラマ!この三本柱があれば、どこでもタカラヅカ!」
と思いました。
※「孤独のグルメ」井之頭五郎の3大名言
「ほー いいじゃないか こういうのでいいんだよ こういうので」
「うん、うまい肉だ いかにも肉って肉だ」
「主食に米、そこにおかずと、汁! この三本柱があればどこでもニッポン」
をもじらせていただきました。
本公演の『うたかたの恋ーエリザべート外伝ー』的演出は、柚香さんの個性に合っていて、「王家の落日、死に覆われたウイーン世紀末」の物語で、それはそれで面白かったのですが、
2021年星組版『ロミオとジュリエット』でいえば、2番手愛月 ひかるが「死」を演じ、「愛ちゃんの死」がかっさらった【B日程】で、
「死を成就するための愛」の物語でした。
新人公演版の希波ルドルフのほうが、正統派の【A日程】、
柴田先生が元々意図したであろう「愛を成就するための死」の物語、
「西洋版 心中・恋のマイヤーリンク」だと思います。
マリー・ヴェッツェラの七彩 はづきさん、とにかく可憐で、舞踏会の
「来週の月曜日、旅に出よう。帰ることのない旅だ」
と言われたのち、
「くーーーーー!やったーーーーー!」
という表情をしているのが、
あ、心中教唆に感づいてない?ひょっとして、ルドルフが皇位を捨てて、国を出て結ばれると思ってる?
と思ったら、
本妻のステファニーがグン、グン、グンと近づいてきて
「はっ」
やっと気づく演技など、ベタなんですけれど、
「ほー いいじゃないか こういうのでいいんだよ こういうので」