宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ

宝塚を「好き」という気持ちを因数分解してみたい、という思いで綴っています

『Lilacの夢路』正直感想



そーれ そーれ 鉄骨兄弟♪


鉄道は やがてドイツの血となる 骨となる♪



ということで、『Lilac(ライラック)の夢路』『ジュエル・ド・パリ!!』を観劇してまいりました。




イギリス産業革命の影響を受けて目まぐるしく変化する19世紀初頭、ドイツ。プロイセン王国のユンカー(騎士領所有の貴族)であり、今も尚騎士道の精神を受け継ぐドロイゼン家。


その広大な領地には、春になるとライラックの花が咲き乱れている。


ドロイゼン家の長兄ハインドリヒ・フォン・ドロイゼンは、金融王ロートシルト家(世界的富豪ロスチャイルド家)を築いた5人兄弟のように、ドロイゼン家の5人兄弟も一丸となって、新しい産業である鉄道産業を発展させることを夢見ていた。


ある日ハインドリヒは、音大生の末弟ヨーゼフから、音楽家志望のエリーゼを紹介される。


勝気で利口なエリーゼと些細なことで衝突しながらも、二人は次第に惹かれ合っていく。


さらに、エリーゼの幼友達・鉄工職人のアントンとの出会いによって、ドロイゼン家による鉄道事業の歯車がまわり始める。


鉄道産業の設立こそ、ドイツ諸邦の発展と統一に繋がると信じるハインドリヒ。


それは、5人兄弟が力を合わせることによって事業を成し遂げようとする姿とも重なっていく。


兄を尊敬しながらも反論する官僚の次男フランツ、三男ゲオルグより告げられた亡き父親の噂、融資銀行の思惑や国からの圧力等、様々な問題がハインドリヒにのしかかる。


しかし、それらを乗り越える時には、いつも兄弟の力があり、エリーゼの愛があった。



まだ未見の方が大勢いらっしゃるので、ストーリーのネタバレは控えさせていただきます。


・・・


まあ、ストーリーがバレたところで、舞台の面白さが目減りする、という話でも無かったのが、正直残念でした。


そもそも舞台を見ても、「解説」で紹介されている「プロット」以上のことが伝わってこないもどかしさがありました。



これは”芝居”というより、


高校の世界史Bで習った


「19世紀ドイツ 関税同盟からプロイセン主体の民族統一へ」


「ビスマルクの鉄血演説」


といったお堅いテーマについて、謝 珠栄 先生が書いた解説をジェンヌたちがパワポならぬ舞台でプレゼンする、


”受験生必見!華麗なる歴史講義”


ですよ。



もしくは、


「まんがでわかる世界の歴史 第12 巻 ヨーロッパ再編」


ー ”第1章 ドイツの統一”では、架空の鉄職人アントンを語り部にして、彼がドイツで鉄道建設のために尽力する姿を軸に、ドイツの鉄血政策を紹介するー


を原作にバレエ化した


ロマンティック・バレエ「鉄道と魔女」


を見ているような・・・


ロマンティック・バレエ「鉄道と魔女」正直見たいですか?



うーん。


演出家の謝 珠栄 先生は、なぜ『Lilac(ライラック)の夢路』を書こうと思ったのか?


マーケティング?


先生の個人的な趣味趣向?


阪急電鉄からの依頼案件?


依頼案件としても、先生は「ドイツの鉄道事始め歴史秘話ヒストリア」のどこに、その時代に生きた人間のリアルを、物語のキーになるネタを見つけたのか?


5分ごとにいろいろなハプニングや困難が起きるようで、それらは次のシーンではセリフで


「あれは解決したよ。ところで次の難題があってね。」


の繰り返しで、事件が現場で起きていない。



先生が、ドイツ関税同盟やビスマルクの鉄血政策について取材されたのはひしひしと伝わるのですが、


先生は肝心の、製鉄所や電鉄事業の現場のリアルを取材されたのでしょうか?





なーんか、人間が書いた脚本というより、AIがドイツの歴史番組のプロットをつぎはぎして生成したシナリオを見ているようで、


謝先生が製鉄所や電鉄事業にどんな思いを抱いているのかが伝わってこない舞台でした。