鉄道が開通しようがどうでもいい『Lilacの夢路』『ジュエル・ド・パリ!!』感想
『Lilacの夢路』は、もうちょっと面白くなる可能性は、あったと思う
雪組 東京宝塚劇場公演『Lilac(ライラック)の夢路』『ジュエル・ド・パリ!!』、無事大千秋楽を迎えることができましたね。
『Lilac(ライラック)の夢路』への管理人の言い分については、これまでぽつぽつと不満を書き連ねてまいりましたので、こちらをご参照ください。
創作の世界で、主役級のキャラに作者の個性がにじむことはよくありますが、
現場でかかとをすり減らさずに、自宅の書斎で思いついた机上のアイデアで弟たちを振り回すハインドリヒ・フォン・ドロイゼンは、謝珠栄先生の分身なのかも、と思ってしまいました。
宝塚で、メロドラマだけでなく、鉄道事業や製鉄事業など「お仕事もの」を手掛けても良いと思います。
ただ、謝先生が宝塚歌劇団に入団し活躍した1970年代に比べたら、令和の宝塚の客席には、一般企業で働いている(かつて働いていた)ファンが増えていると思います。
美男美女の恋愛については、大いにファンタジーに浸らせていただきたいのですが、
「お仕事もの」作品の描写の細部に詰めの甘いところを感じると、ファンタジーが醒めて「この作者、仕事の現場のリアルをわかってないだろ」という反感にすら繋がりかねないところがあります。
電鉄会社の一部門である歌劇団が、公演解説に”ドロイゼン家の5人兄弟も一丸となって、新しい産業である鉄道産業を発展させることを夢見ていた。”と書いてある作品を上演するのですから、観客には
「ドイツに鉄道が開通してほしい、がんばれ!」
ラストは
「ドイツに鉄道が開通して、よかった!」
と思わせなくてはならんと思うのです。
「先生、鉄道が開通していません!」
「というか、もうドイツに鉄道が開通しようがしまいが、どうでもいいです。」
と観客に思わせてどうするの・・・
謝先生は、何がしたかったのか・・・せめて、劇団の理事長とかプロデューサーとか、鉄道事業のリアルを知るスタッフが脚本をチェックして、意見を言う場は無かったのか?
『ジュエル・ド・パリ!!』
場面の半分くらいは、
「祝!ベルサイユのばら フェルゼン編 上演決定!」
最近割愛されている「オペラ座舞踏会での運命の出会い」と「フィナーレ」を先行上演!
だったのですね。
岡田先生の近作は「古風なショーを古風なまま」上演して陳腐化している感があるのですが、
藤井先生の今作は、斬新なメニューは無いのですが、温故知新的な「定番レシピをあたためて新しい味を出す」ことに成功していると思います。
超個人的なことなのですが、先日学校で懇談会があり、先生から
「息子さんは音楽の時間に、「ヴィヴァルディの「四季」を聴いて、情景をイメージして絵にかいてみよう」という課題で、倒れた十字架の前で白い天使と黒い悪魔が戦う斬新な場面を描いていましたよ。感性が豊かなのですね」
とお褒めの言葉をいただきました。
先生、懇談では黙っておりましたが、それ、きっと、
ヴィヴァルディ: 「四季」より冬:第1楽章[ナクソス・クラシック・キュレーション #切ない]
管理人が自宅で『ジュエル・ド・パリ!!』宝塚大劇場公演の千秋楽の配信を見ていた時に、
第18場 サン・ジェルマン・デ・プレ教会
の場面を息子も見ておりました。
宝塚のショーのパクリです。
藤井先生ごめんなさい。