宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ

宝塚を「好き」という気持ちを因数分解してみたい、という思いで綴っています

実写版リトル・マーメイドを見た 何だよ面白いじゃん




アニメ版では白い肌に紅い髪をなびかせていた主役の人魚アリエルに、アフリカ系アメリカ人であるハリー・ベイリーが配役されたことで公開前から物議をかもしていた実写版「リトル・マーメイド」


香川の映画館で応援上映イベントが開催されましたので、2018年の雪組全ツで購入したポンポンを持参し、人魚と人間の恋路を応援してまいりました。



Halle - Part of Your World (From "The Little Mermaid"/Visualizer Video)


SNSでは色々言われていたようですが、普通に面白かったですよ。


そりゃあ、たとえば「桃太郎」をディズニーが実写化して、


”室町時代のジャパンの岡山県の高梁(たかはし)川で、おばあさんが洗濯していたらピーチが流れてきて、カットしたら黒人の赤ちゃんが出てきました。”


みたいなお話になったら、日本人はびっくりすると思いますが・・・


それに、先行するアニメ版「リトル・マーメイドは、ヒロインが海の泡になる悲しい結末を迎える原作を、ハッピーエンディングに魔改造して賛否の別れた作品です。


どうなることやらと思っていましたが、さすが世界のディズニーでした。





1 舞台設定をカリブ海に変更


原作は1837年にデンマークでアンデルセンが発表したおとぎ話で、おそらくヨーロッパのキリスト教世界を念頭に書かれたお話でしょう。


実写版「リトル・マーメイド」では、舞台を大航海時代のカリブの島国(キューバ、ハイチ、ドミニカ共和国、ジャマイカなどがあるあたり)に変更しています。


これらのエリアは、スペインを始めイギリス,フランス,オランダ,デンマークなどの国々の領地が入り乱れ、


白人の移住者の他に、先住民もおり、サトウキビ栽培のために大勢の黒人たちが連れてこられたため、人種的な多様性があるところです。


主役の人魚アリエルの姉たちも、白人系、東洋人系といろいろな顔立ちをしていて、それぞれが世界各地の海の代表という性格があるらしく(名前もインディラとかカスピアとか)、


画面に多様な人種が登場しても、違和感が無い設定になっていました。




2 キャラ設定


アニメ版のアリエルは、ずいぶんおっとりしたお嬢様で、


たまたま船の遭難現場に居合わせて王子に一目ぼれし、声と引き換えに脚を得たのも、悪い海の魔女アースラ(タコおばさん)に半ば”騙された


”世間知らずのプリンセスの受難”


のような描写になっていました。


実写版のアリエル(ハリー・ベイリー)は、地上の世界に興味津々で、沈没船を探索しては海底に沈んだ陸上の物を集め、地上での使用法について研究しているなど好奇心旺盛な性格に設定されています。


脚を得るのも、アースラが


「アリエルは美しい声をアースラに提供する代わりに、3日間だけ尾びれを足に変更する。


3日以内に王子と真実のキスをできなければ、アリエルはアースラの所有物となる。」


と提示した契約に、悩みつつも同意する、


”リスクを承知したうえで、それでも未知の世界に飛びこむ”


ニュアンスが強かったです。


(ただし、アースラは契約にこっそり「アリエルは王子とのキスに関する条項については記憶を保てず、すぐに忘れる」というただし書きを追加しているので、結局不当契約なのですが)


アリエルは地上に出て人間界の様々なことに興味津々、王子とのデート先でも、好奇心はあるけれど喋れないし人間界の常識を知らないので、いろいろ珍トラブルを起こすのですが、それをきっかけに王子との距離を縮めていく描写が丁寧でした。


エリック王子も、父母とは特別養子縁組の関係で、養父の人種はおそらく白人ですが、養母は黒人です。


(実際のカリブ世界でも、現地に白人女性はとても少なかったので、白人を父とする者の場合、父親が認知すれば、有色人種の母から生まれた子も財産の相続が可能であったそうです)


舞台となる島も規模的に日本の小豆島くらいの島で、アリエルが憧れるエリックは王子というよりは領主の息子、くらいの位置づけで、ボンボンではなく島の振興・活性化のためにいろいろ模索している好青年なので、思わずポンポンを振って応援したくなるキャラでした。


そもそも、元人魚が人間になって、一国の宮廷にあがったら、シシィや某皇后さまどころでない苦労がありそうですが、


小さな島の領主と結婚するくらいなら、まあ、あるかも、というリアリティがありました。




3 まるでアーティスティックスイミング!水中レビューな「アンダーザシー」





「リトル・マーメイド」ミュージッククリップ|「アンダー・ザ・シー」(吹替版)|6月9日(金)劇場公開!



見逃せないのが、浦島太郎でいえば絵にも描けない「タイやヒラメの舞い踊り」の美しさを本当に描いてしまった「アンダー・ザ・シー」


こんなに生命力に富んだ海のレビューショーをどうやって作成したのかと思ったら、アメリカの最高峰のダンサー達が踊るダンスをモーションキャプチャして、海の生き物たちの動きをCG合成したそうです。


宝塚のレビューで、ジェンヌたちが燕尾やスカートの裾をひるがえして華麗に舞うのを見ている時の多幸感が味わえました。


冒頭、アリエルが沈没船を探索しているときにサメに襲われた時の、逃走しようとするアリエルと、それを追跡しようとするサメとのカーチェイスのような追いかけっこや、船が難破して沈没するシーンの迫力なども、


ジェームズ・キャメロン監督の「タイタニック」や「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」の描写にも遜色ない!



とにかく、見て損はない!娯楽映画でした。