宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ

宝塚を「好き」という気持ちを因数分解してみたい、という思いで綴っています

『1789』新人公演感想





宝塚での新人公演は中止となり、東京での1回限りの公演を配信することとなった『1789』新人公演。


出演者には大変なプレッシャーだったと思います。


いやーっ、稀惺かずと、よくやった!発光していた!


個人的にこれまで配信で見た新人公演の中では、新人公演配信第一弾となった縣千主演、『CITY HUNTER』-盗まれたXYZ- 新人公演以来の衝撃と感動でした。


歌唱力は…まあ、頑張れ!な方も散見されましたが、届け、熱量!革命はパッションだ!



新人公演演出担当の谷貴矢先生の演出は、第1幕の狂乱のカジノシーンなど、マリーアントワネットの不倫や享楽のシーンをばっさりカットし、ロナンとオランプのストーリーに焦点を絞っていました。



結果、華やかさは減りましたが、ロミジュリ的なロナンとオランプの格差恋愛、教科書的なフランス革命のお話、ベルばら的なフェルゼンとマリーアントワネットの不倫話と、焦点がぼやけ気味だったお話がすっきりと整理されて見やすくなっていたと思います。



ロナン:稀惺かずと


礼真琴ロナンは、生まれ育った農村を飛び出し、パリでダントンやロベスピエール、オランプたちとの間にある超えられない壁を感じる、どこかひねた影のある青年。


「どこにいても根付いてやらあ!」の雑草魂で、革命の嵐の中でもみくちゃになりながらも自らの居場所と役目を必死に探す青年でした。



稀惺かずとロナンは、隠しきれない育ちの良さを感じました(笑)ひねてない。


実はデムーランと同級生でもおかしくない家に生まれ育ったが、父親の失脚により、農村での貧困を余儀なくされたのかな?


パリに出て、ダントンやロベスピエールといった世界史の教科書に載り続けそうな偉人たちと出会うことで大いに刺激を受け、空白を取り戻すように知識を吸収し、水を得た魚のように「あるべき場所に戻った」ことでリーダーシップすら発揮していく。



デムーランたちブルジョワジー(富裕市民)が、革命のロゴス(論理・言葉・真理)担当なら、


俺はサン=キュロット(労働者)を代表して、革命のパトス(情熱)担当だぜ!


という役割分担の対比がわかりやすくなり、「1789」という作品の魅力を再確認しました。


オランプ:詩 ちづる


オランプって、ロナンに濡れ衣を着せたりとけっこうな猪突猛進キャラで、


正直舞空瞳オランプは、言動が出たところまかせな感があって「今何を考えて行動しているのか」がよくわからなかったのですが💦


詩 ちづるオランプは「今何を考えて行動しているのか」がわかるので助かりました。


年齢設定は、高校生くらいでしょうか?


王太子にテーブルマナーから口のきき方、身のこなしなどをきっちり教える「養育係」というよりは、


深窓の令嬢らしからぬ元気の良さを見込まれて、王太子にとって歳の近い「歩行訓練の体操のおねえさん」兼遊び相手として選ばれたのかな?


ロナンとは絶対的な身分差があるはずなのですが、「畑仕事で鍛えたロナンの二の腕、ワイルドで素敵💛」と惚れたのかなあ、などと、存在にリアリティがあるキャラで親しみやすくて、好演だったと思います。



マリー・アントワネット:瑠璃 花夏


マリー・アントワネット(瑠璃 花夏)が、賭け事にふけるシーンがカットされ、フェルゼンとの不倫も、


奥様が若いツバメと火遊びしたけど、息子を亡くして「これは不倫のバチが当たったのね」と大いに反省しました。


的な、マリーアントワネットにしてはなんだかスケールの小さい存在になってしまった感があります。(カトリックだからバチが当たるという言い方もちょっと違うのですが、なんだか日本の奥様っぽい、と思ったら、『柳生忍法帖』でヒロインをされた方なのですね)


改心後は情の深い、やさしいおかあさんでした。


シャルル・アルトワ[ルイ16世の弟]紘希 柚葉


そのぶん、アルトワ伯の存在感が強められ、媚薬を振りかざすイロモノキャラから「朕は国家なり」の「王権神授説」を信奉して疑わない、ロナン達と対峙するボスキャラ的な大きさが出てきて、話の輪郭がくっきりしたように思います。