宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ

宝塚を「好き」という気持ちを因数分解してみたい、という思いで綴っています

fffラストシーンの第九の意味


ベートーヴェンの交響曲第9番は不思議な曲である。


交響曲は、讃美歌やオペラではない。


普通、交響曲には「歌」は付かない。


なのに、ベートーヴェンは作家シラーによる「歓喜に寄す」の世界を音楽にしたくて、交響曲の第4楽章に「合唱」をくっつけてしまった。


では「歓喜に寄す」の歌詞とはどんなものなのか。



喜びで、喜びとともに、歓喜の歌を 歌おうではないか!



霜降り明星・粗品『1万人の第九』の詩を朗読!せいや「まっすぐ小栗旬に見えた!」😀


霜降り明星の粗品が、「fff」のラストシーンと同じことをしている!





「歓喜に寄せて」


おお友よ、このような旋律ではない!

もっと心地よいものを歌おうではないか

もっと喜びに満ち溢れるものを

(以上3行はベートーヴェン作詞)


歓喜よ、神々の麗しき霊感

天上楽園の乙女

我々は火のように酔いしれて

崇高なる者(歓喜)よ、汝の聖所に入る


汝が魔力は再び結び合わせる

(以下2行は1803年改稿)

時流が強く切り離したもの

すべての人々は兄弟となる

(1785年初稿)

時流の刀が切り離したものを

物乞いらは君主らの兄弟となる


汝の柔らかな翼が留まる所で

ひとりの友の友となるという

大きな成功を勝ち取った者

心優しき妻を得た者は

自身の歓喜の声を合わせよ


そうだ、地球上にただ一人だけでも

心を分かち合う魂があると言える者も歓呼せよ

そしてそれがどうしてもできなかった者は

この輪から泣く泣く立ち去るがよい


すべての存在は

自然の乳房から歓喜を飲み

すべての善人もすべての悪人も

自然がつけた薔薇の路をたどる


自然は口づけと葡萄の木と

死の試練を受けた友を与えてくれた

快楽は虫けらのような者にも与えられ

智天使ケルビムは神の前に立つ


天の壮麗な配置の中を

星々が駆け巡るように楽しげに

兄弟よ、自らの道を進め

英雄が勝利を目指すように喜ばしく


抱き合おう、諸人(もろびと)よ!

この口づけを全世界に!

兄弟よ、この星空の上に

聖なる父が住みたもうはず


ひざまずくか、諸人よ?

創造主を感じるか、世界中の者どもよ

星空の上に神を求めよ

星の彼方に必ず神は住みたもう

この「歓喜に寄す」はルードヴィヒのオリジナルではなく、もともとゲーテと同時代の作家シラーによるポエム。


ルードヴィヒは若いころにこの「歓喜に寄す」を知り、ずっと音楽作品にしたいという構想を温めていたそうです。


で、ルードヴィヒが元の詩にオリジナルで付け加えた歌詞が、



おお友よ、このような旋律ではない!


もっと心地よいものを歌おうではないか


もっと喜びに満ち溢れるものを



第1楽章から第3楽章まで、50分近く長々と演奏してきて、



「おお友よ、このような旋律ではない!」




それまでの50分を自己否定!



そして、ラストは


「幸せだったー」



”fff”とまんま同じでは。


”fff”は、EUへの賛歌?


ル・サンクの脚本を読んだ限りでの印象では、「fff」第九の「歓喜に寄す」についての、


つまりロベスピエールが到達できなかった「フランス革命の精神」の精華を、


ルヴィヒは音楽で、ゲーテは文学で、


そしてナポレオンは「タタタタン」と音楽を構築するように、EUに繋がるヨーロッパ世界のシステムをデザインした(ヨーロッパ大陸や日本の民法の基になり、今も改訂されながら使われているナポレオン法典とか、ヨーロッパ大陸で広く流通し、農夫に畝を耕した後与えたナポレオン金貨とか)


ということへの、豪華出演者による夢のシンポジウムではなかろうか?


私はウエクミと同世代だと思うのですが、世代的に「歓喜に寄す」といったら、年末の風物詩というより「ベルリンの壁崩壊の時に流れていた音楽」、欧州統合の象徴というイメージが強烈なんですよ。


1989年12月25日、ベルリンの壁開放を記念して、ユダヤ系であるバーンスタイン指揮で演奏された第九は、歓喜を自由(フラハイト)に置き換え歌われました。


自由よ、神々の麗しき霊感よ


天上楽園の乙女よ


我々は火のように酔いしれて


崇高なる者(自由)よ、汝の聖所に入る



メインには西ドイツのバイエルン放送交響楽団を据え、東ドイツのシュターツカペレ・ドレスデン、アメリカのニューヨーク・フィルハーモニック、イギリスのロンドン交響楽団、フランスのパリ管弦楽団、ソ連のキーロフ歌劇場管弦楽団の計6楽団員が集い、


合唱には東西ドイツの合唱団が、ソリストにはアメリカ、ソ連、東西ドイツから4人の歌手が参加し、


ベルリンの壁と言う鉄のカーテンで分断され、自由を奪われていた同胞に送る、自由賛歌。


自由よ、自由とともに、自由の歌を 歌おうではないか!



Beethoven: Symphony No.9 "Ode to Freedom" Blu-ray



で、「歓喜に寄す」は「欧州の歌」として認定されている。ナポレオンが言うタタタタン!の「4つの音」はEUの理念である「人・物・資本・サービスの移動の自由」のことかなあ?


ウエクミがfffの構想を練っていたであろう2018~2019年ごろは、コロナにより芸術が不要不急~というよりは、イギリスのEU離脱、トランプ前大統領の諸政策と、EUの理念を覆すような時代の空気があったわけで。


京大の仏文科卒のウエクミは、ひょっとしたらフランス革命の理念的なものにシンパシーを感じていて、


それが否定される風潮にノン!という主張がfffに透け過ぎたかなあ、と思ったり。


以上、まだ舞台を見ていない者の妄想でした(ハズレていたら笑ってくれ)。


4月11日の答え合わせが楽しみです。