ヴェネチアの紋章は壮麗帝外伝?伝説のモレッカ再現!
16世紀前半のイタリア、ヴェネチア元首の息子であるアルヴィーゼは、庶子であるがゆえに愛する人リヴィアと結ばれず、異国へと旅立つ。
十年後、持ち前の才覚で貿易商として成功を収めた彼は、忘れることがなかったリヴィアと再会し、モレッカのダンスでさらに想いを滾らせる。
そしてついに、愛する人を取り戻すために、そして自分自身の誇りのために、アルヴィーゼはヴェネチアがくれなかった“紋章”への強い執着に突き動かされ一国の王となるために立ち上がる─
ヴェネチアとコンスタンチノープルを舞台にして壮大に繰り広げられる愛と野望のロマン大作の再演にご期待ください!
アルヴィーゼ・グリッティ 彩風 咲奈
リヴィア 朝月 希和
マルコ・ダンドロ 綾 凰華
妾腹では出世できないヴェネツィアから、奴隷が大宰相になったオスマン帝国へ
時は16世紀。ヴェネツィア共和国の若き外交官マルコは、欧州制覇を目論むスペインとイスラムの盟主トルコに挟撃される国難打開の密命を託される。
しかし、トルコでマルコを出迎えた旧友で敵国の宮廷深くに通じるアルヴィーゼの瞳にひとたび暗い光が灯ると、世界の命運は激しく変転していくのだった……。
小説版の主役は、若き外交官マルコ。ヴェネチアの若き元老院議員。
アルヴィーゼ・グリッティは、実在する人物。ヴェネツィア元首の息子にも関わらず、母親が正式な結婚をしていない妾であったため、要職につけず、紋章ももらえなかった。キリスト教の教えは、婚外子を厳しく差別していたのだ。
ヴェネチアがくれなかった“紋章”とは、”有翼のライオン”
翼と、「PAX TIBI MARCE EVANGELISTA MEUS」=「汝に平和(安らぎ)を、マルコよ、我が使徒」と書かれた書物を持った獅子。
アルヴィーゼ・グリッティが向かったのは、異教徒や奴隷が才覚で寵姫や大宰相になれるオスマン帝国。
アルヴィーゼはスレイマン皇帝やイブラヒム大宰相(彼もヴェネツィア支配下のギリシャのキリスト教徒出身)と親交を深め、ついにオスマン帝国の外交顧問に就任。が、一方でヴェネツィア側にも情報を流していた。
翼を得たライオンは、なんと、オスマン帝国のハンガリー侵攻に協力するのであった。
・・・自分を認めなかったキリスト教世界への復讐かい!
大浦みずき伝説の「モレッカ・ダンス」
しかし、なぜ今「ヴェネツィアの紋章」を再演?
ひょっとしたら、一番の売りは、初演で大浦みずきさんとひびき美都さんが踊った伝説の「モレッカ・ダンス」の再現かな?
そのモレッカダンスの場面を、塩野七生さんの原作から引用させていただきます。
モレッカとは、アラブ風のリズムをとりいれた、もともとは戦闘の踊りなのである。二人一組になった踊り手は、互いに両手に鈴の束をもち、足ぶみも強く激しい踊りをくり広げる。
モレッカ、というかけ声がかかると、舞踏会では若い男女の目の色が変わるといわれたほど、イタリアでは好まれた踊りであった。
マルコが眼を丸くしたのは、アルヴィーゼの踊りの巧みさではない。この旧友がモレッカの名手であることは、大学時代にさんざん眼にしていた。驚いたのは、プリウリの奥方の変容であったのだ。
冷たい美貌の底から、炎が燃えあがるようだった。黒い眼はきらきらと輝き、鈴をもつ手が、生きもののように交叉する。深い緑色の衣装全体が、広間中の灯あかりを一身に浴びたように、舞いの動きにつれて色を変えた。
マルコは、これまでにもこの婦人の踊るのを見たが、今夜のように激しく燃える舞い方を眼にするのははじめてだった。互いに見つめ合いながら踊る二人の眼は、解けそうもないほどにかたく結ばれ、この二人の他には、誰も存在しないかのようであった。