宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ

宝塚を「好き」という気持ちを因数分解してみたい、という思いで綴っています

V系明日海トート、夢乙女花乃シシィ、意外と常識人な望海ルキーニ


客席の「サウンド オブ サイレンス」


地方ではいまのところ映画館が営業しておりますので、先日のエリザガラコン14年花組バージョンを、映画館のライビュにて拝見いたしました。


ライビュと配信の違いは、大画面、音響システム、なにより「客席」の存在だと思うのですが、


皆さま、ライビュ開演前に宝塚休演のお知らせを知っていたのでしょうね。


普段、ライビュの客席も、開演(上映)前や幕間(休憩)時間は、お連れの方と少しお話される方もいるのですが、


この日は本当に「しーん」と静まり返っておりました。


ハンドマイクの意味がわかった


舞台で見ると気にならないのかもしれませんが、エリザガラコン、フルコスチュームとはいえ、手にハンドマイクを持っているのが映像ではデカデカと映るので、少々興ざめだなあ、(普段のライビュより動きが少ない分、表情のアップが多いのでなおさら。)


映画館の音響で聞くと、ハンドマイクの意味を実感!普段の宝塚のライビュのヘッドマイクよりも、はるかに音がいい!


音の渦に巻き込まれる恍惚と愉悦。


演者の息遣いまで拾うので、だんだんと演者の心拍数と客席の心拍数が同調するような感覚を覚えるほど、臨場感のある体験ができました。



※以下、キャスト別一口メモ


トート閣下(明日海りお):90年代ビジュアルバンド系の帝王





TVアニメ「ローゼンメイデン」PV第1弾



映画『アリス・イン・ワンダーランド』予告編


あたしがアリスだったころ世紀末の90年代後半のころ、ヴィジュアル系バンドという、男性歌手が中性的なゴスロリファッションに身を包み、


「聖少女領域」
「薔薇獄乙女」
「私の薔薇を喰みなさい」


みたいな乙女な歌詞を歌うのが流行った時期がありまして、一部の10代の少女というか乙女に熱狂的に支持されていたんですよ。


洋楽とか韓流でも見ない日本独自の、歌舞伎の女形とか宝塚の土壌があるからこそ咲いたかもしれない、妖艶な花だったと思うのですが、


明日海さんのトート、まさにあの頃のv系バンドのライブの熱狂(観客が文字通り髪を振り乱していた)が現代に黄泉がえった甦った感。


もう、天上天下トート独尊!


カッコいいいいいいいいいいい!



エリザベート(花乃まりあ):憧れのV系バンドのメンバーに恋する乙女


花乃まりあは乙女である。


乙女と言ってもいろいろだけど、花乃まりあのシシィは、トート閣下との夢小説を書いていそうな乙女である。



夢女子とは、主に二次元(架空)の男性キャラクターとアバター(自分の分身)またはオリジナルキャラクターの恋愛作品を好み、


そんな話(夢小説)を自分で書いちゃったりする乙女のこと。



ガラコンがあった4月24日は、フランツとシシィの結婚記念日だったらしいのだけれど、結婚当時フランツ23歳、シシィ16歳。


当時の女性としたら早すぎる結婚というほどでもないけれど、16歳といったら、ビジュアル系バンドのメンバーにガチ恋する「はしか」にかかっていてもおかしくないお年頃。


夢見る少女時代は突然断絶し、夫は忙しく、新妻一人待ちぼうけ。あっという間に母となり、大人になり、


でもシシィの心の中に、夢で逢ったV系スターならぬロックスター・トート閣下に憧れる夢女子はずっと生きていて、


花乃さんのラストの昇天シーンの表情が「憧れのスターと結ばれたファン」みたいに見えて


「よかったねえ」


それがハプスブルク家の黄昏を描く物語としてどうなのかはよくわからないけれど、これは本公演でなく「コンサート」なので、


これでいいのだと思う。ほんと、花乃さんよかったねえ。


ルイジ・ルキーニ(望海風斗)意外と常識人かもしれない

14年花組版では、いかにもイっちゃった目をしていた望海さんが、今回は宝塚の男役と言うものから解放されて間もない時期という特殊事情もあるのかな?


意外と憑き物が落ちたようなというか、けっこう客席の観客目線に寄り添って、愛と死の輪舞という世にも奇妙な物語に冷静にツッコミを入れるナレーターで、


そこから最後の証言でトート閣下にナイフを渡され、目の色が変わる瞬間の怖さが生きていました。


フランツ・ヨーゼフ(北翔)ロイヤルお手振り

女優としてご活躍され、ご結婚され、母親となられ、


しかし男役歌唱は健在!むしろ声の深みが増した!


自身の体験ですが、女性って、妊娠・出産の前後で、短期間で声が変わる(低い声を出しやすくなる)ことがあるのですが、それもあるのかなあ。


現役ジェンヌの頃も大変達者な方で大好きでしたが、


ジェンヌ時代にはできない人生経験が、芸に深みを加えるとはこういうことなのかなあ、と思いました。


ラストのカーテンコール、他のメンバーは「ばいばーい」なお手振りでしたが、北翔さんの「リアル皇室アルバム」なゆったりと風格あるお手振りぶり!






そろそろ「ロミジュリガラコン」も、やれるのかもしれないけれど、お芝居として考えるとストーリーのリアリティに「主人公の若さゆえの悲劇」がどうしても必要な演目である。


人外の存在であり、正解の無い「トート」と、少女時代から老年期までの変化を演じるシシィ&フランツ。


エリザガラコンって、懐かしの同級生再開コンサートを超えて、上演のたびに、OG達の人生経験で物語の「読み直し」ができる、素晴らしい企画ですね。