A日程は「陽気な悲劇」「死」は忘れたころにやってくる
「ロミオとジュリエット」A日程の配信を視聴いたしました。
大劇場でのA日程配信視聴時の感想はこちら。
管理人:いやーっ、この連休、ほぼ半径5キロ圏内の移動しかせずおとなしくステイホームだったのに、海外旅行したみたいな充実した疲労感だわ。
感想文を書かなきゃ!て思いながら、毎日ノート片手にメモしながら鑑賞してたもんね。
紅子:私もステイホームだったから配信三昧だったんだけど、「エリザベート」に「ロミオとジュリエット」に、ドロドロ愛憎劇「夢千鳥」、芸術と戦争を問う「ホテルスヴィッツラハウス」
正直、連続すると重いわ・・・
管理人:「ロミオとジュリエット」A日程ってさ、正直、B日程とはだいぶイメージが違わなかった?
B日程は「愛ちゃんの死」が出てきたとたんに「目を合わせるな!連れていかれる!あ、でも「死」に視線が引き寄せられる!」で、舞台全体も「死の街ヴェローナの悲劇」感が濃厚だったよね。
紅子:A日程、「死」の出番がB日程と同じと思えないというか。
全体に皆機嫌がいいというか、悲劇だけどちょっと喜劇っぽいというか、モンタギューとキャピュレットが対立しているんだけど、憎み合いながらもB日程より生命力に溢れている感。
あえていうと「ロミオとジュリエット」ガラコンサート フルコスチュームバージョン?
正直、演じる方も1回目の無観客上演よりは慣れたとか、「12日から再開!やったー!」という思いもこちらに伝わったのかな?
管理人:まあ、演劇は1日たりとも全く同じものではないし、出演者によって、コンディションによって、お話の見え方が変わるのも醍醐味だよね。
「ロミオとジュリエット」は、実は悲劇であり喜劇でもある、という評価は昔からあるんだよね。
悲劇とは「立派でいたい人が、運命のいたずらでエライ目にあう話」
喜劇とは「アホがアホなことをする話」
紅子:「アホ」って失礼な・・・ん、待てよ。
もしも某新喜劇で「ロミオとジュリエット」をやったら
「パリス伯爵と結婚なんて嫌!」←あんな金持ちイケメン、何の文句があるねん!
「仮面舞踏会で一目ぼれ」←顔見えてないのに、なんで一目ぼれするねん!
「出会ってすぐ結婚申し込み」←展開早!
「2人の結婚は両家の和解に・・・」←なるか?
「ジュリエットと結婚しやがったな!」←いとこと結婚はさすがにあかんやろ!
「お前が入るから、腕の下から刺された!」←ロミオ、足手まとい。
「この薬を飲んで仮死状態に」←いらんことするな。
「どうやって伝えよう♪」←もっと後で伝えろ。
というか、伝令役のジョン、タラタラしてんじゃねーよ。
「両家の対立が、2人の命を奪った」←お前が言うか。
紅子:うん、新喜劇やね。
「笑ってすまされなくなった喜劇」
管理人:「ロミオとジュリエット」は、有名な作品だけど、シェイクスピアの「四大悲劇(『ハムレット』、『オセロー』、『リア王』、『マクベス』)」には入っていないのね。
原作では顕著なんだけど、前半は乳母(私は今も♪男が好き♪)やマーキューシオ(マブの女王)が、さすがにここで引用するのは憚られるような下ネタを連発する、生命力に溢れた喜劇なのね。
今回の配信のA日程は、あえて言うなら喜劇が「笑ってすまされなくなった喜劇」になる話かな。
実際、前半はロミオとジュリエットが出会って恋に落ちるのが話の大きな流れなのだから、悲劇的な要素はほとんどない。むしろわくわくする楽しい展開だ。
事態が変わるのは、マキューシオが殺され、ロミオがティボルトを殺してしまう時点からだ。血が流れ、急転直下、ロミオは追放。笑いは凍りつき、悲劇へと変わる。
喜びを期待しているときの悲しみほど衝撃的なものはない。だからこそ、『ロミオとジュリエット』はドラマティックなのだ。