宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ

宝塚を「好き」という気持ちを因数分解してみたい、という思いで綴っています

「ほんものの魔法使」とは「にせものの手品師」である


※ストーリーに関係するネタバレはありません。


『ほんものの魔法使』

Based on the novel

THE MAN WHO WAS MAGIC by Paul Gallico

Copyright (C)1966 by Paul Gallico

Licensed by Mathemata Anstalt c/o Ensemble Entertainment through Tuttle-Mori Agency,Inc., Tokyo

原作/ポール・ギャリコ 脚本・演出/木村 信司

アメリカの作家ポール・ギャリコが1966年に発表したファンタジー傑作小説を、宝塚歌劇でミュージカル化。


魔術の都マジェイアに、アダムという青年が言葉を喋る犬モプシーと共にやって来る。


街で出会った娘ジェインをアシスタントに迎え手品師試験の予選会に出場したアダムは、パフォーマンスを披露するが、そのトリックは審査員の誰にも分からないものだった。


もしかして彼は、ほんものの魔法使いなのか…。


他の誰とも異なるアダムの存在が、マジェイア全体を揺るがす大騒動を巻き起こしていく。「ただの」魔法を通して最後にアダムの伝えたかったこととは─


誰もが憧れを持つ“魔法”を題材とした、ユーモラスで心温まるファンタジーをお届けいたします。



皆様、お元気でしょうか。


「ほんものの魔法使」を探して


そういえば管理人は以前「ほんものの魔法使」の原作本を図書館で借りようとして順番待ちでわあわあ言っていたのですが、その後東京創元社から復刊されることが判明。


まもなく管理人のところに図書館から連絡があって、原作を借りることができました。


そうなると、原作を最後まで読まずに、途中までにしておいたほうが、配信を見る時までお楽しみをとっておける💡


と思い、全体の3分の2くらいまで読んで返却してしまいました(原作の結末は、最近入手した文庫版で配信視聴後に読む予定)


ということで、現時点では管理人も結末を知らないので、ラストの展開についてネタバレはありません(笑)



「にせものの魔法使」はハイテク大好き


このお話の(少なくとも前半までの)テーマは、種も仕掛けもある魔法都市で育った少女が“ほんものの魔法”と出会うファンタジイ。


作者のポール・ギャリコ氏はアメリカの作家。1897年ニューヨーク生まれ。1976年没。


この原作が書かれたのは1966年、となると、作者が70歳近くになってからの、晩年の作品といえる。


この作品の面白いところは、「魔術の都」マジェイアの住人は、魔術を全く信じていないこと(笑)


そりゃあ、手品師ですからね。



そして手品師は、めっちゃハイテク好き。


食卓には台所からレールが引いてあって、小さな汽車が注文したメニューを引いてきたり、


「明日〇時に起こして」と呼びかけるだけでセットされる目覚まし時計とか、


1966年に、回転すし屋の特別レーンとか、「アレクサ、明日7時に起こして」を見事に予言!


参考
1964年 東京オリンピック
1969年 アポロ11号月面着陸成功
1970年 大阪万博


考えたら、私たちは、1966年の人から見たら魔法(のようなハイテク)が実現された世界に住んでいるわけだ。


人類はいまだに「ほんものの魔法」を使えないのに、なんで「魔法みたいなこと」を実現できたのだろう?


ぼくらの生まれてくる ずっとずっと前にはもう 


アポロ11号は 月に行ったっていうのに


ぼくらはこの街がまだ ジャングルだった頃から


変わらない 愛のカタチ 探してる


ポルノグラフィティ『アポロ』("OPEN MUSIC CABINET"LIVE IN SAITAMA SUPER ARENA 2007") / PORNOGRAFFITTI『Apollo(Live)』

「わからないかい、ジェイン。われわれのまわりには魔法がみちみちてるってことが」


そしてこの物語は、子供に「ほんもの」とは?「にせもの」とは何か、という哲学への導きともなっている。


「タネも仕掛けもありません」が口上の手品師は、「ほんものの魔法使」が現れたら、「にせものの魔法使」になってしまう。



でもさ、


「ほんものの魔法使」って、手品師から見たら「にせものの手品師」でもあるんだよな。



身近な例で考えたら、管理人の配偶者は「宝塚のファンって、「にせものの男」を見て楽しいの?」と本気で聞いてくるのだけど(怒)


「男役」とは「ニセモノの男」なのか?「ほんものの男の代用品」なのか?


私の周りには確かに「ほんものの男」はいるけれどさ。


「ほんものの男」に無いものが「ニセモノの男」にあるとすれば、本物って?ニセモノって?





優れた童話は大人の読み物というけれど、「ほんものの魔法使」はもう「小学〇十年生」になった大人にも、根源的なことを考えさせる、優れた児童文学であると思います。




ほんものの魔法使 (創元推理文庫) [ ポール・ギャリコ ]

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