宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ

宝塚を「好き」という気持ちを因数分解してみたい、という思いで綴っています

マタ・ハリ感想 愛の不時着?「私と国家と、どっちが大事?」

「私と国家と、どっちが大事?」






ミュージカル『マタ・ハリ』2021年公演_舞台映像 6月~7月 東京・愛知・大阪にて上演!☆ライブ配信有


あらすじ


第一次大戦中のフランス。ドイツ軍に押され劣勢なフランス軍の情報将校ラドゥー(加藤和樹)は、ヨーロッパ中で成功を収めたダンサーであり、ドイツの要人とも関係が深いマタ・ハリ(柚希)を、ドイツの機密を探るためのスパイに仕立てようとする。


そのころマタ・ハリは、たちの悪いファンに絡まれているところを助けてくれた青年パイロットアルマン(三浦涼介)と恋に落ち、スパイ活動にも熱心に協力するようになる。


実はアルマンはラドゥーの部下で、マタ・ハリの様子を探るために接近したのだが、次第にマタ・ハリに本心から惹かれていくのをラドゥーに見透かされ、死の最前線に送られる。


アルマンは偵察飛行でドイツ軍に撃墜されるも、奇跡的に一命をとりとめ、ベルリンの病院に入院する。


そのことを聞きつけたマタ・ハリは、アルマンに会う為、ラドゥーの許可なく偽造パスポートで出国し、ベルリンに向かう。しかしその行動はドイツ・フランス双方に筒抜けであった。


2重スパイの容疑をかけられたマタ・ハリはラドゥーに逮捕され、フランスの敗戦の責任をなすりつけられて銃殺刑に処されるのであった。


ミュージカル『マタ・ハリ』マタ・ハリ役(Wキャスト)柚希礼音コメント映像


柚希さんは抜群のダンス力、スタイル、そして露出度の高い衣装で官能的な振付で踊っても、蠱惑的になりすぎず、シヴァの神に舞踊を捧げる「巫女」のような清浄感のあるダンスで、元男役であることを生かせる当たり役だと思います(歌は高音がもっと伸びればなあ)


そして恋人役のアルマン(三浦涼介)



ミュージカル『マタ・ハリ』アルマン役(Wキャスト)三浦涼介コメント映像


舞台で見ると、背の高い朝美絢(笑)マタ・ハリへの愛と、軍人としての責務に引き裂かれながらも、生きて帰れない可能性のある死の前線に出撃していく1幕ラスト、2幕のベルリンの病院で自身がラドゥーの部下であることを打ち明ける苦悩、お芝居に引き込まれました(歌は音程というより声量がなあ・・・)



戦時下でも「男への愛、ダンスへの愛に忠実に生きる女」マタ・ハリの「個」


VS


戦時下に個より「国家への忠誠」に生きざるをえない男たち


の対立という軸がしっかりしていて、見ごたえのある舞台でした。


韓国産ミュージカルの、「フランスが舞台の芝居」に透けて見えるお国柄

柚希&三浦のシーンを見ていると、まるで宝塚を見ているような美男美女なのですが、アンサンブルの方々はいわゆる東洋人顔で、なんだか韓流の軍人ものドラマ(「愛の不時着」とか)を見ているみたいだわあ、と思ったら、実は韓国で制作・初演されたミュージカルだそうで。(音楽はフランク・ワイルドホーン)


言われてみると劇中で男性の軍人が、最前線に行くのはいやだ!と心情を吐露するシーンが何度かあって、女性である管理人が見ても心がヒリヒリするリアリティがありました。


現代日本では自衛隊には希望者しか入隊しませんが、韓国では成人男性は望む望まないにかかわらず徴兵義務があるわけで、日本と韓国とは「戦争」や「国家への忠誠」への考え方や、スパイの悲劇、というものへの「わがごと」としての心理的距離感が違うのだろうなあ。


奇しくもフランスとドイツを舞台にした芝居に、韓国と日本のお国柄の違いが透けて見えて興味深かったです。


6/27(日) 12:00公演も配信がありますので、ご興味のある方はぜひ。


マタ・ハリ:愛希れいか/ラドゥー:田代万里生/アルマン:東啓介