宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ

宝塚を「好き」という気持ちを因数分解してみたい、という思いで綴っています

燃える氷のような風間の熱量!『LOVE AND ALL THAT JAZZ』感想





『LOVE AND ALL THAT JAZZ』

…ベルリンの冬、モントリオールの春…

作・演出/谷 正純

ナチス政権下で退廃音楽として禁止されたジャズを愛し、ユダヤ人の娘を護る為に命を懸けて戦ったドイツ人ジャズピアニストを主人公に、時代を覆う閉塞感に敢然と立ち向かう若者の姿を、ジャズの名曲に乗せて描くミュージカル作品。


第二次世界大戦下のベルリン。かつてジャズの生演奏で欧州中にその名を轟かせたキャバレー「レベル」では、ジャズピアニストでもあるルーカスが、父から受け継いだ店を一人護り続けていた。


ある時、店へ逃げ込んできたユダヤ人の娘レナーテを気まぐれに匿ったことで、ルーカスの運命が動き始める。


ジャズの演奏すら禁止される祖国の歪んだ現状に反発し、突如レナーテと共に自由に生きられる国へ旅立つことを決意。


偽造屋から身分証を入手したルーカスは、かつて同じ音楽院で学んだ友人でもあるナチス親衛隊ゾマー少尉の猛追を受けながらも、仲間のミュージシャンが集うパリ、そして彼女の祖父が住むカナダを目指して旅を続ける。そんな彼らを待ち受けるものとは……。


文部省選定教育映画の趣があると思ったら


配信で視聴した第一感想は、


「昔学校の体育館で見せられた、文部省選定教育映画みたいな話やな」


だったのですが、


この『LOVE AND ALL THAT JAZZ』は、実際に文化庁の「アートキャラバン事業」採択公演だそうです。




事業の目的

大規模で質の高い我が国の文化芸術水準を向上させるような公演等を支援し,文化芸術の質の向上と文化芸術の重要性や魅力を発信することにより,新型コロナウイルスの感染拡大による萎縮効果を乗り越え,文化芸術に対する需要喚起や業界全体の活性化を図る。

つまり公費助成が入っている公演なんですね。どうりで文部省選定教育映画っぽいわけだ。


若手バウの初配信が決まったのも、この公演を配信して「文化芸術の重要性や魅力を発信する」意図があるのかしら。



お話のキモは正に「文化芸術の重要性や魅力を発信すること」


あらすじ


ということで、このお話のキモは正に「文化芸術の重要性や魅力を発信すること」でした。


お話の構造はいわゆる「ロードムービー」で、



主人公が旅を続けるなかで変貌し、自分を発見するという筋立ての映画。


主役はナチス政権下のベルリンで、ジャズの演奏を禁止されたピアニストルーカス。店に逃げ込んできたユダヤ人少女を気まぐれに匿ったのをきっかけに、



ジャズの演奏すら禁止される祖国の歪んだ現状に反発し、突如レナーテと共に、自由に生きられる国へ旅立つことを決意する。


主人公はユダヤ人ではないため、ナチスに抑圧されていても、命を狙われているわけではない。


なのに、気まぐれに、唐突に、亡命を決意する。


ある意味ナチスへの反発と義侠心、異国への憧れ、姫を救う騎士のような冒険心すら感じられる旅立ち。


偽造した身分証と、調達したナチスの親衛隊の制服に身を包み、ナチスの高官に成り済ますことで、あっさりベルリンを抜けてパリへ到着。


とんとん拍子と思いきや、かつて同じ音楽院で学んだ友人でもあるナチス親衛隊ゾマー少尉の猛追を受け、レナーテとはぐれ、自身はカナダの海岸に流れ着く。


ドイツ出国には大いに役に立った、偽造の身分証とナチスの制服は、


カナダでは一転、「お前はドイツ人、ナチスの親衛隊だろう!敵だ!」と言われる存在になってしまう。


そこでルーカスが見つけたものは・・・


まじめ感想


主人公がカナダの海岸に流れ着き、地元民に介抱されて目覚め、ラジオから流れるジャズに「自由の国へ来た!」と興奮していたが、


命の恩人の一家の娘の恋人が、ドイツ戦線で戦死したという手紙が届き、「あなたの国籍が憎い!」と言われ、銃を向けられるシーン。



結局通報されて、ドイツ人収容所に入れられ、カナダ人の看守が「ドイツが戦闘で大敗した」と喜んでいる時の、


憎めども、されど祖国、ドイツへの想いに引き裂かれる時の、風間くんの表情。



深い沼のように静かで、感情を抑制した演技。風間くんの演技は、新人公演学年からいぶし銀(mat silver)とも評されていましたが、


個人的には風間君も「下級生とは思えない」という枕詞が外れる学年に入り、トップを目指すにはいぶしよりキラキラ✨がいるよなあ、と思っていたんですよ。



ラスト、収容所からモントリオールまで、レナーテに会うために冬の針葉樹林500キロ縦断の旅に出るシーン。


最初は「おいおい、プロの冒険家でなくては死ぬぞ!」と思ってハラハラしていたのですけれど、


白銀の舞台に1人、10分近い大ナンバーを歌い上げる風間君。


それは抑圧されていた熱情が燃えて、行く手を阻む雪を溶かす、燃える氷のようでした。


この熱があれば、モントリオールまで行けるよ!


トップいけるよ!



💡ピカーン


風間柚乃キャッチコピー


燃える氷、メタンハイドレード風間



「燃える氷」メタンハイドレート Burning Synthetic Methane Hydrate


管理人🔨ぱっかーん紅子



さらにツッコミ感想
亡命の旅の途中でルーカスが窮地に陥ると、とにかくピアノを弾いて、敵対する者と「やっぱりジャズっていいな。」と音楽で心が通じ合う展開が多くて、


文化芸術は大事!


ということがよくわかりましたが、ちょっと同じ展開が多かったような


あと、第1幕は「ジャズが抑圧された世界」のはずなのに、しょっちゅうジャズの名曲の歌唱&ダンスシーンが入るので、


第2幕でやっとカナダに付いた時の「やっとジャズに溢れた世界に着いた!」という感動が薄れたような。