宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ

宝塚を「好き」という気持ちを因数分解してみたい、という思いで綴っています

配信を待つ間にできること 原作「理想の夫」とは



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ヌードルス男爵夫人:あら、奥様。宝塚・星組公演「ザ・ジェントル・ライアー」の原作、『理想の夫』お読みになりまして?


スカーレット男爵夫人:舞台を見てから、振り返りのために読む前提で買いましたのに・・・


ジェンヌでも無いのに、舞台を見る前に「戯曲」だけ読むのは、宝塚の舞台を見る前に「ル・サンク」を読むようなものですわ!


ヌードルス男爵夫人:わたくし、読みましてよ。


スカーレット男爵夫人:いかがでしたの?


68年前のリアル上流階級の「山の手言葉」の世界に酔う



宝塚・星組公演「ザ・ジェントル・ライアー」の原作、22年ぶりの復刊!

『理想の夫』は、イギリスの文豪オスカー・ワイルドの傑作戯曲の一つ。


日本では、1954年に角川文庫より厨川圭子氏の翻訳で発表。2000年に復刊したが、その後絶版となっていた。2022年2月、宝塚星組と新国立劇場での公演が決定。


初版からじつに68年、再び厨川圭子氏の監修を得て、このたびの新装復刊となった。なお、オスカー・ワイルドの四大喜劇のなかで、「理想の夫」は、日本ではじめての舞台化となる。



【あらすじ】 1895年ロンドン。将来有望な政治家ロバートと、その妻ガートルードは、だれもがうらやむ理想の夫婦。そして、ロバートの親友アーサーは、自由気ままな独身貴族で、ガードルードとも昔馴染みの間柄だった。


ある日、そんな3人の前に、妖しい魅力のチェヴリー夫人が現れ、紳士淑女たちの「秘密」が露わになっていく――! オスカー・ワイルドのテンポよい展開とウィットに富んだ会話が光る、人間ドラマの傑作。



オスカー・ワイルドのテンポよい展開とウィットに富んだ会話


「あの人はどういう人なの?」


「そう・・・昼間の天才、夜の美女。私、天才の姿を眺めて、美人の言葉を聞くのが好きですわ。」


昼間の美女、夜の天才ではなく?!それはどうも病的ですねえ。」



・・・昔は夜の照明が乏し(以下自粛)



理想の夫=欠点の無い夫?

「うちの夫は、まるっきり欠点というものがありませんの。もう手のつけようもありませんわ。


本当に、時にはあまり抜けたところが無さ過ぎて、いらいらするくらいでしてよ。


あの人ってものがわかってみたところで、ほんのちいとだって胸のときめくものなんて、ありはしませんわ。」



「うちの主人も同様、困りものでしてよ。あの人ったらとっても家庭的で、まるで独身者のようですわ。」


「ねえ、私たちはちっとも欠点の無い夫と結婚したものだから、その当然の報いとして、罰を受けているんだわ。」

私の贔屓に欠点があるのは幸せなのか?


愛の無い結婚は悲劇だ。


もっと悲劇なのは、愛情が片方のみにある場合だ。

夫婦間の愛情というものは、お互いがすっかり鼻についてから、やっと湧き出してくるものなのです。

・・・ワイルドさん、綾小路きみまろ?



男の一生は女の一生よりも価値がありますわ。


女の一生は感情という曲線に沿って廻転しますが、男性の一生は知性と言う直線の上を進行するものです。


紅子:女性に失礼だなオイ!


管理人:あら、はしたなくてよ。19世紀の男が書いたお話ということをお忘れなく。


原作が積ん読になっている方へ攻略法を指南

この版は1954年に出版された際の翻訳を踏襲していて、19世紀ロンドンの社交界の英国的、紳士と淑女のゲームの会話を、


満州出身、津田英学塾、慶応義塾大学英文科卒という、戦前の上流階級の空気を身をもって体感している訳者が、華麗にして流麗な戦前の「山の手言葉」で訳しております。


まあ、この「~ですわよ」「いやですわ、奥様」調が鼻に付くとか、全体に漂う19世紀的女性蔑視が耐えられない、という方もいらっしゃるかもしれませんね。


管理人が実践した方法は、


攻略法1 宝塚版のあらすじを読む。


基本ですね。


攻略法2 宝塚版キャスト表を元に、自分で人物相関図を書いてみる。


戯曲では「地の文」がほとんどなく、そのセリフを誰がどんなシチュエーション、表情で喋っているのかわかりません。人物相関図を手元に置きながら、ジェンヌの声を脳内再生しつつ原作を読んでみましょう。


攻略法3 誰がしゃべっているかあまり気にしない。


このお芝居は4場しかなく、各場の最初のほうはいわゆる「サロンの広間」的なところで、複数の登場人物が、状況説明を兼ねた「噂話」をしているので、誰がセリフを言っているのかあんまり気にせずに、「情報」を拾う為に読んで、


各場の後半は、登場人物が1対1で腹の探り合いを始めますので、「心情」を読み取りましょう。


攻略法4 テーマの「答え」を探しながら読む。


学校の現代文のテストで、いきなり本文を読む前に、まず問題を見て、「何が問われているのか」を把握してから、その答えを探しながら本文を読む、という方法があります。


公式で

オスカー・ワイルドの戯曲「An ideal husband(理想の夫)」をもとに、独身貴族の青年が、“理想の夫”とされる親友のスキャンダルを巡って、やがては真実の愛に辿り着く姿をユーモラスに描く。

とあるので、この戯曲の初読は、登場人物にとっての


“理想の夫とは?”


を語っている部分に注意しながら読んでいきましょう。



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