宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ

宝塚を「好き」という気持ちを因数分解してみたい、という思いで綴っています

贔屓が退団後に再び男役を演じるってアリ?「TARKEI THE STORY」感想 水の江瀧子の半生


戦前の男装の麗人のスタア、水の江瀧子の半生をえがく「TARKEI THE STORY」

戦前のSKD松竹歌劇団の男装の麗人のスタア、水の江瀧子の半生が、宝塚OG凰稀かなめ主演で舞台化された「TARKEI THE STORY」の配信を視聴しました。


ブログ村の「宝塚」カテで、東宝ミュージカルやOSKの話題に触れているブロガーさんはたくさんいらっしゃいますが、


この数年、今はこの世に存在しないSKD(松竹歌劇団)のことをネタにしたのは、管理人くらいではなかろうか、と思います。



戦前「歌の宝塚、ダンスのSKD」と並び称され、女学生たちがクラスで「ヅカ派」「SKD派」に分かれて贔屓をたたえ合ったというSKD。


戦後の日本に明るく響いた「赤いリンゴにくちびるよせて♪」の並木路子,大女優淡路恵子、草笛光子,倍賞千恵子・美津子ら数々スターを世に送り出しました。


その中でも、会の人数2万人、「男装の麗人」として絶大な人気を誇ったのが「タアキイ」こと水の江瀧子さんでした。


配信のアーカイブ視聴あり(2月19日まで)



植草克秀演出&凰稀かなめ主演!戦前期の歌劇スタア・タアキイが令和のステージに復活 『ドラマティックレビュー TARKIE THE STORY』公開初日直前ゲネプロ


大正時代に宝塚で生まれた少女歌劇は、あっという間にエンタテインメントとして大人気となり、興行会社・松竹も少女歌劇を大阪、東京に創設した。


第一期生、背が高い割に引っ込み思案の新人、水の江瀧子は、一期下のオリエ津阪の才能に嫉妬するでもなく、芸への意欲もわかない日々であったが、大阪の松竹少女歌劇団、笠置シズ子に奮起を促され、とある公演で日本初の断髪姿となってからは「男装の麗人」の呼び名とともにあっという間に日本一の人気スタアとなり「レビュー」の評判はいやが上にも高まった。


 植草克秀の演出のもと、令和時代最高のスタッフ陣による本公演は、実在の人物、歴史的事実が織り込まれるのみならず、当時のステージで使用された楽曲が演奏される。主人公”タアキイ”こと水の江瀧子を演じる凰稀かなめを始めとし、オリエ津阪役の彩凪翔、笠置シズ子役のNANA(MAX)らにも注目。


 本公演は2月10日から16日まで、品川ステラボールにて開催される。


感想 Wikiを読んでもわからないことを、舞台の上でやってくれ


”タアキイ”こと水の江瀧子を演じる凰稀かなめ、カッコイイ!


あたりまえだけどね。



正直な感想といたしましては、前半の「男役断髪第一号!」「SKD VS 宝塚バトル!」「大企業松竹相手にストライキ!」といったエピソードが語られるあたりは、


BSプレミアム歴史ドキュメンタリー「水の江瀧子編」 の合間にレトロなレビューシーン 


の繰り返し。


「Wikiを読んだらわかること」しかやってない・・・


ターキーが、長い髪をバッサリ切ったことはわかるんだけど、「髪は女の命」と言われた時代にどんな気持ちで切ったのか?


自分は既に大人気スターで、待遇に不満があったわけではないのに、なんで団員のためにマスコミや憲兵に追われてまで松竹を相手にストライキを続けたのか?


本人は「頼まれたからやっただけ。アハハ。」と言っていますがねえ・・・


Wikiを読んでもわからないことを、舞台の上でしかできないことで解き明かすのが「芝居」の「演出」じゃないのかなあ 植草克秀さーん。





後半、少女歌劇に戦争の影が差し、大陸に慰問に行くことになったあたりで、


「戦時下に芸能は不要」と言われ、自分が芸能人でいることの意味を考えるあたりは、コロナ禍で芸能の存在意義を問われている現代とリンクして興味深かったです。


でもね、たとえば野戦病院に慰問に行くシーン、「エリザベート」では、皇后エリザベートと、「私がエリザベーート♪!」と信じるウィンディッシュ嬢との息詰まる対峙!が印象的なシーンですが、


「TARKEI THE STORY」では、


慰問に行きました、
帰りました、
迎えに来た恋人に「野戦病院で、こんなことがあって、つらかったの・・・」


そこは大事なシーンだから、説明セリフで済ませずに、舞台の上で芝居にしませんか、植草克秀さーん。



個人的に「ああ、ターキーはこんな人だったんだなあ」エピソードは


1945年、東京。


憲兵さん:日本は負けた・・・おしまいだ。


ターキー:どうします?マッカーサーを殺しに行きますか?


憲兵さん:貴様!ふん!


ターキー:ハッハッハッ!男は情けない。



と、”タアキイ”こと水の江瀧子を演じる凰稀かなめさんの、退団後人生経験を積み、現役のころより方の力が抜けて、悠々として余裕しゃくしゃくな男装の麗人っぷりを堪能し、


SKDのライバル男役オリエ津阪役の彩凪翔の、1年前はまだ現役だっただけあって、身の代にぴったりくっついた男役芸に見惚れました。


このへんの「戦争と少女歌劇」の描写には、監修の植田伸爾先生が助言されたのかな?