宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ

宝塚を「好き」という気持ちを因数分解してみたい、という思いで綴っています

『蒼穹の昴』清朝4億人のトップ秀才!梁文秀がどれだけ凄いか

梁文秀


紅子:おおお、キョンシー!



幽幻道士&来来!キョンシーズ 30周年記念予告篇


管理人:失礼な!これなるは、若干23歳で科挙に第一等「状元(じょうげん)」で合格し、光緒帝に仕える梁文秀(りょう ぶんしゅう、リァン ウェンシュウ)様であるぞ!


頭が高い!



紅子:ははー。


ところで、科挙に一位合格ってどれだけ凄いの?東大首席くらいのもの?





《科目によって人材を挙げ用いる意》中国で古くから行われた官吏登用のための資格試験。隋ずい・唐の時代に制定され、清しん末の1905年に廃止された。


唐代には秀才・明経・進士など六科りくかがあり、経書や詩文について試験を行ったが、宋代からは進士の一科となり、試験も解試・省試・殿試の三段階となり、


明清代でも郷試・会試・殿試が行われた。官吏としての栄達にかかわるため、きびしい競争があり、弊害も大きかった。


管理人:浅田次郎作、『蒼穹の昴』の全体の5分の1を占めるのが、梁文秀が1886年の科挙に合格するまでを描いた『第一 章   科挙 登第 』  


紅子:ちょっと待って。科挙って、阿倍仲麻呂が遣唐使になって、科挙に合格して、玄宗皇帝に仕えて日本に帰れなくて…のころからあったよね。


管理人:科挙はそのころから、1905年までずっとあった。


中国史家の宮崎市定先生が書いた『科挙_中国の試験地獄』という本があるんだけど、



科挙―中国の試験地獄 (中公新書 15)
科挙―中国の試験地獄 (中公新書 15)
中央公論新社



まず、15歳で受験できる、最初の予備試験を受験する段階で、覚えるべき基本の中国の古典、43万字。


さらに、その数倍に及ぶ、後世に書かれた四書五経の注釈書も丸暗記。


紅子:へっ?



管理人:その後もいくつもの選抜試験を経て、3年に1度の科挙の受験資格を得られます。


郷試(地方試験 倍率100倍)


会試(都での試験。全国2万人の秀才を集めた中から、合格者は300人)


殿試(皇帝が試験監督を務める。ここで300人の最終順位が決まる)



当時の中国の人口は、すでに4億人もいたらしいので、


科挙に1位で合格するということは、現代の東大首席や宝塚音楽学校の首席どころではない、超超超超超エリート様。



紅子:げええ。今聞いただけで、合格倍率6,666倍!残りの6,665人はどうするの・・・


管理人:40代、50代、70歳を超えても受からない人もザラだったそうで。


まあ、地方試験の郷試に合格すれば、地元の地方公務員としての地位は約束されていたし、


郷試に受からなくても、そこそこの成績であれば、今でいう県庁や市役所の一般職として働けたそうです。


あとは子どもの家庭教師とか、寺子屋の師匠とか。


紅子:入試って緊張するよねー


管理人:試験会場で発狂する者、幽霊を見る者、緊張のあまり心臓発作を起こして死んだ人も多数。


カンニングも無くならず、豆本を持ち込んだり、下着に数万字もの漢字を書きこんで持ち込んだり・・・




紅子:聞いていただけで、こっちの頭がクラクラしてきたわ。


そこまでして、どんな試験科目だったの?


管理人:四書五経(孔子の頃の中国古典)の知識と解釈を、厳格な文法ルールに則った論理的な文章で論述する能力、


政治の課題についての小論文、


詩(ポエム)作成能力、


紅子:ポエム?



梁文秀の詩文の解答ポエム

春 の 宵、 濡れそぼち たる 玻璃 ご しの、 君 が かんばせ、 薔薇 の ごと。


名残 ん の 雨 の ひと しずく、 干 ぬ 間 も 待た で 馬 の 嘶く…… 


悲し むなかれいつの 日 か、 藍 の 衣 で 戻り なん、 そ が 黒髪 の あせ ぬ 間 に、 そ が ほほえみ……


浅田次郎. 蒼穹の昴 


紅子:官僚になるのに、政治課題についての論文はともかく、そんな大昔の古文の知識とか、ポエムとか、43万字丸暗記してまで必要?


管理人:合格者の平均年齢は36歳くらい。40手前まで子供のころからずーっと、受験勉強しかしていないエリートだからねえ。


ポエムは得意でも、実務能力に欠けて、行政は部下(科挙に受かりそこなった人)に任せきりで賄賂が横行、宮廷はたたき上げの宦官に牛耳られ、みたいな状態。


理系の才能が全く評価されないから、


「天然痘を予防するため、西洋医学の種痘を導入しましょう!」


とか


「西洋の土木技術を導入して、治水工事をより効率的に」


みたいな発想も乏しく、国はガタガタ。


紅子:そんな眠りっぱなしの虎を、我らが梁文秀さまが紫禁城に乗り込んで叩き起こしに行くのね!