宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ

宝塚を「好き」という気持ちを因数分解してみたい、という思いで綴っています

カルトワイン 偽ワイン飲んで気づかないのか問題


金持ちは高っい安ワインを飲んで、何とも思わなかったの?




ミュージカル・プレイ
『カルト・ワイン』
作・演出/栗田 優香


公式あらすじ

21世紀初頭のニューヨーク。狂乱のヴィンテージワイン・オークション会場に華やかに登場するのは、高級スーツに身を包んだヒスパニック系の男、カミロ・ブランコ。


誰もがその名を知る、若きワイン・コレクターだ。羽振りの良さ、膨大な知識、確かな舌、上品な物腰と人懐っこい性格で信用を得たカミロのコレクションに、人々はこぞって高値をつけていく。


だが、そのほとんどは安ワインをブレンドして作られた偽造品で、カミロという名も偽名だった。


彼の正体は10年前に貧しい中米の国・ホンジュラスから入国した不法滞在者、シエロ・アスール。


マラスだった彼は、殺るか殺られるかの暮らしから抜け出すため、幼馴染のフリオと共に命懸けの旅に出たのだった。


シエロは何故ワイン偽造に手を染め、如何にして業界を揺るがすワイン詐欺師となり得たのか?


貧しい一人の青年が、被害総額1億ドルの偽造ワイン事件犯として投獄されるまでを描いた、ちょっぴりビターなスウィンドル・ミュージカル!  



『カルト・ワイン』はフィクションですが、モデルとなった事件はありました。




紅子:すっごく疑問なんだけど、カミロ・ブランコ君、安ワインをブレンドして作った偽造品を、高級品だとだまして売りつけていたんだよね?


安ワインって、そのへんのスーパーで売ってる、せいぜい数千円の代物だよね?


みんな、一口飲んで


「まずい!これニセモノだわ!」


って気づかなかったの?


管理人:この物語とよく似た事件が実際にあったんだけど、購入者は


「美味い酒を飲みたい」


から買うよりも、


「今買っておけば、今後プレミアがついて高く売れるかも」


「入手困難なワインを所有していれば、今度のパーティで自慢できる」


「今後関係を築きたいパートナーへのプレゼント用に」



「美味いから買う」より「高いから買う」


経済学で言う「ベブレン効果」だから。



高い方が売れる?ベブレン効果


みえ (虚栄) の消費効果をいう。


通常は価格が上昇 (下落) すれば需要は減少 (増加) するとされるが,これにはいくつかの例外があることが今日ではよく知られている。


ギッフェンの逆説もその一つであり,ここにいう T.B.ベブレンの主張する見せびらかすための消費 conspicuous consumptionもその一つである。


こうした消費の対象となる虚栄をかきたてるような財,たとえば宝石の場合,価格の上昇はかえって消費の増大を招くことになる。



紅子:金持ちには、


価格が高い→売れない


価格が安い→売れる


という庶民の消費性向とは、相容れない価値観があるのね。



でもさあ。


普段、ほんもののロマネ・コンティを飲みなれてる、ほんものの上流階級なら、


パーティで実際に安ワインを飲んだら、一口で


「ぺっ。こんな庶民の飲むような安ワイン、お口に合わないざます!」にならない?



お金持ちは普段、スーパーの安ワインなんて飲まないから、案外気づかなかった?



管理人:「業界を揺るがすワイン詐欺事件」と並ぶ、ワインの歴史に残る「1976パリスの審判」というエピソードがあってねえ。




1976年、パリのワインスクールが宣伝のため、


「フランスワイン」VS「カリフォルニアワイン」


銘柄を伏せた状態で、一流ソムリエが飲み比べたら、



勝つのはどっち!



という、お正月の格付けチェック番組みたいな企画を開催したんだけど、






1976年5月24日、長いワインの歴史の中でも特筆されるべき「20世紀最大の事件」が起きた。


場所はパリのインターコンチネンタルホテル。


当時「世界の一強」として君臨していたフランスのワインが、アメリカのカリフォルニアワインに「ブラインド・テイスティング」(銘柄を隠しての試飲)で「まさかの敗北」を喫したのである。


ワイン通なら一度は聞いたことがある大事件だ。

※「パリスの審判」とは、ギリシャ神話の美女選びのエピソード。神話と、開催地「パリ」をかけている。


紅子:カリフォルニアワイン、大勝利?


まじで?やらせとか忖度とかでなく?



管理人:開催場所はパリ、審査員は9人、すべて著名フランス人専門家。


やらせでそんなことしたら、その後の仕事に差し障るし、


フランス人のワインへのプライドは、うどん県民の讃岐うどんへのプライド並みに高いと思うから、


お金を積まれても、やらせはしないと思う(キッパリ)。


主催者などによれば、「パリスの審判」の意義は、以下の3つに集約されるという。


すなわち、


カリフォルニアのナパ産などを筆頭に、チリやアルゼンチン、南アフリカなどのワインが普及したこと


②フランスが「驕り」に気づき、再び切磋琢磨するようになった


③ブラインド・テイスティングによって先入観に左右されずワインの本質を感じるようになった、ということだ。


紅子:自分の舌以外、信じちゃだめなのね。



管理人:そ。宝塚の舞台の感想でも、


SNSでみんなが「面白い!」と絶賛していても、自分がつまんなかったら「つまんなかった」と言っていいし、


みんなが「つまんない」と言っていても、自分が面白かったら、「面白いじゃん」って言う


「ひとかけらの勇気」って大事だと思う。


紅子:無理やり宝塚に絡めたね。