宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ

宝塚を「好き」という気持ちを因数分解してみたい、という思いで綴っています

ヅカファンにもお薦めラブコメ『すずめの戸締り』感想



大ヒット公開中のアニメ映画『すずめの戸締り』を鑑賞しました。


タイトルだけ聞くと『?』ですね。


「すずめ」とはヒロインの名前「岩戸 鈴芽(いわとすずめ)」のこと。


すずめが神話の「天岩戸」ならぬ、日本に大震災をもたらす「災いの扉(後ろ戸)」を戸締りしていく話です。




『すずめの戸締まり』予告【11月11日(金)公開】




あらすじ


東日本大震災で母親を亡くし、九州、宮崎の漁村に住む叔母に引き取られた17歳の女子高校生・岩戸 鈴芽(いわと すずめ)


すずめはひょんなことから、日本に大震災をもたらす「災いの扉(後ろ戸)」を封印する「要石(かなめいし)」を抜いてしまう。


解放された要石は、しゃべるネコの姿になって逃亡した!このままでは日本中で大震災が起きる!


すずめは宮崎~別府~フェリーに乗って愛媛の八幡浜へ、ヒッチハイクで神戸へ、新幹線で東京へ、そしてすずめの故郷、福島県の浜通りへ。


要石の力で椅子に変えられた、後ろ戸の『閉じ師』の大学生宗像 草太(むなかた そうた)と共に、日本中を”戸締り”して回る旅に出る。

王道の「少女の成長物語」として、考察要らずで楽しい映画でした


すずめが、旅の途中で様々な人と出会って成長する青春ムービーとしては、「しゃべる猫」が出てくるファンタジー要素あり、


女子高生が男子大学生と旅をしたら、ドギマギする話も出そうなところですが、


旅の相棒が「椅子の姿に変えられた大学生のムナカタくん」なので、ドギマギというよりドタバタコメディの要素もあり、工夫があって面白かったです。



「災いの扉(後ろ戸)」から出てくる、八岐大蛇(やまたのおろち)みたいな震災の元凶(映画では「ミミズ」と呼ぶ)と戦うバトルアクション映画としても、見ごたえ十分。


息詰まる日常が続く地元を出て、


震災孤児であるすずめを引き取った叔母さんと、遠慮があってずっと言えなかった思いをぶつけあい、


4歳で亡くした母との、あいまいなまま閉じ込めたままの、記憶の扉を開けに行く、震災への鎮魂のロードムービーでもあります。



考察勢にも、震災と日本神話のメタファー映画として楽しめる


ヒロインの岩戸 鈴芽(いわと すずめ)が住むのは宮崎県。


宮崎県は、日本神話の「始まりの地」とされ、


天上の神が地上に降臨した「天孫降臨」や「天の逆鉾(さかほこ)」伝説、


アマテラスが岩戸に引きこもったので、アメノウズメノミコトが舞って呼び出した「天岩戸」伝説などの舞台とされています。


さらに、すずめの旅路である別府~八幡浜~明石海峡のルートは、震災が多発するエリアである「中央構造線」の真上のルートでもあります。



岩戸 鈴芽(いわとすずめ)」の名は、「天岩戸」のアメノウズメノミコトの伝説とも呼応する。


『閉じ師』の大学生、「宗像 草太(むなかた そうた)」の「むなかた」姓のルーツは、アマテラスから生まれた「道」の守り神、宗像三女神(むなかたさんじょしん)。


すると「災いの扉(後ろ戸)」から出てくる、八岐大蛇みたいな震災の元凶「ミミズ」とは、中央構造線の比喩で、


すずめと宗像の旅は、中央構造線上の道を、荒ぶる神を鎮めていく旅でもあるとも読める。


震災と日本神話のメタファー映画としても、深読みのしがいがあって面白かったです。



追記:ねこ好きの方は要注意!