宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ

宝塚を「好き」という気持ちを因数分解してみたい、という思いで綴っています

意外とリリカルMy Last Joke-虚構に生きる-







『My Last Joke-虚構に生きる-』

作・演出/竹田 悠一郎   


抒情溢れる詩や短編小説により、後世の作家たちに多大な影響を与えたエドガー・アラン・ポー。


1809年アメリカ、ボストンに生まれ、数多の詩や短編小説を書き続け、生活のため時に雑誌編集者ともなった彼が、作家として本当に描きたかったもの、人生で追い求めようとしたものは何なのか……。


彼の作品に残る言葉の数々、彼の妻となるヴァージニア、彼の人生や作品に関わる作家や編集者たちとの関係を軸に、自らの運命を自覚した上で、その運命に挑み続けた人生を鮮やかに描き出す。      




エドガー・アラン・ポー 天飛 華音 世界初のミステリー小説とされる「モルグ街の殺人」を書いた米国の作家


ヴァージニア・クレム 詩 ちづる エドガーの妻


トマス・ホワイト 美稀 千種 雑誌編集者


ルイス・G・クラーク 朝水 りょう


マリア・クレム 澪乃 桜季 エドガーの妻ヴァージニアの母


ジョージ・グレイアム 夕渚 りょう


フランシス・アラン 七星 美妃


ジョン・アラン 希沙 薫


ルーファス・W・グリスウォルド 碧海 さりお:エドガーと対立関係になった編集者


ウィリアム・バートン 夕陽 真輝:マサチューセッツ工科大学創設者?


サロンの淑女 彩園 ひな


エリザベス・ポー 紅咲 梨乃 エドガーの母


大鴉 (おおがらす)鳳真 斗愛 エドガーの有名な詩のタイトル


フランシス・S・オズグッド 瑠璃 花夏 フランシスと文学的な愛を交わした詩人


ジョン・R・トンプソン 御剣 海


ナサニエル・P・ウィリス 稀惺 かずと 有能な編集者。文学はともかく性格に難があるエドガーを擁護


ヘンリー・W・ロングフェロー 大希 颯 アメリカの有名な詩人


エリザベス・F・エレット 乙華 菜乃 作家。ポーと(フランシス・S・オズグッド 瑠璃)との恋愛スキャンダルに首を突っ込んだ




管理人:「江戸川コナン」の名前の元ネタの1人、エドガー・アラン・ポー。


彼はコナン・ドイルよりも先に世界初の推理小説と言われる「モルグ街の殺人」を発表し、


酒乱の男が酔った勢いで殺した黒猫に祟られるホラー小説「黒猫」、元祖暗号ミステリ「黄金虫」など、文学史上語り継がれる作品を生み出しました。


紅子:大鴉 (おおがらす)って何?


管理人:【大鴉】おおがらす《原題The Raven》


ポーの詩の代表作。1845年発表。1842年1月に妻ヴァージニアが自宅でピアノを弾いていた最中に喀血し、自身も酒の量が増えていた時期に描かれた作品です。


名前のない主人公が恋人レノーアを失ったことを忘れようと、忘れられた古い伝説を座って読んでいるところに、大きなカラスがやってくる。


カラスはカアと鳴かず、人の言葉で”Nevermore(二度とない)”とばかり繰り返す。


主人公は大鴉に繰り返しNevermoreといわれ続ける中で、精神は崩壊し、疲れ、悲しみ、うちひしがれ、最後には発狂する…


紅子:聞いているだけで気が滅入りそうなポエムね。


管理人:エドガー・アラン・ポーは、文才を認められるも、頭を下げられない性格と飲酒の悪癖などで、人間関係のトラブルを起こし続け、死ぬまでほぼ貧乏暮らし。


女流詩人セアラ・ヘレン・ホイットマン、実業家の妻アニー・リッチモンド、セアラ・アンナ・ルイスらとの間にプラトニックなロマンスがあり、


最期はアルコールが原因と思われる不可解な死を遂げています。


紅子:プラトニックなロマンス?


管理人:エドガー・アラン・ポーは妻ヴァージニア・クレムが13歳の時に結婚しているのですが、伝記作家によると2人の関係は兄と妹のようなもので、プラトニックなものであったのではないか、と言われています。


紅子:ポーの一族のエドガーとメリーベル?


管理人:エドガーは実は、とってもリリカルなポエムを残した人でもあるのです。(お金にはならなかったけれど)


妻に先立たれ、行き倒れ同然に死んだ後に新聞に掲載された最後のポエム


「アナベル・リー」



"愛するアナベル・リーは死んだ。


天国にいても、僕たちほど幸せではない天使たちに嫉妬されて、連れていかれたんだ。


ぼくらの愛は、


ぼくらより偉い人たちの愛よりも


ぼくらより賢い人たちの愛よりも、


強いんだー”


For the moon never beams without bringing me dreams

Of the beatiful Annabel Lee;

And the stars never rise but I see the bright eyes

Of the beatiful Annabel Lee;

And so,all the night-tide,I lie down by the side

Of my darling,my darling,my life and my bride

In her sepulchre there by the sea―

In her tomb by the side of the sea.




なぜなら、月の光の差すごとにぼくは

美しいアナベル・リーを夢みるからだ


星々のあがるごとに美しいアナベル・リーの

輝く瞳を見るからだ―


だから夜ごとぼくは愛するアナベル・リーの傍(そば)に横たわるのだ


おお、いとしいひと―わが命で花嫁であるひとの


 海の岸辺の王国の墓所に―

 ひびきをたてて波寄せくる彼女の墓所に。


出典:『対訳 ポー詩集 ―アメリカ詩人選1』(エドガー・アラン・ポー、訳:加島祥造、岩波文庫


紅子:こんなポエムを捧げられる人生も、ロマンティックかも…でもやっぱり貧乏はイヤ。


管理人:エドガー・アラン・ポーのお墓は、墓石もなく、目印として「ナンバー80」と書かれた砂岩のブロックが置かれているだけの、さびしいものだったそうです(今は改修されています)


幾億もの後世の読者が読むごとに、読み手が想像しうる最高の美女の面影をまざまざと浮かび上がらせ続けるポエムこそが、エドガー・アラン・ポーとヴァージニア・クレムのこのうえなく美しき墓標だったのでしょう。