宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ

宝塚を「好き」という気持ちを因数分解してみたい、という思いで綴っています

『幸福な王子』はオスカーワイルドの自伝である

おお、元タカラジェンヌによる読み聞かせとな。息子の情操教育にちょうどいい。




~20分後~



うわあああん(おかん、ワイルドに泣く)



カタリジェンヌ第1話「幸福な王子」



出演者:

:瀬奈じゅん

王子:霧矢大夢

マッチ売りの少女・母:彩乃かなみ

アイドル:女王:夢咲ねね

市長・男の子:宇月颯


ある王国に建つ 幸福の王子の像が人々の悲しみを救うために、南へ帰る燕に託して、像を飾るサファイア、ルビー、金箔を貧しい人々に贈る。


冬が来て燕は落ち、王子は醜い姿になるが、顔には微笑みが。

あーこの並び、「アーネストインラブ」を思い出したなあ。


楽しかったなあ、あれ。明日海さんもやってたね。原作はワイルドの「真面目が肝心」


・・・あれ、この作者「オスカーワイルド」って、「幸福な王子」のワイルドと同一人物なんだ。


ヅカでは他にもワイルド原作が


ドリアングレイの肖像(1996年 星組紫吹淳主演)


サロメ(聖書のエピソードの翻案 ビアズリーの挿絵やシュトラウスのオペラで有名 
ダンスオランピアでもありましたね)





宝塚での登板率、高!
シェイクスピアは別格として、フィッツジェラルドに並ぶ登板率ではあるまいか。


オスカー・フィンガル・オフラハティ・ウィルス・ワイルド(Oscar Fingal O'Flahertie Wills Wilde、1854年10月16日 - 1900年11月30日)は、アイルランド出身の詩人、作家、劇作家。


耽美的・退廃的・懐疑的だった19世紀末文学の旗手のように語られる。


ヅカオタ脳に刺さったオスカーワイルドの言葉

彼女は、弱さという何ともいえない魅力を欠いている。

She lacks the indefinable charm of weakness.

優等生って人気が伸び悩んだりするよね。

自分らしくあれ。

ほかの人の席はすでに埋まっているのだから。

Be yourself; everyone else is already taken.

実力も大事だけど、トップになれるかは「独自の男役像」の確立なんだよね

すべての粗悪な芸術は、善良な意図の結果である。


All bad art is the result of good intentions.

トンチキ駄作だって、「よっしゃ、駄作を作るぞ!」と思って作ってるわけではない、と思う・・・

私たちは、不必要なものだけが必需品である時代に生きている。


We live in an age when unnecessary things are our only necessities

宝塚だって・・・

人間のことを善人だとか、悪人だとか、

そんな風に区別するのはばかげたことですよ。

人というのは魅力があるか、さもなければ退屈か、そのいずれかですからね

It is absurd to divide people into good and bad.

People are either charming or tedious

あんまり生徒さんの過去のことをほじくり返して、わあわあ言わないであげてね

すべての聖人に過去があるように、すべての罪人に未来がある

Every saint has a past, and every sinner has a future


・・・耽美的・退廃的・懐疑的というけどさ、めっちゃ真っ当なことを言っているのでは。


「幸福の王子」はワイルドの分身?

ワイルドさん、ダブリンの裕福な医者の家庭に生まれ、オックスフォード大学を首席で卒業し、ユーモアとウィットに富んだ会話で社交界の人気者となり、本も売れ、劇作家としても評判で、人生順調だったそうで。


が、ある日若いツバメ、じゃなくて16歳年下の文筆家、アルフレッド・ダグラス卿と出会ってしまう。


ワイルドさん、ダグラス君にベタぼれ。財産を貢ぎ、やんちゃな彼の不祥事の後始末も全部して。


が、当時男色はタブーだった。ダグラス君の父親に「同性愛の罪」で告訴され、収監(そういう時代だった)。


獄中からもダグラス君に哀切な手紙を書き続けるが・・・


ムショから出た時、ダグラス君のお迎えはなし。社会的地位を無くし、無一文となったワイルドに用は無かったようで。


ワイルドは放浪の果てに、パリのさみしい宿で46歳で客死。最期の言葉は「ダブリン行きの船に・・・」魂はもう故郷に向かっていたのでしょう。


「幸福な王子」原作のラスト(wikiより)

やがて冬が訪れ、王子はみすぼらしい姿になり、南の国へ渡り損ねたツバメも次第に弱っていく。死を悟ったツバメは最後の力を振り絞って飛び上がり王子にキスをして彼の足元で力尽きる。


その瞬間、王子の鉛の心臓は音を立て二つに割れてしまった。みすぼらしい姿になった王子の像は心無い人々によって柱から取り外され、溶鉱炉で溶かされたが、鉛の心臓だけは溶けず、ツバメと一緒にゴミ溜めに捨てられた。


天国では、下界の様子を見ていた神が天使に「この街で最も尊きものを二つ持ってきなさい」と命じ、天使はゴミ溜めから王子の鉛の心臓と死んだツバメを持ってくる。神は天使を褒め、そして王子とツバメは楽園で永遠に幸福になった。

・・・ワイルドが「幸福な王子」を書いたのは、ダグラス君に会う前だったそうですが、奇しくも自身の最期を予見するようなラストだなあ。


でも、ワイルドは幸福な作家だと思う。世間のほとんどの作品は、作家の死後どころか存命中から忘れられていくのに、


死せるワイルドさん、生けるヅカオタを泣かしたんだから。