宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ

宝塚を「好き」という気持ちを因数分解してみたい、という思いで綴っています

おうちでタカラヅカ「アルジェの男」礼と愛月のハーモニー




「やってねえのは叩きに殺し」叩きとは「強盗・恐喝」のことだって。


・・・超極悪人でもなかったのね(まあ昔のヅカだし)


「アルジェの男」って、1974年8月、あのベルばら初演の直前に鳳蘭主演で初演という、ベルばら以前のヅカ的大衆演劇の、一つの完成であり典型なんだろうな、という感じですね。


「アルジェの男」というタイトルが秀逸ですね。植民地アルジェリアの孤児、という表社会から何重にも疎外されている若者が、上流階級の女性たちを踏み台にしてのし上がろうとする。


昨今は大河ドラマの総集編のような、「ストーリーの説明」に慌ただしく追われている大劇場芝居が多いですが、「アルジェの男」はフランス古典劇っぽいというか、変奏曲っぽいというか。


「アルジェの男」という主題があって、サビーヌ、エリザベート、アナ・ベル、個性の違う3人の女性に出会うたび、どんなハーモニーを奏でるか、主題がどのように変奏されるか、という男役芸の表現の妙を、1つ1つの場面をたっぷりとって魅せる芝居だなあ、という印象があります。




そんなおフランスの香りが漂う楽章の変わり目に突如、愛月さんがヅカヅカ入って来ると「仁義なき戦い」のテーマが鳴り響くようだなあ(笑)




ジュリアンが逃れようとして逃れられない、アルジェリアのドメスティックな匂いをぷんぷんさせる愛月さん、好きよ(笑)


ジュリアンの心に仮面を被りきれず、カサノバにも成りきれず。その突き放しきれない優しさが、最後のあっけない幕切れを呼び寄せてしまう。唐突なようで必然なんだろうなと、余韻を残すラストでした。