宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ

宝塚を「好き」という気持ちを因数分解してみたい、という思いで綴っています

月ムラ楽 5分の舞に64年のジェンヌ人生が走馬灯のようによぎる


松本悠里さん、大劇場舞い納め



月組公演『WELCOME TO TAKARAZUKA -雪と月と花と-』『ピガール狂騒曲』初日舞台映像(ロング)


月組公演大劇場千秋楽、松本悠里特別顧問は大階段でのセレモニーも特になく、大劇場をご卒業されました。


64年のジェンヌ人生の舞い納めに、ヴィバルディ「四季」より「冬」に合わせて、ニューヨーク公演でも踊られた「雪しまき」を踊られました。




ヴィヴァルディ: 「四季」より冬:第3楽章[ナクソス・クラシック・キュレーション #切ない]


雪風巻(ゆきしまき「ゆきじまき」とも) 雪まじりの風がはげしく吹くこと。雪がはげしく降り、烈風が吹きまくること。吹雪。

雪の場面なので、白鷺のような白い衣装で踊られるのかと思いきや、燃えるような真っ赤な衣装をお召しになっていらっしゃいました。


吹雪の中、胎内を回帰するように赤い千本鳥居を抜けて、1人の男とすれ違い、燃えるような紅の振袖で独り舞う女。


私は日本舞踊についてまったく門外漢ですが、歌舞伎では、赤い着物は、女性の美しさや高貴な身分が表現され、そして恋に燃えるなどの一途さ、時には激しい気性もあらわされているそうです。


悠里さんが表現している女性は、もうこの世の者ではなく、肉体から自由になった魂が精霊となって、在りし日の、恋の思い出を舞っているようでした。


舞っている時間は、5分もなかったのかもしれません。それなのに、或る女の一生の、最期によぎる走馬灯を追体験するような。


たとえば『エリザベート』は15歳のシシィから60歳の死までの45年を、観客は2時間半で追体験しますが、


それよりももっと濃密な、64年のジェンヌ人生を5分で追体験するような、舞の一つ一つの振りの情報量の多さ。


これが芸の力、なのでしょう。


作曲にかかる時間=その曲の作曲に費やした5分+それまで生きてきた時間



日本BGMフィルハーモニー管弦楽団 序曲/「ドラゴンクエスト」

(『ドラクエ』を代表する曲である)「序曲」は、5分でできました。そういうパッとメロディーが浮かんだ曲のほうが、こねくり回して作った曲よりも、素直で出来がいいものです。ただ、この曲は5分プラス、僕がそれまで生きてきた55年分が詰まっている。まあ、この言葉は、そういう言葉を残した画家のピカソの受け売りですが。