宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ

宝塚を「好き」という気持ちを因数分解してみたい、という思いで綴っています

東宝版ロミジュリは「死」とロミオのBLの話だった



東宝版「ロミオとジュリエット」の配信を視聴いたしました。


この上演は、舞台を登場人物がスマホを使う現代のヴェローナに移しています。




ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』(2021)舞台映像ダイジェスト【黒羽麻璃央・伊原六花ほか】


ジュリエットの伊原六花ちゃん、どこかで見たと思ったら、ちょっと前に話題になった「バブリーダンス」のキャプテンの子だった。



【TDC】バブリーダンス 登美丘高校ダンス部 Tomioka Dance Club


6月5日(土)17:30公演 

・ロミオ:黒羽麻璃央

・ジュリエット:伊原六花

・ベンヴォーリオ:味方良介

・マーキューシオ:大久保祥太郎

・ティボルト:吉田広大

・死:小㞍健太

意外と治安の良いヴェローナ


地方民ゆえ、これまで東宝ミュージカルを拝見したことが無かったので、


「外部」ということは、宝塚版に比べて、いわゆるセックス・ドラッグ・バイオレンス描写がドギツイのかしら…まだ息子にそういうの見せたくないな…どうしよう💦


と心配していたのですが、正直、ロミオ達若者チームの演出については、宝塚版と大きな違いはありませんでした。


個人的な話ですが、管理人が通っていた中学校は、しょっちゅう窓ガラスが割られたり、カーテンに火をつけて学校を燃やしかけた子がいたり、卒業生のヤンキー君がバイクで校庭を走りまわっていたり、なかなか「荒れた」学校だったので、


イマドキのミュージカル俳優さんは、お行儀のいい好青年が多いのねえ、とヴェローナの治安が良く感じました。


むしろ、愛ちゃんの「死」やティボルトの闊歩する宝塚版ヴェローナのほうが、治安が悪かったかもしれない(笑)


ただ・・・いわゆる「危険ドラッグ」を想起させる描写はありました。


宝塚版との違い

東宝版は、モンタギューとキャピュレットがそれほど血みどろの抗争劇を繰り広げているわけではなく、ロミオとジュリエットの悲劇の根っこは社会的というより、2人のパーソナルなところに焦点が当てられていた印象です。


あと、「死」はいるけれど、「愛」はいない。


ジュリエットの出生の秘密

宝塚版のジュリエットは、登場シーンでたぶん「出会って14行の口説き文句でキスする方法」みたいな本を夢中で読んでいて、乙女が恋に恋しているんだろうな、感が強いのですが、


東宝版では、キャピュレット婦人がティボルトと関係があるのが明確に描写されていて、母親が娘に「お前は本当はお父さんの子ではない。別の男性との間に作った子よ」と言い放ったり、私も不幸な結婚をしたのだからお前も、とでも言いたげな、今でいう相当な「毒親」で、


キャピュレット卿も、パリスとの結婚を嫌がるジュリエットに手をあげた後で「ジュリエットが産まれた時、真実に気づいてジュリエットの首に手をかけたが、やっぱりお前は私の娘」と歌っている。


ジュリエットが仮面舞踏家で一目ぼれした相手と速攻で結婚したがるのは、こんな家庭から一刻も早く抜け出したかったのだろうな。


「死」がロミオに惚れた?

カーテンコールの登場順では、東宝版でも「死」は男性俳優2番手格だった!


今回の上演を拝見して、一番の衝撃だったのは、「死」を演じた本職のバレエダンサーである小尻健太さん(漢字表記は正しくはこちら)



この、イリ・キリアン的モダンダンスの動きで表される「死」


この「死」が、最初はナチスドイツや原爆の映像を背景に無表情で登場するので、「死」は人間社会の狂気の比喩か、と思っていたらー


徐々にこの「死」は、マーキューシオもティボルトもジュリエットも眼中に無く、ただロミオひとりを狙っていることが見えてくる。


マーキューシオの死にも、ティボルトの死にも無関心だった「死」が、ロミオとジュリエットが命の初夜を迎える時になって、急に獣性をむき出しにして、ロミオの悪夢となって現れる。


抒情的な後朝の朝の目覚めが、夢に落ちてあばらを折って目を覚ます感触ー


「死」は、次はBELLA FIGURA(何食わぬ顔で)、追放されたロミオが彷徨う娼館の男娼として現れ、


ジュリエットが死んだと思って毒薬を求めるロミオに応じる時の「死」の恍惚とした表情・・・


これから「死」は「ロミオ」と共に危険ドラッグを飲んで、恍惚のうちに心中する気なのか?と思ったわ。


というわけで、東宝版ロミジュリは「死」とロミオのBLでした。


蛇足

400年前の医学ではどうか知らんが、スマホのある現代で自宅で服毒して変死していたら、警察の監察医が検視して、仮死状態なら判明するのでは?


(スマホがあるのにすれ違うんかい!については、「スマホを取り上げられていて連絡手段が無かった」でした。)