宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ

宝塚を「好き」という気持ちを因数分解してみたい、という思いで綴っています

コロナが無ければ、研14の珠城演じる正行に会えなかった


93期がこれからトップお披露目という時期に、94期トップの退団



珠城りょうさん、宝塚大劇場ご卒業、おめでとうございます。


管理人は大劇場千秋楽の配信は視聴できず、東京宝塚劇場の千秋楽のライビュ待ちですが、「桜嵐記」は評判もすこぶる良いそうで、早く見たい気もして、でも、初見が珠城さんの宝塚最後の日、というのも寂しくてたまらない地方民です。




初舞台からわずか9年、天海祐希に次ぐスピードでトップに就任して5年。葛藤の一つひとつを、努力で乗り越えてきた。宝塚の正装の黒紋付きに緑の袴姿で大階段を降りてきた珠城は、


「苦しくて前を向くのも怖かったときも、その経験も全てが私を成長させてくれました」とあいさつ。


「みなさまの応援のおかげで、ここまでこられました」と感謝した。


そういえば、珠城さんの退団発表は2020年3月16日、コロナ禍はもう世間を揺るがし、宝塚も休演したり一時再開したり、と、先の読めない時期の発表でしたね。




「今まで耐えて、背負ってきたもの、少しずつ…おろしていっていいのかなって…思うようになった」


あれから、世界は、誰も思ってもみなかったことになった。


珠城さん、痩せましたね。


トップさんになるとたいてい激務で痩せてしまわれるものですが、珠城さんは子供の頃に読んだ「つるの恩返し」の絵本のように、文字通り心身を削って糸を紡いで、ファンをあたたかく包む美しい衣を織ってくれたのですね。


珠城さんの地元三河の偉人、徳川家康の言葉を思い出します。




人の一生は重荷を負をひて 遠き道をゆくが如し 


急ぐべからず


不自由を常と思えば不足なし


こころに望みおこらば 困窮したる時を思ひ出いだすべし 


堪忍は無事長久の基 怒りは敵とおもへ


勝事ばかり知しりて負くる事をしらざれば 害その身にいたる 


おのれを責めて人をせむるな 及ばざるは過ぎたるよりまされり


トップの道とは、重荷を背負ってゆく遠い道。一昔前なら、「芸能人は夢を売る商売、耐えて、背負ってきたとかあまり言いなさんな」、という価値観もあったのでしょうが、


「銀ちゃんの恋」の時代と違って、今は芸能人も、一人の人間であることをさらけ出してもかまわない、魅力も弱さも、ファンと共に分かち合って歩んでいこう、という時代ですからね。


「個性とは、超絶した歌唱力とか、ダンスのセンスとか、憑依型演技力を持っていること」だけではないと思います。こんなふうに自身の気持ちを、自分の言葉で伝えられることが、彼女の他に無い個性だったのでしょう。


「研14の珠城りょう」を見られた奇跡


以前こんな記事を書いたのですが、



歴史にタラレバはないのですが、もしもコロナ禍が無くて休演期間もなく、珠城さんが「ピガール」「幽霊刑事」「桜嵐記」を上演していたら、今私たちが見ているような「男役珠城りょうの集大成」を見られたのだろうか?


去年の休演期間に何があったのかはわかりませんが、奇しくも一時、思いがけず重い荷を下ろせる時があって、


珠城さん、休演期間を終えて戻ってきて、本当に男役としての魅力が増しましたよね?



個人的に「男役の神髄は研13から」と思っていて、


男役10年というけれど、正直そのころはまだ女性らしさがピチピチして、男役芸の邪魔をする。


だいたい研12くらいでホルモンバランスが変わる時期があって、女っ気が抜けてきて、男役芸が身に染みて、男役として舞台で自由に呼吸できるようになる。


春日野八千代さんの時代から、トップ男役が当たり役を出せるのは、研13~研15の3年間くらいに凝縮されていると思うのです。


奇しくもコロナ禍によって、研14の男役珠城りょう演じる楠木正行に会うことができたのですね。