宝塚『CITY HUNTER』感想90分の間にケリつけすぎ問題
注:ラストの展開を含めたネタバレ感想です。
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作品がごちゃごちゃした理由その1 いきなり「偽」って言われても
宝塚版シティハンターのわかりにくさは、
「30分アニメ枠」の一話完結エピソードである「偽シティハンター事件」と、
「2時間映画枠」の、冴羽 獠 (彩風 咲奈)の出自にからむ「国際犯罪組織ユニオン・テオーベ事件」
本来2時間半かかるストーリーを90分に圧縮し、2つのエピソードが交互に進行するのですよ。
さらに、冒頭いきなり「偽シティハンター事件」はわかりにくい。
TVシリーズでも第1話は、原作を知らない視聴者に、主役のキャラや作品世界の設定を30分でコンパクトに伝える、大切な回ですよ。
そもそもシティハンターを知らない視聴者に、「第1話「偽シティハンター」」って言われても、混乱するでしょう。
作品がごちゃごちゃした理由その2 90分でケリつけすぎ
2時間劇場版「国際犯罪組織ユニオン・テオーベ事件」枠
ゲストヒロイン アルマ・ダヤン (夢白 あや)との淡い恋
目の前の槇村 香 (朝月 希和 )とのパートナー関係
ライバルミック・エンジェル (朝美 絢 )との腐れ縁関係
亡き槇村 秀幸( 綾 凰華)との相棒関係
養い親海原 神 (夏美 よう)との「疑似父子関係」のケリ
30分アニメ「偽シティハンター事件」枠
宇都宮 乙【小林 知花是】 (千風 カレン)と小林 豊 (彩海 せら)「母子のケリ」
さらに
海坊主(縣 千)と 美樹 (星南 のぞみ)
政 (諏訪 さき)と 冬野 葉子( 野々花 ひまり)
野上 冴子 (彩 みちる)と 北尾 裕貴 (眞ノ宮 るい)
これだけの関係に、90分でケリつけすぎ。
・・・齋藤 吉正先生、この脚本を、原作のシティハンターを全く知らない客が初見で「よくわかって面白かったー」となると思っていました?
宝塚の客は勉強熱心だから、当然予習してきていると思っています?
最近の宝塚の大劇場作品が、情報過多で初見で「???」なものが多いのは、情報を詰め込んで詰め込んで、1度見るだけではたぶんわからないでしょうから、理解できるまで何回でも劇場にお越しください!という作戦なのか?
「ついていけなくて、客席で取り残された感があってつらい」と、金を払った客に思わせてはいけませんよ。
エンタメとは お・も・て・な・し。ごちそうは、量が多くても生焼けばっかりでは、消化不良で観客の血肉になりませんよ。
いっそ作品のキモを「親子のケリ」に絞ってほしかった
それでも個人的に、宝塚版『CITY HUNTER』を駄作とは思いませんでした。
自分が親になったせいかなあ。
冴羽 獠の、おちゃらけずにはいられない孤独を抱えたキャラの根っこにある、幼少期に両親を亡くし、育ての親として敬愛していた海原 神 と対峙せざるを得ない「父殺し」と、
「父殺し」の対になる、宇都宮 乙と息子小林 豊の「母との和解」とを1作の中に描いていた点には、感じるところがありまして。
いっそ作品のキモを「親子のケリ」に絞ったら、
むやみにいったり来たりせず、90分中、最初の30分で「偽シティハンター事件」にいったんケリをつけて、残り1時間で「国際犯罪組織ユニオン・テオーベ事件」に集中してケリをつけたら、
もっとすっきりとしたのかなあ、と思うのですが、宝塚的なヒロインとの関係も入れねばならず、焦点がぼやけてしまったのが残念です。