宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ

宝塚を「好き」という気持ちを因数分解してみたい、という思いで綴っています

英国的紳士と淑女 とっても優雅な悪口のゲーム


『ザ・ジェントル・ライアー ~英国的、紳士と淑女のゲーム~』の原作である、オスカー・ワイルドの戯曲「An ideal husband(理想の夫)」は、1895年の作品。


しかし、偉大な文豪の、母国でも繰り返し上演されている本作、日本では2022年までプロによる上演の記録は無いそうで。


そんな幻の傑作が、奇しくも2022年2月1日[火]、東京と兵庫県で同じ日に日本初日を迎えるはずでした。



宝塚での「ワイルド戯曲日本初演」はかなわなかったが・・・



演劇研修所第15期生 修了公演

理想の夫


文化庁委託事業「令和3年度次代の文化を創造する新進芸術家育成事業」

公演期間:2022年2月1日[火]~2月6日[日]



作品は、オスカー・ワイルド作『理想の夫』。19世紀末のロンドン社交界を舞台に、理想の結婚とは、理想の夫とは、ひとりの人間を愛するとは、を問う傑作喜劇です。


日本で上演歴のなかったこの戯曲を、ワイルド作品初となる、宮田慶子演劇研修所長の演出で、お贈りいたします。


研修生活3年間の集大成に、どうぞご期待ください。

こちらの初日は2月1日[火]18:00~


宝塚版の幻のバウの初日は、2月1日[火]14:30~


くあー!宝塚のほうが3時間半の差で、「オスカーワイルドの戯曲の日本初演」の記録を日本演劇史に残すはずでしたのに。


新国立劇場の公演は全日程を無事に上演できたそうで、宝塚版もKAAT神奈川芸術劇場での公演ができることを信じております。(配信もなんとか!)



なんで127年も日本で上演されなかったのか?

理想の夫 (角川文庫)
理想の夫 (角川文庫)
KADOKAWA


原作『理想の夫』の宝塚版のタイトルは、


『ザ・ジェントル・ライアー ~英国的、紳士と淑女のゲーム~』


原作を読んだだけの感想ですが、このタイトルの「ゲーム」、紳士と淑女は何のゲームをしているのか?


どうやらトランプとかテニスではなくて、「ユーモアとウイットに富んだ会話のラリー」ゲームを楽しんでいるようです。


日本のお笑いというと、Mー1グランプリ的なものを思い浮かべがちですが、


19世紀の紳士と淑女が好んだ、ユーモアとウイットとは、





人間の行動その他の現実の事象に対してそれをおかしみの面からとらえ、表現しようとする精神態度、ないしはそこに表現された滑稽(こっけい)さそのものをさす。


 


機知、頓知(とんち)、才知。ウイットとは本来知力のことだったが、イギリスにおいて17世紀ごろから、当意即妙な発想を意味するようになった。


英国的、いとも優雅な悪口のレッスン

たとえば、財産目当てでアーサーに近付いたものの、更に良い条件の相手と結婚するため、アーサーとの婚約を三日で破棄した過去を持つ、ローラ・チーヴリー夫人(音波 みのり)が、


「あなたは美しい女性だ。きっと今までの人生で、いろいろなご褒美があったでしょう?」


と言われて、


女 の 人 は 美しけれ ば きっと 御褒美 が 頂ける もの でしょ う かしら?   

罰 を 受ける のが 普通 じゃ ない でしょ う か?  


 ほんとう に そう です わ、 近頃 では、 一番 女 を 老い こま せる もの は、 取り巻き の 殿方 たち が ちっとも 浮気 をなさら ない って こと です わ。 


もし そう で ない と すれ ば、 それでは いったい どうして ロンドン の 美しい 御 婦人 方 の ほとんど が、 やつれ た 顔 を し て いらっしゃる ん でしょ う!


オスカー・ワイルド; 厨川 圭子. 理想の夫 (角川文庫) (p.15). 株式会社KADOKAWA. Kindle 版.



日本では美人が「お美しくて羨ましい。」と言われたら、全力で


「いえいえいえいえ、とんでもない!」


と謙遜するところでしょうが、


この皮肉な理屈っぽい、「いかにもお芝居のセリフ」な返し。客の「こうきたらこう返すだろうな」という予想の、ことごとく斜め上を返してくる。


こんなセリフをポンポンラリーされると、文字で読んでいる分には、立ち止まって


「?・・・あ、そっか(苦笑)」


となるかもしれませんが・・・


たとえイギリスでも、普段こんな会話している奴いねーだろ!




このローラ・チーヴリー夫人が、またくせ者。


政界一高潔な紳士と名高いロバート(綺城 ひか理)に、ある“切り札”を突き付けるところの腹の探り合いも、


ラブロマンスというより、週刊文春の記者が政治家の疑惑を追い詰める記事を読んでいるような・・・文字だけ読んでいると、香川照之VS大竹しのぶのバトル並みに胃もたれした(笑)


さて、この食わせ物の原作を料理する脚本・演出は・・・


田渕 大輔・・・


大劇場でのオリジナルは


『異人たちのルネサンス—ダ・ヴィンチが描いた記憶—』
『アウグストゥス-尊厳ある者-』


・・・







美味しい英国料理を楽しみに待っております!