宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ

宝塚を「好き」という気持ちを因数分解してみたい、という思いで綴っています

梅川に夢白!八右衛門は凪七!実はこれ実話って知ってた?『心中恋の大和路』





主な配役

亀屋忠兵衛  和希 そら

梅川  夢白 あや

丹波屋八右衛門  凪七 瑠海





主な配役

ブルーム 彩風 咲奈

セレネ 朝月 希和

アポロン 朝美 絢


縣は『ODYSSEY(オデッセイ)』組か。「この世にただ一つ」は、八右衛門役の凪七 瑠海さんが歌うのでしょうね。



ところで、『心中、恋の大和路』は、実はほぼ実話です。


『心中、恋の大和路』の原作は、近松門左衛門作『冥途の飛脚』。色街発、冥途行の飛脚。タイトルからしてブンガク的。



これは宝永年間 (1704~1711) に実際に起きた、飛脚屋亀屋忠兵衛の為替金横領事件を脚色したもの。




浄瑠璃。世話物。三巻。近松門左衛門作。正徳元年(一七一一)頃、大坂竹本座初演。


大坂の飛脚問屋亀屋の養子忠兵衛は遊女梅川になじみ、金に困っていることを友人八右衛門に暴露されて逆上、公金三百両に手をつけて、梅川とともに郷里新口(にのくち)村に逃げ、実父に別れを告げるが、捕らえられる。近松の代表作の一つ。


八右衛門を敵役にした改作がしばしば上演される。


宝塚版『心中・恋の大和路』は、ストーリー、人物設定など、近松門左衛門の原作をもとにしています。


大きな違いは、原作では、忠兵衛は親の目の前で、あっけなく捕まり、

身に罪あれば覚悟の上


殺さるるは是非もなし。


御回向頼み奉る


親の嘆(なげき)が目にかかり、


未来の障(さはり)これ一つ、


面(つら)を包んで下されお情けなり。


「せめて、目隠ししてください!」


目隠ししたいのは、親のほうだよ・・・




当然のことながら、忠兵衛は大阪千日前の刑場で処刑されます。


梅川は、近江矢橋の十王堂で、忠兵衛の菩提を弔いつつ懺悔の日々を50年余り送ったとも、


・・・遊郭に戻って「二度の勤め」を強いられた、とも伝えられています。



意外なことに、近松門左衛門の原作そのままの台本は、近松の没後なんと戦後まで上演されず、別の作者による改作版がもっぱら上演され続けました。





原作では忠兵衛の友人である八右衛門を敵役とし、忠兵衛が実父孫右衛門に別れを告げる「新口村」を雪景色に仕立てた点が特色で、


また封印を切るところは、たいてい八右衛門と争うはずみに誤って切るという段取りで演じられる。


改作版では、忠兵衛には親の決めた許嫁がいて板挟みだし、


封印を切るところは八右衛門に


「お前みたいな大和の百姓出に、身請けの金なんて払えるもんか。梅川は俺のもんだ、この田舎者!貧乏人!」


と罵られて、カッとなって喧嘩するはずみに誤って封印が切れたことになっています。


切ると切れたでは大違いですが、江戸時代では主役は「白い、いい人」で、基本悪いことをしない。


悪いことをするなら、悪い奴に陥れられた設定でなきゃだめ。客にウケない、みたいな考えが主流だったそうで。


宝塚でも、『ベルサイユのばら』上演前に「宝塚で王妃様が不倫する話なんて」、


『心中、恋の大和路』上演前も「会社の金を横領して、ホステスと逃げて雪山で凍死するクズ男の役を贔屓がやるなんて」



【恋する歌舞伎】第8回「恋飛脚大和往来 封印切(こいびきゃくやまとおうらい ふういんきり)」


という声もあったそうで。いわんや江戸時代をや。



歌舞伎の現行上演では、ラストは逃げるふたりを孫右衛門さんが見送るところで幕、になる演出が多いそうです。