宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ

宝塚を「好き」という気持ちを因数分解してみたい、という思いで綴っています

ストーリーが盗まれてるよ!『めぐり会いは再び next generation-真夜中の依頼人(ミッドナイト・ガールフレンド)-』感想



えーっと、本日のライビュ専科は辛口ですので、ご承知おきください。(予告)





王都マルクト。オルゴン伯爵の次男ルーチェ・ド・オルゴンは、大学卒業後も定職に就かず、友人レグルスが立ち上げた弱小探偵事務所の手伝いをして暮らしていた。


ガールフレンドのアンジェリークとの関係も順調とは言えず、アンジェリークには実家から縁談の話も舞い込む始末。


そんなある日、事務所に奇妙な依頼人が現れ、王家に代々伝わる秘宝“一角獣の聖杯”を守って欲しいと頼まれる。


捜査に乗り出したルーチェは、いつしか王都を揺るがす争いに巻き込まれて行くこととなる。


果たしてルーチェは“一角獣の聖杯”とアンジェリークの愛を手に入れ、さらには王都に平和を取り戻すことが出来るのか!?





星組公演『めぐり会いは再び next generation-真夜中の依頼人-』『Gran Cantante!!』初日舞台映像



星組公演『めぐり会いは再び next generation-真夜中の依頼人-』『Gran Cantante!!』初日舞台映像(ロング)


ヅカファンならほぼ先の読める話だが・・・


まだ東京公演前ですし、公演中止により観劇できず、月曜日の宝塚大劇場千秋楽の配信も視聴できなかった方も大勢いらっしゃると思うので、ネタバレは避けての感想です。


このお話、SNSでよく、


2011年に柚希礼音を中心とした星組で上演された『めぐり会いは再び』と、その翌年に上演された『めぐり会いは再び 2nd ~Star Bride~』を予習していないとわかりにくいかも。


と言われていますが、


この『めぐり会いは再び next generation-真夜中の依頼人(ミッドナイト・ガールフレンド)-』のわかりにくさは、


「TVドラマの第1話と第2話を見ずに、いきなり第3話から見てもわかりにくいよね。」


という問題だけでも無いと思います。


管理人は先日第1作と第2作を復習してからライビュを視聴しましたが、やっぱりわかりにくかったですもん。


このお話は公式HPで”架空の王国を舞台に、個性豊かなキャラクター達が繰り広げる、ミステリー仕立てのラブコメディ”と紹介されていて、


宝塚ファンなら、公式HPに掲載されている「あらすじ」と「人物相関図」を見れば、


武庫川コナン?のミステリー部分の犯人も、ラブコメディ部分の展開も、ほぼ予想がつくと思います。


(そして舞台未見の読者のあなた、あなたの予想はたぶん当たっています。)


なのに、


怪盗ダアトは大変なものを盗んでいきました。



ストーリーが盗まれています!


状態。内容がないよう。



お話としては、「導入~花婿選び」と「花婿選び~結末」でアニメ前後編2話分(22分×2話で45分くらい)で終わる先の読める話を、無理やり95分に引き延ばしている感がある。



前半のレグルス(瀬央)が立ち上げた弱小探偵事務所に入り浸っている、大学の同級生のニートたちのわちゃわちゃシーンは、


2000年代に流行った、高校生のユル系部活の部室のとりとめもないおしゃべりを描写した、日常系アニメっぽくて面白い。



なのに、本格的に事件が動き出した後の展開が、事件の時系列や起きるタイミングが緻密に計算されて配置されている感が薄い。


事件というよりハプニングが次々起こって、登場人物が右往左往している間になんだかケリがついた?



ルーチェとアンジェリークの関係も、ルーチェの将来性を巡ってなんだかぎくしゃくしているらしいが、


前2作で彼らの関係が描写されているわけでもなく、本作でも2人のこれまでのすれ違いが具体的に描写されているわけでもなく、いまいち感情移入しずらい。ゆえに、彼らの恋路を応援しにくい。



どうした小柳先生?内容がないよう。




設計図無しに家を建てるのは止めよう



振り返ってみると、当時の私は怖いもの知らずでした(笑)。今回はもう一度初心に立ち返りながらも、また攻めの姿勢で挑みたいと思っています。


ただ、続編をつくらせていただけることになり嬉しい反面、前作までの流れと整合性を取りつつ、初めてご覧になる方に違和感なく観ていただけるストーリーを組み立てるということは、思っていた以上に大変でした。


今回も「書けない劇作家」が出てくるのですが、そのつらさが身に沁みましたね(笑)。


『めぐり会いは再び next generation-真夜中の依頼人(ミッドナイト・ガールフレンド)-』って、


設計図なしで家を建てたような、重心がずれているし、間取りがいびつな「変な家」みたいなんですよ。





これは私の印象論ですが、劇作家にもいろいろなタイプがいると思います。


上田久美子=詰将棋系


上田さんはオリジナル作品メイン。音楽で言うと作曲家気質で、メロディや和音を一から立体パズルを組み立てるように緻密に構築して、オリジナルのメロディを生み出す。


結末に向けての場面割の工程表をきっちり決めてから、各場面をみっちり書き込んでいく。


小柳奈穂子=コミケの同人系


小柳さんは原作ありの潤色メイン。音楽でいうと編曲家、アレンジャー気質。
   
原作の名場面をより抜いて繋げるDJ的センス、


同人作家的な、「キャラ」を立てて、キャラ同士の関係性の「萌え」シチュエーションを繋いでいく手法でストーリーを作っていく。


小柳先生、『めぐり会いは再び』の時は、マリヴォーの「愛と偶然の戯れ」という元ネタの設計図があったので、「古典の「愛と偶然の戯れ」の同人」の手法でストーリーを構築したのでしょうが、


「自分が過去に書いたネタの続編を、何でも自由に好きに書いてもいいよ」と言われると、元ネタの設計図が無くて、かえって困ってしまったのでは。



同人の世界には


「他人が描いた作品からしか摂れない栄養素がある」


という格言?があって、


同人作家は、他人の作品から自分に無い栄養素を摂取して、2次創作のエネルギーを得るのです。


小柳先生は自分が書いた過去作について、10年もたってセルフ同人をしても、自分の書いたものには自分に無い養分は無いので、2次創作しずらかったのでしょうか。