宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ

宝塚を「好き」という気持ちを因数分解してみたい、という思いで綴っています

『宝塚を出ても食えない』を変えたい


もしも娘が宝塚音楽学校を受験したいと言い出したら


先日、宝塚音楽学校の競争倍率が、今世紀最小の17.4倍になったというニュースがありました。



少子化、コロナの影響、いろいろあるのでしょうが、


もしも私に娘がいて、宝塚音楽学校の受験を希望したら・・・


うーん。もろ手を挙げて応援しづらい。


うちは経済的には全く裕福でないし、


対岸の岡山に宝塚受験スクールがあり、瀬戸大橋を渡って通わせることも不可能ではないのですが、


「宝塚を出ても、ほとんどの場合、芸の道では食えないよね。元トップさんでも、ミュージカルの主役を張り続けることは至難のわざだし、元トップでない方はアンサンブルに食い込むのも大変だし、それで年収数百万をコンスタントに稼げるのか?」


という、身もふたもない現実を教えないといけない。


それは宝塚音楽学校~宝塚歌劇団の話だけでなく、高度な音楽教育を行う音楽大学も事情は同じようで、


私立の音楽大学でも、不人気による定員減、募集停止が相次いでいるそうです。


音楽大学で、生徒の進路指導をしている方のインタビュー記事があったのですが、




音楽大学はもともと企業就職が少なく、演奏活動や音楽教室の講師をしながら、今では“ほぼ絶滅”した「家事手伝い」として卒業後数年を過ごし、結婚して家庭に入るのが一般的でした。


実家が裕福であることが前提で、一般大学のように自立を促す方向で企業就職に力を入れて指導することがなかったのです。


多くの音大では、女性が活躍する社会となる中で、旧態依然のまま時代の変化に背を向けてきたのです。



自立するには何も企業就職ばかりではなく、音楽家や音楽教育家、音楽関連ビジネスで生きる道もあるはずです。


それに必要な経営学や起業論、会計などのカリキュラムが加わることはなく、演奏教育ばかりが重視されてきました。


子供の頃から1万時間以上をひたすら音楽のレッスンに費やして、高い学費を出して音楽大学で高度な技術を身に着けても、ショパンピアノコンクールのファイナリストとかのレベルでなければ、クラシック音楽だけでは食えない。


1日1万円のバイトのような演奏機会の枠を取り合い、バイトに明け暮れ、気が付けば30代、やっぱり音楽では食えていない例が多数とのこと。


日本って、欧米のように田舎の県庁所在地クラスの街にもオペラ座と付属オーケストラ、合唱団、バレエ団があって、芸術家は公務員で、市民が夜ごと芸術鑑賞に通うような環境でも無いですしね。


昭和から平成前期くらいまでは、「宝塚は花嫁学校」なんて言う人がいたのを覚えています。実際、そうだったのでしょう。


今は、宝塚卒業後すぐにご結婚の知らせを聞く「寿退団」ってレアになりましたね。


宝塚退団後、宝塚で習ったスキルは一般企業でも生かせるのでは


宝塚を退団された元ジェンヌの多くが「宝塚で養った音楽やダンスや演技のスキルを活かした仕事をしたい」


という希望を持っても、芸能界は熾烈なイス取り競争に神経をすりへらす日々。



私が個人的に思うのは、


「宝塚退団後に、歌やダンスと直接関係ない道に進むのは、負けでも逃げでもないし、


宝塚で養ったスキルは、一般企業の会社員として働く際にも、大いに役立つスキルなのではないか?」


この記事を読んで私が思いついたのは、ストリートピアノパフォーマンスの模様を収録したYouTube動画が大人気となり、TV出演、ピアニストとして異例の武道館コンサートまで開催したハラミちゃん。



ストリートピアニストハラミちゃんと、元宝塚星乃さんのコラボ

【驚愕コラボ】元・宝塚女優がストリートピアノで本気で「夜に駆ける」歌ったら、現場がヤバいことになったwwwww


ハラミちゃんは、子供の頃からピアノの猛レッスンを重ね、音楽大学に進学するも、正直リストやショパンクラスの才能は無いと悟り、一般企業に就職。


業績をあげるも体を壊し、気分転換のためストリートピアノを演奏し、その動画をUPするようになりました。


厳格なクラシックの先生は「クラシック演奏家はショパンやリストを完璧に弾いてこそ。歌謡曲やアニソンの超絶技巧アレンジで子供にウケるなんて邪道」


という主義の方も多いそうですが、


ハラミちゃんが演奏するのは駅や広場のストリートピアノ、勝負を挑むのはクラシックファンどころか「通りすがり」の人。


そんな「高尚なクラシック演奏会」とは全く違う場所で、ハラミちゃんはちびっこや会社帰りの会社員、お買い物帰りの主婦を立ち止まらせ、聞き入らせ、


「カッコイイ!僕もピアノでアニソン弾きたい」


「大人のピアノ教室に通って、若いころ好きだったJポップをカッコよく弾きたい」


というファンを増やし、音大卒のピアニストがやっている音楽教室に客を呼んで、ピアノ業界への経済効果まで生んでいる。


この流れも、大学まで徹底的に学んだピアノスキルと、ピアノレッスンで身に着けたスキルを一般企業で生かして取得したビジネスセンスと、両方身に着けたハラミちゃんならではのプランニングではないでしょうか。




Q.会社にお勤めの中では、ピアノが役に立ったことなどはありますか?



ハラミちゃん

めちゃくちゃ役立ちましたね(笑)。ピアノっていうより音大ですけど、そもそも一般企業に音大卒の人ってなかなかいないじゃないですか。能力の前にまず目立つし、強烈なアイデンティティになる。


特に役立ったのは、「目標から逆算する力」。幼いころから続けていたピアノのレッスンのおかげで染み付いているんでしょうね。


「次回のレッスンには絶対ここまで仕上げてきてね」と先生に言われたら、「曲を仕上げるためには1週間どういう動きをしなきゃいけないのか」ということを自分で組み立てるんです。


ちなみに、100%のパフォーマンスでは怒る先生だったので、自分のなかでは120%に設定していました(笑)。それで、「じゃあ何曜日までに何パーセントだな」という具合に、どんな練習をしないといけないのかを箇条書きで紙に書き出していました。


この力ってまさに一般企業でも必要ですよね。例えば、売上を何パーセント伸ばしたい、という目標に対して、じゃあまず何をすべきか、そして課題は何か、それに対してどういう条件が揃えば叶うか、など。


「ピアノ」の部分が「仕事」に置き換わっただけの感覚でした。逆算をしてものごとを進めることには慣れていたので、業務への理解も早まった気がします。


あとは、マルチタスク。これもピアノの演奏に通じる気がします。ピアノを弾くとき、脳内ではとんでもない量の処理を同時にしていますよね。次の音はどんな音か、腕の力の抜き方、音の強弱など、いろんなことを瞬時に判断しています。


仕事でも、山ほどある「やらなければならないこと」に、体が自然と反応していましたね。「この、脳みそゴリゴリ使う感じがピアノと似てる〜」って思いながらやっていました(笑)。


宝塚の舞台って、本読みしながら参考資料も調べて作品の世界観を構築し、演じる人物像についてわずかな描写からプロファイリングし、セリフを交わす相手役とテンポや間合いを細かく調整し、舞台全体のなかでの役の存在のバランスを考慮し、


楽曲の歌唱の効果的な表現、ダンスなどの動きの段取り、早変わりの工夫、上級生として下級生への指導法を考え・・・


すさまじいマルチタスク。



宝塚で習うことって、「芸能界以外では潰しが効かない」どころではなく、一般企業でも大いに生かせるスキルなのでは。



劇団には、ジェンヌさんが在団中あるいは退団直後に、


たとえば「あなたが退団後、芸の道以外で向いていそうな業種は何か?あなたの強みは何で、外部でどうPRするべきか」とカウンセリングしたり、


「教室を運営したい」と思う方には、税金のことや経営学や起業論、会計などを安く学べるカリキュラムを案内、提供できるような制度はあるのかなあ。


ジェンヌたちは阪急・阪神HDの企業イメージUPのために多大な貢献をしているのですから、


阪急・阪神HDの持つビジネススキルを、ジェンヌにも提供して、



ジェンヌさんに、宝塚退団後、芸事に進むにしても、芸以外の道に行くにしても、「宝塚で習って、よかった。」と思ってほしいです。