うたかたの恋への前奏曲『巡礼の年~リスト・フェレンツ、魂の彷徨』
生田先生は95分でどこまで詰め込む気だ問題
いよいよ、花組『巡礼の年~リスト・フェレンツ、魂の彷徨』初日ですね。
宝塚ファンの注目は、なんといっても2番手羽問題!
まあ、管理人は、羽の大きさもなのですが、
お芝居の担当の生田先生のインタビューが、退団後の上田久美子さんが、インタビューで語っている高尚で難解な内容と被っているのが・・・
生田先生のリストが、上田久美子さんの”fff”の伝説の迷シーン?
ロシアの荒野の精神世界で、ベートーベンとセントヘレナのナポレオンが語り合う、例のあのタタタタンみたいなことになりそうで、
不安だ。
本文より珈琲大好き 生田大和の“豆”知識”のほうが分量&熱量が多いリスト解説。ベートーベンもコーヒー好きだったね(笑)
生田先生、リストが生きた時代背景を大いに語る。
同時期に活躍したピアニスト、ショパンも物語の重要人物ですね。
リストとショパンの関係性は、とても重要なファクターです。たとえば、現代で言うヨーロッパ中に波及し“諸国民の春”と呼ばれる1848年の革命を軸とした3年間は、リストの人生において重大な意味があります。
1847年の表舞台からの事実上の引退、1848年から始まった革命による既存の価値観の崩壊、そして1849年のショパンとの別れです。これら一連の出来事に、因縁めいたものを感じたことも、創作の源になりました。
リストの長年のライバルであり、その背中を追ってきたショパンが自分の人生から去った時、リストは自身と向き合い、新しい人生の価値を見出さなくてはならなくなったのです。
私自身、この2年、変容した社会を生きてきた中で、どんなアプローチでお客様にお伝えするのがよいのか、かつてないほどの葛藤を抱えています。
宝塚歌劇だからこそ表現できる世界観を大切にしたい一方で、現実世界で起こっていることの厳しさを思うと、美しいだけで終わらせることは、今を生きる一人の創作者として自分に嘘をついていることになりはしないか…
などと、私もまたリストと同じく、相反するテーマを突き付けられているわけです(笑)。
柴田先生は、ハプスブルク家の皇太子が未成年を射殺し、自分の頭を撃ちぬいて死んだ話を”儚くも美しいうたかたの恋”として表現しましたが、
上田久美子さんや生田大和先生の世代になると、「美しい嘘」だけをお客様に提示することへのジレンマを、観客に対して正直に語る時代なのですね。
つまり、『巡礼の年~リスト・フェレンツ、魂の彷徨』は、
パリピなイケメンピアニストが伯爵夫人と泥沼不倫する話
だけで終わらせず、
彼らが生きた激動のヨーロッパ社会の、歴史の精神を解き明かす!
みたいな難解な話になるのでしょうか。
95分で収まる話なのかなあ・・・
本作のキーワード“諸国民の春”に至る流れ
1848年2月22日から24日にかけて、パリを中心とする民衆運動と、議会内の反対派の運動によって、ルイ・フィリップの王政が倒れ、共和政が成立した革命をさす。
この革命は単にフランスのみならず、オーストリア、プロイセン、イタリアなど西ヨーロッパの諸民族にも大きな影響を与え、さまざまの政治的変動を生み出したものとして記憶される。
「ベルサイユのばら」は、オスカルやアンドレがバスチーユで倒れ、マリーアントワネットがギロチンの露と消えるところで終わります。
その後のフランスの歴史は、「行き過ぎ」と「揺り戻し」をいったりきたり。
・革命の理想は、ロベスピエールのマダム・ギロチンに怯える恐怖政治になる(行き過ぎ)
雪組公演『ひかりふる路(みち) 〜革命家、マクシミリアン・ロベスピエール〜』 『SUPER VOYAGER!』制作発表会 ダイジェスト
・ナポレオンが出てきて市民の代表だ!と思ったら皇帝になる(揺り戻し)
・ナポレオンがロシア遠征に失敗して、精神世界のロシアの平原でベートーヴェンと長々と語り合うはめになる(行き過ぎ)
【公式】<サンプルムービー>STAGE Pick Up from 『f f f -フォルティッシッシモ-』
このあたりまでは宝塚の舞台でおなじみですが、その後のフランスはというと、
ルイ18世(ルイ16世の弟)とか、シャルル10世(やっぱりルイ16世の弟)とかが即位し、産業革命で儲けた社会の上層部が政治を牛耳るようになります(揺り戻し)
労働者階級からしたら、せっかくバスティーユに白旗を上げさせ、ナポレオン閣下のもとフランスのために戦ったのに、またルイナントカ王と金持ちに支配されている。
ということで、揺り戻しに対する反動で、革命のターンになります。
1830年、七月革命。
1848年、二月革命。
自由主義(われらに自由を!)、
ナショナリズム(フランスばんざい!)
この精神はヨーロッパ中に波及し、1830年にはロシア支配下のポーランドで11月蜂起がおきるが弾圧され、ショパンは「ピアノで哀しみを訴える」としてエチュード「革命」を発表。
ショパン: 革命のエチュード[ナクソス・クラシック・キュレーション #カッコイイ]
1848年、ハンガリーでコッシュート(ドナウ連邦の提唱者)が民族独立運動を行うも、オーストリアとロシアの軍に鎮圧される。
その後も、ハンガリーに独立を!古い帝政を廃し、新しいドナウ連邦を!の運動は続き、エリザベートとルドルフの話に繋がるのです。
有名な「ハンガリー狂詩曲 第2番」は、リストが放浪の人生を送りながらも祖国として誇りに思っていたハンガリーの民族的叙事詩を音楽化したもので、彼の強い愛国心が結実した曲と言われています。
リスト: ハンガリー狂詩曲 第2番[ナクソス・クラシック・キュレーション #カッコイイ]