宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ

宝塚を「好き」という気持ちを因数分解してみたい、という思いで綴っています

ダークサイドに堕ちたシシィ「バイオーム」感想



公式あらすじ

その家の男の子・ルイはいつも夜の庭に抜け出し、大きなクロマツの下で待っていた。フクロウの声を聴くために…。


男の子ルイの父・学に家族を顧みるいとまはなく、心のバランスを欠いた母・怜子は怪しげなセラピスト・ともえに逃避して、息子の問題行動の

奥深くにある何かには気づかない。


政治家一族の家長としてルイを抑圧する祖父・克人、いわくありげな老家政婦・ふき、その息子の庭師・野口。


力を持つことに腐心する人間たちの様々な思惑がうずまく庭で、古いクロマツの樹下に、ルイは聴く。悩み続ける人間たちの恐ろしい声と、それを

見下ろす木々や鳥の、もう一つの話し声を…。




『バイオーム』舞台映像ダイジェスト



もしも東海テレビの昼メロ制作チームが「エリザベート」を演出したら


ネタバレ感想です。









お話としては、代々大臣を輩出する「やんごとなき一族」の内実の話で、


祖父は、現代の女性の意識の変化とか、発達障害の問題とかに全く疎い、いかにも昭和の代議士のセンセイ。


ママ(代議士の一人娘)怜子と、婿養子となって選挙区のカンバンを継承した元官僚のパパ・学は、政略結婚で心が通い合っていない。


心のバランスを欠き、怪しげなセラピスト・ともえに逃避して、息子の問題行動から目をそらす母怜子を花總まりが演じているので、ダークサイドに堕ちたシシィみたい。



その家の男の子・ルイはいつも夜の庭に抜け出し、大きなクロマツの下でフクロウの声を聴いている。


ルイ:ママ、どこなの、聞こえてるの、寒いんだ、抱きしめてよ。


クロマツ:ママには聞こえない。


ルイ:だれ?


クロマツ:友達よ。


みたい。


医学的には、施設に入所しての療育を検討される状態。



父・学:ルイには政治家を継がせられない。あの子は施設に入れて、次の子供を作ろう。


母・怜子:いやよ。あんた浮気してるんでしょ。不潔だわ!



普段、お昼にとんかつを食べた後で見たら胃もたれしそうなドロドロ昼メロ(「たわしコロッケ」とがが出てくるあれ)を書いている脚本家が、「エリザベート」を昼メロ化したらこうなりそうな話でした。




【60秒予告】<やんごとなき一族>4月21日(木)夜10時スタート!



そんな、今のTVドラマの放送コードでは引っかかりそうな表現だらけ(障害を持つ息子をどうしても愛せない母の描写など)の、ニンゲンの獣性むき出しのドロドロした昭和の昼メロに、意識高い系のツッコミを入れるのが、お屋敷の庭の木々。



きれいはきたない きたないはきれい。


このうえなくきれいな人に、このうえなく下品なセリフを言わせ、


このうえなくえげつない物語に、上田久美子流の言の葉の錬金術に満ちた木々のツッコミが入ることで、


泥沼から、蓮の花が咲くのを見るような、


ドロドロに腐った何かが溜まった樽から、杜氏の手で澄んだ酒が醸されるのを見るような、


ウエクミ作品観劇後のあのカタルシスは健在でした。


ただ、昼メロとか週刊誌の黒い履歴書とかが苦手な方には、オススメは・・・



※アーカイブ視聴期間は、6月14日(火)23:59までご観劇いただけます。