宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ

宝塚を「好き」という気持ちを因数分解してみたい、という思いで綴っています

美しき異形 縣の歌唱力によりオデッセイの完成度が…




『ODYSSEY(オデッセイ)-The Age of Discovery-』千秋楽まで完走、おめでとうございます。


管理人は、映画館でのライブビューイングで視聴いたしました。


管理人は、ショーの感想を書くのが苦手です💦


物事の認識の特性が、文字にした文章を読んで理解するのは好きなのですが、聴覚や視覚から得た情報を処理するのが苦手なのです。


これがお芝居なら、言語情報と親和性があるコンテンツなので、舞台から得られる情報を自分の中で言語化して咀嚼することで、なんとかついていけるのですが、


宝塚のショーは、視覚と聴覚に流れ込んでくる圧倒的な美の情報量について、処理が全く追いつきません。


『ODYSSEY(オデッセイ)-The Age of Discovery-』は、2幕ともショーなので、


「うわー!キレイ!」


「ひゃあ!カッコイイ」



と思っている間に終わりました。




以上。




・・・



「語るように歌い、歌うように踊る」


『ODYSSEY(オデッセイ)-The Age of Discovery-』のライブビューイングを視聴しておりますと、


普段の宝塚のショーは、55分で80人もの出演者が目まぐるしく出入りし、カメラの切り替えがあっちこっちと目まぐるしくて、映像で見ていると誰がどこで踊って、フォーメーションがどうなっているのかよくわかりません。


今回のショーは、それぞれの場面を普段のショーよりはゆったりと時間をとっており、生徒の人数も少なめです。


カメラの切り替えもそれほど頻繁でなく、各生徒のダンスをじっくり映してくれるので、生徒のダンスの個性の違いが見えて興味深かったです。


宝塚のショーって、歌やダンスの演劇性が強いですよね。


今回のショーでは「カルメン」「シェラザードっぽい金の奴隷のシーン」「ジェラール・フィリップの生涯」など、


「語るように歌い、歌うように踊る」ことが求められるシーンが多く、


同じ音楽で同じ振りを踊っていても、生徒により音楽と振りの合わせ方の微妙な解釈、


音楽言語から肉体言語への「翻訳」の仕方のニュアンスが違うものだなあ、ということを感じました。



ちなみに、フランス映画の3大美男を評して


1940年代の美はジャン・マレー(感性の美)


1950年代の美はジェラール・フィリップ(知性の美)


1960年代の美はアラン・ドロン(野心の美)


と言われていたそうです。


雪組で例えると、


彩風咲奈の美は、知性の美


朝美 絢の美は、野心の美


縣千の美は、感性の美


おお、ぴったり。



彩風咲奈のダンスは、数学みを感じる、幾何学的で、振りから振りへの運動に最短距離をパッと行く、エネルギーの燃費ロスを最小にする知性。


朝美 絢は、長身ダンサーの多い雪組で、自己の輝かせ方を野心的に徹底的に追求していて、


縣は・・・


「カルメン」の音楽言語の身体表現への翻訳の感性は、文系というか作品の世界観や雰囲気を深く理解した、流麗で魅力的な表現なのに、


音楽言語の歌唱表現となると、なぜこんなにガタガタ、ギャタギャタなの・・・


『ODYSSEY(オデッセイ)-The Age of Discovery-』の世界、縣の歌唱力がせめて並レベルなら、もっと完璧で魅力的なものに・・・


待てよ・・・


縣は、ものすごく音を外す、何を歌おうとしているか不明、レベルのあちゃーでは無いのですが、


妙に耳にひっかかる声、鋭き竹の根の繊毛が震えるようなビブラートが、歌唱に楽譜が意図する以上のいらぬ切迫感・悲壮感を与えるんですよね。


「カルメン」の刺されても死ななそうな、はち切れそうな生命力を謳歌する肉体から発せられる、体格が貧弱で貧血ぎみの、虚弱で神経質な子供のようなか細い「ハバネラ」のアンバランス。


36歳で夭折したフランス俳優「ジェラール・フィリップ」の死に魅入られた生き様を、物語り、歌う縣の切迫感・悲壮感。


見た後で思い出すと、野口先生のディズニー的な、つるんとキレイに統一された世界観に、縣千という、歌唱力とそれ以外が凸凹している美しき異形が加わることで、


綺麗!きれい!キレイ!で流れていく中に強力な句読点が打たれ、ある意味観客の胸にひっかかる作品になったの・・・かも。






ジェラール・フィリップ最後の出演作『危険な関係』公式予告編


(『仮面のロマネスク』と原作は同じ。ジェラール・フィリップはヴァルモン役)

映画『危険な関係』4Kデジタル・リマスター版 予告編



Wikiによると、


ジェラール・フィリップ(Gérard Philipe, 1922年12月4日 - 1959年11月25日、本名はGérard Albert Philip)は、フランスの俳優。愛称はファンファン(Fanfan)。また、フランスのジェームズ・ディーンとも呼ばれている。


カンヌ出身。1940年代後半から1950年代のフランス映画界で、二枚目スターとして活躍、1950年代のフランスの美としてその人気を不動のものとした。