宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ

宝塚を「好き」という気持ちを因数分解してみたい、という思いで綴っています

ブラック・ジャックの初恋の人は男になった?






月組全国ツアー公演『ブラック・ジャック危険な賭け』一部の配役決定!





主な配役
ブラック・ジャック 月城 かなと
アイリス/如月 恵 海乃 美月


海乃 美月さん、掲載サイズは小さめですが、このヘアスタイル、ディジーやおてんば姫よりも、キャリアウーマンっぽさが似合っていて、ステキ。


さて、彼女の役どころは?


1994年に上演された映像の、スカステでのストーリー解説によると、





英国情報部の依頼で某国女王の命を助けたブラック・ジャック(安寿)は、代金受け取りのためにヒースロー空港に到着する。


そこで発作を起こし倒れた男性に応急処置を施す。


その後、情報部を訪れたブラック・ジャックは、昔の恋人恵(森奈)にそっくりなアイリス中尉(森奈・二役)と出会う。


ブラック・ジャックを追って来たアイリス中尉は、元恋人の手術を依頼する。


その恋人ケイン(真矢)は元情報部員だったが、今は国際情勢の分析に優れていると評判のブックメーカー(賭け屋)だった。


彼の頭の中には、アイリスをかばって受けた銃弾の一部が残ったままになってた。


ブラック・ジャックがケインに会いに行くと、空港で応急処置をした男性だった。



このとおり、海乃 美月さん演じるアイリスさんは、イギリス情報部の中尉の女性。




さて、ここで問題です。


「如月 恵」の読み方は?



「きさらぎ めぐみ」?



「きさらぎ けい」?


どっち?






如月恵

船医。かつてブラック・ジャックと同じ医局に勤めていた女性医師。ブラック・ジャックとは相思相愛の関係だったが、子宮がんを患い、ブラック・ジャックの手術を受けた。


かつては「如月めぐみ」と名乗っていたが、船医になってからは男装をし、「如月恵(けい)」と名乗っている。


「如月めぐみ」さんは、かつてブラック・ジャックが研修医だった頃、同じ医局にいた女性。B・Jの初恋の人。


子宮ガンになり、ブラック・ジャックの手術により子宮を摘出し、一命をとりとめる。


手術を受けてからは、「私は女性ではなくなったから」と言って男性として振舞い、船医の仕事をしている人です。


始めてこのエピソードを読んだ時は、


「子宮を摘出して、女性特有の身体機能を失うこと」


と、


「女性の身体ではなくなるから、これからは女性「如月めぐみ」から、男性「如月恵(けい)」になる」


ってずいぶん飛躍していないか?


と思ったのを覚えています。


手塚治虫先生は医師免許を持っていた方ですが、原作が連載されていたのは、1970年代。


同性愛は、アメリカでは1973年にアメリカ精神医学会の『精神障害の診断と統計マニュアル』から取り除かれるまで「精神疾患であり、治療の対象」とされていた時代がありました。


日本でも、同性愛や性同一性障害への一般の理解が深まったのは1990年代以降だったと思うので、


「子宮を摘出してしまったら、女性じゃなくなるから、男性として生きる」


という発想は、原作の時代性を反映した設定なのか?



と思っていたのですが、


最近はLGBTに加えてQ


Questioning(クエスチョニング)またはQueer(クイア):性的指向や性自認が定まっていない人


という、自らの性のあり方について、特定の枠に属さない人、わからない人もいる、という認識が広まってきております。




とすると、「如月恵」さんの


「子宮を摘出したことをきっかけに、これからは性自認を男性ということにして生きていこう」


という決断も、その人の選択として全く不思議ではないことだったのだと、最近気づきました。


手塚治虫先生の、人間を見る眼の、時代の制限にとらわれない鋭さに、改めて敬服しました。