100万回”綺麗なおばかさん”と言わされた鮎ゆうき
鮎ゆうき、『きれいなおばかさん』のセリフを100万回ダメ出しされる。
杜は「宝塚っていいな。私の想像をはるかに超えてました」としみじみ。
1番の思い出は、演出の小池修一郎氏の指導だという鮎は「先生が1番時間をかけたのが『きれいなおばかさん』のせりふ。
本当に100万回ぐらいやった記憶があります」と振り返った。
なるほど。小池修一郎にとっての、『グレート・ギャッビー』の最重要キーワードは
『きれいなおばかさん』
だったのですね。
鮎ゆうきさんは、1985年に宝塚歌劇団に入団した71期生、元宝塚歌劇団雪組トップ娘役。
1991年12月26日、『華麗なるギャツビー/ラバーズ・コンチェルト』東京公演千秋楽を最後に退団。以後はTVドラマなどに出演し、俳優神保悟志さんの奥様でいらっしゃいます。
私は、杜けあきさんがギャッビー、鮎ゆうきさんがディジーを演じた「グレート・ギャッビー」初演を、映像でも見たことがありません。
ネットで検索すると、鮎ゆうきさんがディジーを演じた際のスチール写真を見ることができました。
・・・美しい。
氷のように透き通って滑らかな肌。芍薬の花のような、超俗的に並外れた立ち姿。
台風の目のように、ハイパーアクティブな「美」
正直、今回の月組での上演では、ピンとこなかったんですよ。
なぜギャッビーは、ディジーにそこまで執着するのか。
鮎ゆうきさんのディジーの「美」は、ルーブル美術館の巨匠の手による絵画のように雄弁でした。
ディジーが笑ってくれるなら、ギャッビーは悪にでもなるわ。
海乃美月ディジー 演技100%のトロフィーワイフ?
『きれいなおばかさん』のくだりのセリフは、原作では、
相思相愛だったギャッビーとの関係を「あの男性はお前のような上流階級の娘にはふさわしくない」と引き離され、その後大金持ちのトムと結婚。
娘を出産した時、夫はいつもどおり「どこかへ行っていた」。
さみしい産室で出産した直後のディジーの言葉です。
すぐに看護婦に尋ねたの。生まれたのは男の子か女の子かって。
女の子だとわかったとき、私は顔を背けて泣いた。
『いいわ』と私は言った。
『女の子で嬉しいわ。馬鹿な女の子に育ってくれるといいんだけど。それが何より。
きれいで、頭の弱い娘になることが。』
『だからね、要するに世の中なんてすべて、ひどいことだらけなのよ。
みんなそう思っている。とても進んだ考え方をする人たちだって、そう考えている。
でも私の場合は考えるんじゃなく、ただそれがわかるのよ。』
フィッツジェラルドという作者は、自分が体験したことを元にして作品をつむぐタイプでした。
このセリフ、原作者スコット・フィッツジェラルドの妻ディジーが、実際に出産直後に言ったセリフだそうです。
海乃美月さんの『きれいなおばかさん』のせりふは、ディジーがなまじ美人なせいで、金持ち男のトロフィーワイフ扱い(周りからもそう見られている)ことを、深く哀しんでいるニュアンスがすっと伝わりました。
「きれいなおばかさんを、100%演じ続けなければならない」哀しみ
tróphy wìfe
((俗))トロフィー妻:金持ちの男などが自分のステータスを誇示するために迎えた(と思われている)若くて美人の妻.
鮎ゆうきディジー「半分演技、半分は無意識におばかさん」
鮎ゆうきさん演じるディジーが発した『きれいなおばかさん』のせりふ、どんなニュアンスだったのでしょう。
画像の印象だと、鮎ゆうきさん演じるディジーは、性根は派手好き、パーティ大好き、常にちやほやされていないと気がすまない。
自分が『きれいなおばかさん』なのは半分本質、半分演技。
夫の不倫は知りつつも、夫の財力で贅沢できていることを十分理解していて、打算で婚姻関係を継続中。
『きれいなおばかさん』キャラでいることに快楽を感じる自分への自嘲、みたいなニュアンスを感じます。
あー スカステで初演の放送をGETしたい。