ロセッティ、実は絵が下手である疑惑「ベアタ・ベアトリクス」
西洋絵画史に残る巨人、ゴッホ
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「近代絵画の父」セザンヌ
美術の教科書には必ず載っているし、作品がオークションに出れば何十億という値が付く、超偉大な画家です。
が、ゴッホは生前、絵が1枚しか売れず、
セザンヌは、サロン(官展 フランスアカデミーまたは政府によって開催された公式美術展覧会)に落選し続けた。
紅子:なぜ?
管理人:個人的な意見ですが、
たぶん、「絵がヘタ」だったからでは?
紅子:・・・あんた、怖れって知ってる?
管理人:だって、ゴッホのデッサンでは、19世紀フランスの官展どころか、現代の美大にも受からないのじゃないかな?
人物の骨格は、関節のくっつき方がなんだか変だし、
遠近法も狂っているし、
建物のパースは歪んでいて、こんな部屋に住んだら悪酔いしそうだし・・・
紅子:じゃあなんで、こんなに高値で売れるのよ!
管理人:「上手い人」には描けない「何か」が、見るものを震わせるんでしょ。
紅子:何その
「彼らの旅はまだまだ続きますが、この先の物語は読者の想像力にゆだねます」
みたいなオチは!「何か」って何だ!
管理人:「ベアタ・ベアトリクス」を描いたダンテ・ゲイブリエル・ロセッティの絵が、「上手い絵」かどうかは、正直微妙だと思うの。
・上を向くヒロインの、顔と首と胴体のつながりがスムーズじゃない。首が微妙に長くて、存在感がありすぎる。
・上腕に比べて、下腕が妙に長くね?
・背景の遠近法の処理が、いまいち整理されていない。
でも、「凄みのある絵」だとは思う。
紅子:「上手い絵」と「凄みがある絵」の違いは何よ?
管理人:プロとして求められる水準というものはあるし、上手いに越したことはないんだろうけど、
技術的に上手ければ上手いほど、高値がつくわけではないのも、芸術の世界の難しさ。
結局、その絵に、描き手の人生観を通じてでなくては描けない、世界観があるかどうかでは?
世界およびその中で生きている人間に対して、人間のありかたという点からみた統一的な解釈、意義づけ。
知的なものにとどまらず、情意的な評価が加わり、人生観よりも含むものが大きい。
管理人:そもそも「ベアタ・ベアトリクス」は、
「死んだ自分の妻の姿を描いた絵」というよりは、
ルネサンス文学の先駆者で、「神曲」で有名な詩人ダンテの、早逝したベアトリーチェ(恵みを与える女)への精神的愛を、亡き妻の面影をモデルに描いたもの。
紅子:「神曲」ってどんな話?
しんきょく【神曲】
(原題La Divina Commedia 「神の戯曲」の意) 叙事詩。ダンテ作。一三〇七~二一年頃成立。「地獄編」「煉獄編」「天国編」の三編から成る。
ダンテ自身が登場人物となり、地獄の深淵から始まる三界を巡歴し、
ついには恋人ベアトリーチェの導きによって天国にはいることを許され、神の愛の深さをまのあたりに見るにいたるまでの魂の浄化を描く。
作者の人生観・宗教観・宇宙観の集大成的作品。
管理人:ルネサンスの詩人ダンテが全1万4233行かけて書いた「罪と、愛と、許し」を、1枚の絵で表現することができたから、「ベアタ・ベアトリクス」は絵画史に残る凄い絵になったのでしょう。
ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティの、画家人生の人生観・宗教観・妻への想いを集大成した「この一作」に、妻の面影を永遠に留めることが、彼なりの妻への贖罪だったのでしょうね。