宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ

宝塚を「好き」という気持ちを因数分解してみたい、という思いで綴っています

花組『鴛鴦歌合戦』原作映画 主演が主役じゃない!





オペレッタ・ジャパネスク

『鴛鴦歌合戦(おしどりうたがっせん)』

~原作 映画「鴛鴦歌合戦」(c)日活株式会社 監督/マキノ正博 脚本/江戸川浩二~

脚本・演出/小柳 奈穂子


1939年公開の『鴛鴦歌合戦』は、“日本映画の父”牧野省三の息子にしてプログラムピクチャーの名手、マキノ正博監督による、片岡千恵蔵主演のオペレッタ映画。


長屋住まいの貧乏浪人と隣家の娘の恋騒ぎを、軽快なジャズに乗せて描いた娯楽作品です。


原作では浪人、浅井礼三郎と町娘のお春の関係に、骨董狂いの殿様、峰沢丹波守を巻き込んでの恋の鞘当てであった物語に、今回の舞台化ではお家騒動の顛末を加え、スケールアップしたミュージカル作品としてお届けします。


花組オールスターキャストで挑む、日本映画史にその名を刻む傑作オペレッタ喜劇の初の舞台化にどうぞご期待ください。


1939年公開の原作映画『鴛鴦歌合戦』を、アマゾンプライムで視聴しました。



貧乏浪人・浅井礼三郎は、長屋の隣家の娘・お春と恋仲だった。


だが、礼三郎に想いを寄せる娘が他にも二人。


そのおとみと藤尾はどちらもゆずらず、歌合戦にこと寄せて、皆が集まれば喧嘩が絶えない。


ところが峯沢丹波守という陽気な殿様がお春に一目惚れし、お屋敷へ差し出すよう申しつけた。お春の父はそれを断わるが……


主演クレジットは、伝説のチャンバラ時代劇俳優である片岡千恵蔵となっていますが、映画を見て印象に残るのは、なんと、ヒロインのお父さん、志村狂斎役の志村喬。


志村喬さんは戦後、黒澤明監督作品の常連となり、ニューヨークタイムズでも絶賛された、世界に名前を知られた名優です。


映画中では、お米代のやりくりにひいひい言っている貧乏な日傘職人なのに、骨董に目が無い。


娘を溺愛しながらも、現代なら重要文化財指定になりそうな加納探幽の掛け軸とか、源平合戦ゆかりの青葉の笛とか、初音の鼓とかをわんさか買わされている、トホホな骨董オタク父ちゃんっぷりが見ていて楽しい。


志村喬、なんと歌も上手い!


娘の恋敵となる、陽気な殿様(演じるのは、当時の流行歌手であったディックミネ)と、


アメリカのミュージカルとも、ウイーンのオペレッタとも違う、芸者のお座敷小唄を軽快なジャズアレンジにしたような楽曲を歌う歌う!


そりゃあ音楽的には、同時代のブロードウェイの「TOP HAT」のほうがだいぶ洗練されていて、日本の現代の音楽に近いですけれども、


昭和14年の日本で、和製ミュージカルの歴史上「こんな路線もあったかもしれない」というスタイルをすでに確立していて、映画ファンには興味深い掘り出し物だと思います。


柚香さんが貧乏浪人・浅井礼三郎、


星風さんがヒロインお春、


水美さんが峯沢丹波守という陽気な殿様として、


ヒロインの恋敵のおとみ(裕福な商人の娘)と、藤尾(エリート武士の娘)を誰がとるか・・・


原作映画はモノクロですが、ヒロインの家が傘作りをしていて、部屋や庭を埋め尽くすカワイイデザインの日傘が、画面のアクセントになって綺麗でした。