【発表】輝く!宝塚ライビュ専科大賞2022
というわけで、
輝く!?宝塚ライビュ専科大賞2022
発表します!
2位
『今夜、ロマンス劇場で』
冴えない助監督である主人公のところに、大好きな映画から抜け出てきたヒロインがやってきて、つかの間のドタバタ騒ぎ。
それはひと時の夢、ヒロインは映画のスクリーンに戻り、主人公は現実を生きていく・・・のがお決まりなんだけど、
本作はその王道を破り、
ヒロインは映画の世界に戻らず、主人公は年老いて亡くなるまで、触れれば消えるヒロインを守り続ける。
個人的には、話が「開いた話」にならず「閉じた話」になってしまった感があって、ちょっと残念。
美雪とゆかいな仲間たちのお話が、結局主人公の死とともに、永遠に消えてしまった。
主人公には、美雪を抱いて映画に返して、映画は無理でも、アニメでも絵本でも、なんとか彼女のことを「作品」として残すべく奔走してほしかったな・・・
3位
『NEVER SAY GOODBYE』
-ある愛の軌跡-
とにかく、主演の真風涼帆の男役芸が、小池修一郎氏のダンディズムを体現してかっこよかった!
名曲ぞろいの作品で、特にラ・パッショナリアがバルセロナ市民を鼓舞する歌唱が、生命と理想を悲劇的に食い尽くしてしてしまう戦争へのレジスタンス精神、人間賛歌を感じさせて素晴らしかったです。
スペイン内戦について、意識高い系の外国人の目線で語られていて、当事者であるスペイン人側の描写とか、敵役の人物造詣をもう少し書き込んでほしかった感があります。
主人公のカメラマンが、最後にカメラを置き、銃を取るにいたる心理描写、
そばにいるのに、その周囲で起きている苦しみを記録することしかできなかった苦悩に、もう少し肉薄してほしかった。
4位
『蒼穹の昴』
ポスターをはじめ、日本の舞台で、中華王朝の絢爛・華麗・華美・豪華・豪勢をこれだけ表現した、装置、衣装を見られるとは!
そしてその豪奢を上回る「人の思いの熱量」を客席に届けた舞台成果は、素晴らしいものだったと思います。
お話の構造が、マチスモ(男性優位主義)を前提とした男性同士の連帯感が強くて、娘役の組子たちがお話からほとんど疎外されていたのが残念。
5位
『グレート・ギャツビー』
手の届かぬ女性に憧れ、無理しすぎて破滅する、風車に突進するドン・キホーテ的な「小池修一郎のダンディズム」の原点的作品。
原作では、ディジーがもっとひどい女で、ギャッビーの葬式にも来ない。
そのむごさが、アメリカンドリームの闇を読者に突き付けて、忘れえぬ余韻を残すのですが、
本作ではディジーを「ひでえ女」から「上流階級の掟に縛られたかわいそうな女性」寄りに変更した。
宝塚的道徳観に合わせたと、頭ではわかるのですが・・・
ディジーがギャッビーの葬式に来て、墓に花を投げ入れて帰る時の態度が、どうしても
「あんた何しにきたの。そんな態度を取るくらいなら葬式に来るな」
と思ってしまった。
6位
『巡礼の年〜リスト・フェレンツ、魂の彷徨〜』
「芸術家の苦悩」の話と思いきや、ラスト30分でいきなり革命で、ラップで、
「諸国民の、春ね。」
って言われても、お客に対して不親切だと思う。
お客が予習しておかないとついていけない作劇は、大衆演劇として改善してほしいです。
7位
『HiGH&LOW -THE PREQUEL-』
「ヤンキー風俗」と「宝塚レビュー」のマリアージュを実現してしまった野口先生の手腕は凄いと思います。(個人的には、『ジャガービート』のほうがよっぽど、リアルヤンキーの美意識に溢れていると思う。)
個人的に「難病でヒロインが死ぬ話」系は、どうにも苦手なので、ごめんなさい、この順位になってしまった。
8位
『夢介千両みやげ』
個人的に、昭和のころのアチャラカ・チャンバラ・人情時代劇が好きなのと、縣の金さんがかっこよかったです。
チャキチャキして情の厚い、ドキンちゃんみたいなお銀ちゃんは、朝月さんの当たり役と言えるのでは?
が、現代の都会で働く若い女性の美意識からは、だいぶ遠い世界観だよね・・・
9位
『めぐり会いは再び next generation-真夜中の依頼人(ミッドナイト・ガールフレンド)-』
礼さんの成長への感慨や、退団者への餞別など、小柳先生の座付き作家としての宝塚ファン向けの配慮は、ばっちり。
が、宝塚のことを全く知らずに見に来るバスツアーの一見さんにとって、内輪ネタだらけのこの作品を楽しむとっかかりが無さ過ぎないか・・・
1位
『ディミトリ~曙光に散る、紫の花~』
宝塚初心者さんでも、「既存の宝塚ファンに誘われて劇場に行く」方は、事前にお友達から宝塚的世界観やお芝居のストーリーについてレクチャーしてもらえるでしょう。
宝塚観劇バスツアーで「宝塚って初めて。どんなのだろう?ワクワク」とやってくる「本当に宝塚とか作品とかについて予備知識ゼロの方にもわかりやすい、シェイクスピア劇の『オセロー』風味もある、ストレートで普遍的なお話の構造。
シルクロードの豊かな文化を感じさせる、豪奢で個性的な装飾のドレス、異国の響きと懐かしさを感じる旋律の音楽。
「語り手」の存在など、「お客を取り残さず、お話の世界に取りこむ」ための工夫がよく練られていました。
全体に、レベルの高い作品が並んだ1年だったと思います。
もう、上田さんや例のあの方の新作を宝塚の舞台で見ることはほぼかなわなくなってしまうという、演出家の顔ぶれが大きく変わる激動の年となった2022年。
別箱で新進演出家が気を吐く中、2023年は、どんな舞台が見られるか、楽しみです。