宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ

宝塚を「好き」という気持ちを因数分解してみたい、という思いで綴っています

劇場の1列目センターで思い知る


ウクライナの戦火を逃れ、世界中を公演しているキーウ市立キーウ・クラシック・バレエの香川公演を鑑賞しました。(いわゆる「キーウ・バレエ」(ウクライナ国立バレエ)とは別の団体です。)




劇場までの道すがら、前を歩いているご婦人方が


「踊りって、難しいなあ」


「ほんま、練習は大変やで」


と言いながら歩いているので、てっきりバレエ公演を見にいくのかと思ったら、


県民ホールの入場口ではなく、スタジオのほうに向かうのです。


「あれ?」と思って施設の使用予定一覧を見たら、午後から阿波踊り高松連の練習が入っていました。来年の阿波踊りの稽古はもう始まっているのですね。



バレエ公演のプログラムは、チャイコフスキーの3大バレエのハイライトを集めた、ガラ公演的なもの。休憩込みで1時間50分ほどのプログラムでした。



第1部:約20分
「くるみ割り人形より」


クララ:ヴェロニカ・ステパネンコ
王子:ヴラディスラフ・ボンダール


「白鳥の湖」より 約25分


オデット:アンナ・レズニチェンコ
ジークフリート王子:コンスチャンチン・マイオロフ
ロッドバルト:コスチャンチン・ツァプリカ



ー休息ー



第2部「眠れる森の美女」より 約40分


オーロラ姫:長澤美絵
デジレ王子:タラス・コフシュン


同ツアーの沖縄公演での映像

「新たな人生を」ウクライナへの想い込め キーウ・クラシック・バレエの“白鳥”が沖縄で舞う



管理人は、オペラ派か、バレエ派か、どちら?と聞かれると、「バレエ派」です。


昔から、欧米のオペラの大型来日公演はほぼ、東京と神奈川のみの公演でしたが、バレエ団は結構な有名どころが、東京のみならず大阪・兵庫公演をはじめ全国を回ってくれています。


香川県民である管理人も、香川でイギリスのロイヤル・バレエ団の公演で若き日の熊川哲也を見ましたし、レニングラード国立バレエ団も見たし、伝説のダンサー・シルヴィ・ギエムと東京バレエ団の公演も見ました。


大阪までボリジョイ・バレエを見にいったこともあります。


今回のお席は、まさかの1階1列目センター。人生でこんないいお席は初めて!


客席には小さなお子さんもたくさんいらっしゃいました。




よかった点


プリンシパル(主役級を踊るダンサー)たちの、スタイルと技術は素晴らしかった!日本人ダンサーと比べると、身長のみならず、腰回りや脚の付け根の骨格の違いは歴然としておりました。


一番印象的だったのは、オーロラ姫を踊った長澤美絵さんでした。同じ日本人ということで贔屓目もあるかもしれませんが、音楽の解釈と動きの面白さは図抜けていました。


技のキレは皆素晴らしいのですが、音楽がBGMになってしまって、動きと音楽がピタッと合わないダンサーもいる中、長澤美絵さんは一瞬たりとも音楽をBGMにせず、肉体で音楽を奏で続ける。


手足が空中に幾何学的な美しい軌跡を描き、一瞬ピタッと完璧な構図で止まってから、次の振りに移る。


回転や足技が1回目は完璧でも、連続するとブレだす人もいるのですが、1回1回の動きがあるべきところにスパッとハマり続けることでさらにリズムが生まれて、見ていて面白いのです。


ちょっと残念だった点


舞台セットは、書き割りの背景の幕を吊るしている以外には、イス2つくらい。照明もピンスポットなど凝ったものはなく、シンプルなものでした。


まあ、チケット代が全席5,000円という格安の公演で、バレエ団自体が「青少年劇場」が母体ですからね。


だた、群舞のダンサーのそろえ方とか、若手男性ダンサーの技術に、正直けいこ不足は感じてしまいました。


群舞の迫力自体は、阿波踊りの有名な連のほうがあったかもしれません。


これは、やむをえない面がありますね。


パンフレットによると、本拠地キーウでの活動ができなくなり、団員たちの中には国外のバレエ団に移籍した方、ダンサーを辞めた方もいるそうです。


男性ダンサーには、兵士となって戦場に行き、もうバレエ団にも、家族の元にも帰ることのない方もいるとのこと。


そんな中で、春には南米各地を回り、チリでの公演後すぐ、地球の裏側にの日本にやってきて、2か月足らずで全国44箇所を回る、ほぼすべての公演が、移動即本番という弾丸ツアー。


宝塚歌劇の全国ツアーよりも、タイトなスケジュールですからね…こんな状況で、日本中の地方民に、生で見ることでしかわからない体験を伝え続けてくださることに感謝でいっぱいです。


団員の皆さまが怪我無く、すべての日程を終えられることを祈っております。