宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ

宝塚を「好き」という気持ちを因数分解してみたい、という思いで綴っています

劇場版シティハンター感想 宝塚版のほうが楽しかった



1980年代に連載、アニメ化されたのち、20年を経て2019年に劇場アニメ化、2021年に宝塚で舞台化とリメイクが続く『CITY HUNTER』。


(2024年にも、“冴羽獠”役を鈴木亮平が演じる実写版がNetflixで配信されるとのことです。)


個人的には原作マンガのファンというほどでもないのですが、宝塚版ではあまりに駆け足で処理された、冴羽獠と育ての父・海原 神との決着が描かれているらしいと知ったので、どのような描写なのかを確認するために鑑賞してまいりました。


※ネタバレ感想です。



冴羽獠は裏社会ナンバーワンの実力を持つ始末屋スイーパー“シティーハンター”。新宿を拠点にパートナーの槇村香と様々な依頼を受けている。


新たな依頼人は動画制作者・アンジー。その依頼は…何と逃げた猫探し!

獠はアンジーの美貌に、香は高額の報酬に胸を躍らせる。


警視庁の野上冴子は海坊主と美樹の協力を得てバイオ企業ゾルティック社の発明について捜査する。


それは謎の組織の依頼で作られた戦場の兵士を超人化する闇のテクノロジーで、かつて獠を蝕み、パートナー槇村秀幸を死に追いやった「エンジェルダスト」の最新型だった。




「劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)」本予告90秒 | 9月8日(金)公開



宝塚版ではさらっと触れられていた、冴羽獠の壮絶な生い立ち(家族で搭乗していた飛行機がジャングルに墜落し、両親は死亡。奇跡的に生存していた赤ん坊を傭兵団ユニオン・テオーペのリーダー海原 神が保護し、戦士として育てあげた)と、


過去に冴羽獠が投与され地獄の苦しみを味わった、戦場の兵士から身体の痛みも良心の呵責も奪い、殺人ロポット化する闇のテクノロジー「エンジェルダスト」を巡る物語です。


依頼人のアンジーは、実は謎の組織ユニオン・テオーペの最強の戦士で、


真の目的は


・「エンジェルダスト」がユニオン・テオーペに納品されるのを阻止する。


・冴羽獠を倒して、自分こそが海原 神にとっての「最高傑作」だと証明する。


この2つ。


映画では、前半宝塚版では「ハッスル」と言い換えられた冴羽獠の女好き描写と、パートナーの槇村香のお約束ハンマーツッコミが長々と繰り返され、


しかもガンダムとかルパン三世とか本筋に絡まない友情出演があって、正直テンポが悪いと感じました。


一番の疑問は、依頼人にして対峙することとなるアンジーはなぜ、直接会ったこともなく、映画中では直接ユニオン・テオーペと対立しているわけでもない冴羽獠を殺してまで、


自分こそが海原 神にとっての「最高傑作」だ。


と証明したいのか?


独占欲だけなのか?


描写不足でいまいちピンとこないものがありました。



この謎は、物語の中盤以降、ユニオンテオーペの首領であり、獠の育ての父でもある海原神が登場すると、個人的に納得できるものがありました。


主人公の育ての親にして敵役という存在の大きさにふさわしいキャラ造形、堀内賢雄の、まだまだ枯れていない、セクシャルモンスター並みに色気のある声。


ジャングルに帝国を作ってしまうのも納得の稀代の怪物ぶりは、現代で例えると、一代で芸能界に帝国を築くも、罪も深かった某芸能プロモーターをほうふつとさせるものでした。


最近、未成年への性的なグルーミング(性的虐待を目的として、未成年の子どもと親しくなり、信頼など感情的なつながりを築き、手なずけ、子どもの性的虐待への抵抗・妨害を低下させる行為)の問題が取りざたされています。


冴羽獠もアンジーも、幼少期に家族を亡くし、育ての父である海原を敬愛していた。


海原は子供らの、注目や愛情に対する根源的な要求を利用して殺人に加担させていた。


今作「劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)」での、海原 「神」に愛されたかった冴羽獠とアンジーの対決は、一種の宗教戦争のような、救いの無い戦いでした。


こんな重いテーマ、94分の上映時間内に決着がつくのかしらと思ったら、


"To be continued" (明言されていませんが、たぶん)


・・・まあ、そりゃあそうだろうな。宝塚版は上演時間100分で映画2本分の内容をよくぞ詰め込んだものだ。


映画版が本当に完結するころには、縣千の『CITY HUNTER』思い出再演とコラボしそう。




声優陣はほぼ、35年前のTVアニメ時のオリジナル声優をそろえてくれていますが、アニメのキャラは当時のまま若いのに、声にはさすがに35年という歳月を感じることがありました。


皮肉にも一番歳を取っていないのは、主題歌「Get Wild」。


TM NETWORKの新曲も使われていましたが、2023年の発表時点で、もう正直”若い”音楽ではなかった。


「Get Wild」の冒頭3音の瑞々しさは、もうエバーグリーンのクラシックの域に達していると思いました。