宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ

宝塚を「好き」という気持ちを因数分解してみたい、という思いで綴っています

寂しいよ 月城かなと・海乃美月退団




月城かなと・海乃美月コンビの退団が発表されました。


月城かなとの芸風は、ドイツっぽいと思うんです。


ディズニーランドのシンデレラ城というよりは、鏡のような月光に照らされた、歴史の陰影が刻まれたドイツの古城。


そして月城かなとの男役芸で、個人的に「男っぽいなー」というリアリティを感じるのが、『ピガール狂騒曲』 - シャルル・ジドレールや『グレート・ギャツビー』といった、一つのところに落ち着けず、放浪癖のある男が似合うところでした。


極めつけが、女の心を手に入れた途端に旅に出る『ダル・レークの恋』の ラッチマンでしたねえ。


ちょっと前に『翻訳できない世界のことば』という、世界中の国の、その国ならではの、他の言語に翻訳できない言葉(日本語なら「わびさび」とか)を紹介している本が話題になったことがありました。


その中で、ドイツ語代表で紹介されていた言葉が


Fernweh フェアンヴェー


Fern = 遠く weh = 痛み が合体して出来た言葉で、


むりやり翻訳すると、


遠くへ行きたくて、胸の傷がうずく病


「旅行好き」とも「根無し草」とも「孤独な奴」ともまた微妙に違って、知らない街にしかホームシックを感じないという、文字にするとひろゆきにツッコまれそうな心情を指す言葉だそうです。


彼女の演じたキャラは、「人を死なせるのがイヤになった死神」「自分の身を危険に晒しすぎな医者」「見た目は子供、頭脳は大人」とか、ねじれた設定が多かったですね。


それを客に「矛盾してるじゃん」と思わせない演技力。


彼女の演技は、役の感情と自身の感情をダブらせる熱演タイプというよりも、技巧派でしたね。


顔芸に走らないギリギリのところで、アニメで言う表情のカット数が多いんですよ。


心理の振り幅を細かく刻んで、表情の変化とピタッと合わせて「人間の気持ちは複雑なのだ」と納得させる演技は見事なものでした。