宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ

宝塚を「好き」という気持ちを因数分解してみたい、という思いで綴っています

魔性の男 和希そら 退団



和希そらが演じるハーバート・グリーンハウ・スミスって誰?と調べたら、ホームズシリーズが連載されていた「ストランド」誌の編集長だったのね、ふむふむ・・・


とかやってる場合じゃなかった!


これが、和希そらの最後の男役になるのですね・・・



先日、スカステで「双曲線上のカルテ」の大千秋楽の模様を拝見して、


ラスト、


「あなたは、他人に幸せを与えましたか」


という問いに、


配信の時はすぐに「はい!」と答えていたのが、


大千秋楽では、問われてから答えるまでに、彼のまぶたによぎっていただろう走馬灯が観客にも見えるほどの間があって、


ちょっと、予感はあったのです。




和希そら、男がピカピカのクズでいられた時代の、ろくでなしの役が絶品でしたね。


宝塚で、トップさんがやる役は、


「結婚するならこんな男性がいいなあ」


という設定が多いですが、


和希そらが演じる男は、女たらし、DV野郎、公金横領野垂れ死に、医師法違反。


「この男は、やめておけ」



男は、夜通し除夜の鐘をついても全く消せない煩悩にまみれたまま、死んでいく。悟りたいともサラサラ思っていない。


そんなクズと愛欲の海に溺れた女は、ラスト、ひとり岸にたどり着いて、良夫賢父と幸せに過ごしたら得られなかったろう、悟りの境地のような表情を浮かべる。


「もしあなたが、良い夫を持てば幸福になるだろう。もしあなたが、悪い夫を持てば哲学者になるだろう」


哲学者になりたくて悪い男に惚れるわけでもないでしょうが、和希そらが体現したのは、女に悟りすらもたらす、魔性の男でした。