宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ

宝塚を「好き」という気持ちを因数分解してみたい、という思いで綴っています

不覚にも團十郎にホレた南座顔見世



宝塚大劇場にて、雪組公演が無事開幕しましたね。


雪組公演のチケットが払い戻しとなってしまった管理人は、母と京都まで歌舞伎観劇の遠征に行ってまいりました。


京の年中行事 當る辰歳 吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎

市川海老蔵改め          

十三代目市川團十郎白猿襲名披露

八代目市川新之助初舞台



昼の部


第一、双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき)

  角力場


   野口達二 改訂

第二、歌舞伎十八番の内 外郎売(ういろううり)

  八代目市川新之助初舞台相勤め申し候


第三、男伊達花廓(おとこだてはなのよしわら)


第四、歌舞伎十八番の内 景清(かげきよ)



市川團十郎さん襲名披露 新之助さんぼたんさんも共演 吉例顔見世興行初日は満員御礼(2023年12月1日)




市川団十郎・新之助親子で登場 「吉例顔見世興行」京都・南座で始まる 東西の歌舞伎役者が一堂に (2023/12/01 20:30)


京都の冬の吉例顔見世興行は、出演者の名札を劇場正面に装飾する「まねきあげ」や、芸妓・舞妓の「総見」が「師走の京都の風物詩」として毎年地上波ニュースで取り上げられ、各地発の歌舞伎鑑賞バスツアーも組まれる、注目度の高い公演です。


(香川県発の、松竹座の歌舞伎公演を見にいくバスツアーは見たことがありません。なぜだろう。)


昔の南座の顔見世は、上演時間がとにかく長かった!昼の部は10時30分から午後3時すぎまで、夜の部は午後4時~9時半過ぎまで、メインディッシュ級の4演目を4時間半近くかけて上演しておりました。


最近は、昼の部はバスツアーの客や観光客にもわかりやすいプログラムを組むことを意識しているようで、一幕30分~45分の、前菜やスイーツ的な気軽な演目を並べてくれているので、歌舞伎初心者も気軽に楽しむことができました。


(夜の部は芝居好きのために、上演時間2時間近い「仮名手本忠臣蔵」など重厚な演目が並んでいます。)


管理人は、普段宝塚のお芝居の感想を書くときには「芝居の筋」「登場人物の心理」「演出家の意図」に注目することが多いのですが、今回の公演の昼の部の演目は…


・謎の薬売りの少年(八代目市川新之助)が、お客の前で早口言葉を言い、大暴れする「外郎売」(ういろううり)


・吉原で禿(十三代目市川團十郎の娘市川ぼたん)が踊って、イケちらかした團十郎が大暴れする、「男伊達花廓」(おとこだてはなのよしわら)



最後は、


・源氏に負けた平家の侍景清(團十郎)が捕まっている牢獄に、花魁道中がやってきてどんちゃん騒ぎを繰り広げる。


源氏の偉い人が、獄中の景清に


「民が平和に暮らせる世の中にするため、源氏と平家の壁を越えて協力しよう」


と説得すると、景清は復讐の念を捨て、大暴れして脱獄する。


最後は津軽三味線がジャンジャカ鳴り響き、🦐巨大伊勢海老🦐を持ち上げて、キメ!


ー幕ー



紅子:説得されて復習の念を捨てたのに、脱獄して大暴れって何?観念してないじゃん。


管理人:私は、源平合戦の武将が捕まった牢屋で花魁道中して、最後は津軽三味線でエビ🦐、もう理屈で考えるのをやめたわ。


紅子:「市川海老蔵改め」宣言しているのに、ダメ押しの🦐…


歌舞伎初観劇のお母様は楽しめたの?


管理人母:「海老蔵さんより、娘のぼたんちゃんのほうが踊りのキレがあると思うわ。パパ何言ってるかわからないわ。息子の勸玄くんのほうが滑舌いいんじゃない?さすがお母さんの血筋ねえ。」


「海老蔵さん、人間国宝は無理かもだけど、イケメンでカッコイイからいいわあ。イケメンを見て、美味しいお弁当を食べて、最高ね♪」



管理人:「Me too.」


カッコよさは正義!


紅子:言いたい放題、似た者母子だったのね。


管理人:十三代目市川團十郎は、宝塚の路線でいうと縣千的な、芸のパラメーターを顔面とガタイに全振りしているタイプだと思うけど、


やんちゃな人が歌舞伎町でオラオラしているだけ、みたいな演目を、カッコよく見せられる芸風は貴重だわ。


紅子:市川團十郎といえば「荒事」がお家芸だからね。



荒事

あらごと


歌舞伎(かぶき)独特の演技、演出法。


豪傑、神仏、妖魔(ようま)などの超人的な強さを表現するために、顔や手足に隈取(くまどり)をし、鬘(かつら)、衣装、小道具、動作、発声など、すべて様式的に表現する。


管理人:個人的には、市川團十郎の芸というよりは、彼の「古典を現代の観客にわかりやすく届ける」プロデューサー感覚に感心したわ。


新作歌舞伎って、「ワンピース歌舞伎」とか「ナウシカ歌舞伎」とか、外部の有名な原作を歌舞伎の演出で上演!という試みが多いんだけど、


市川團十郎の取組は「古典の再創作」な「シン・カブキ」なのよ。


江戸歌舞伎の市川家の当たり狂言18演目を指す「歌舞伎十八番」(おはこ)という言葉は有名なんだけど、そのうち10以上の演目は上演歴が絶え、タイトルのみ伝わるが何も残っていなかったそうなのよ。


先代の團十郎が「歌舞伎十八番」のうち「外郎売」(ういろううり) を、当代の團十郎が「景清」(かげきよ)を、復活上演というかほとんど新作として再創作したそうなのよ。


古典歌舞伎は、一幕上演するのに1時間以上かかる、ゆったり、たっぷりしたつくりのものが多いんだけど、


「シン・カブキ」は、一幕45分くらいの間に、いかにもカブキな隈取(くまどり)とか、マンガの集中線みたいな鬘(かつら)とか、豪華な花魁衣装とか、三味線オーケストラを見たいな」といった


「せっかく歌舞伎を見るなら、ぜひ一度見てみたいもの」を全部詰め合わせて、スピーディに見せてあげましょう!」


精神に溢れているのよ。ラストは津軽じょんがらの和製ロックンロール🦐で、なんだか知らねえが威勢がよくていいわ。


そんな「シン・カブキ」を、「新作歌舞伎」ではなく、格式高い南座の顔見世でしれっと「歌舞伎十八番の内」と名乗って上演しているの。


「格式高いガチ歌舞伎を見たい」



「歌舞伎を見て「なんかすげーっ」と思いたい」


という欲望を両方かなえてくれる、面白い舞台だったわ。


紅子:…早い話、團十郎にホレたんでしょ。アンタの贔屓の顔のタイプだわ。


管理人:ぎく。